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十四話 中二病少女と銀髪のメスガキ

ミノルの部屋。

初めて入ったな。


ゴミはないけど色んな物で溢れていて、男の子の部屋ってこんな感じなんだって思う。


「それにしても、文楽が電話に出なかった時は正直終わったと思ったよ」


「あはは……私も終わったと思ったよ……」


ミノルが椅子に腰掛けるのを見て、私もクッションに腰を下ろす。


「それで、身体を拘束する能力はソラリスの能力者だったの?」


「うん。私より年下の女の子の能力っぽかった」


無邪気に手を振って去っていく女の子を思い出す。

私にはあの状況の後にソラリスの本拠地を探る勇気は残されていなかった。


「……でもその子、普通の小学生にしか見えなかった。目的を持って歩いてる訳じゃなくて、近所をパパと散歩してるだけのような雰囲気だった」


その女の子は、ソラリスが町の住民を”救済”という名目で危害を加えていることを知らないのかもしれない。


出来ることなら、戦うのは悪意を持つ教徒だけにしたい。


「信者の全員が悪意を持って活動してる訳じゃないってことか……いや、そもそも本人達は悪意とも思っていないのかもね」


悪意とも思っていない?

でも、人に危害を加えるのは悪意があるからじゃないのだろうか。


「文楽、宗教はなんで存在してると思う?」


「……世の中を良くするため?」


「僕の考えだけど信者からの信仰に対して、宗教は困り事の答えや心の安定を与えてるんだと思う」


なるほど。

それっぽい理屈だ。


「だから、あくまで信者達が信じる理念に則って行動してるだけなんだよ」


「……あ、だから悪意とも思ってないかもしれないってこと?」


「僕の考えはそういうことだね」


女の子が悪意を持って行動しているとは限らないのは分かった。

でも、あの拘束能力が脅威であるのは間違いない。


少しの沈黙が私達の間に流れる。


「文楽。拘束能力について分かったことはあった?」


発動条件や発動対象を思い出しながら推測してみる。


「うーん、虫とがしゃどくろは動けてたかな。後はもう一人の仲間も動けてた」


「──もう一人?もう一人、ソラリスの教徒がいたの?」


「え、うん」


そうだった。

二人を実際に見ていないミノルは知らないんだった。


「片目が赤い宝石の男が女の子と一緒にいた。多分、その男が駄菓子屋のおばあちゃんを宝石にした能力者だと思う」


「……ほんとに危ない状況だったな。敵に創造したがしゃどくろがバレてたら文楽が宝石にされてたかもしれない」


「あ、いや、がしゃどくろはバレたし、私の存在もバレてた。あはは……」


「えぇ……」


頭を抱えるミノル。

気まずさと申し訳なさをかき消すようにして、麦茶を一気に飲み干す。


「……僕も一緒に戦うから、単独行動はしないでほしい」


「ごめん……えと、ありがとう……」


私一人だと恐怖心に押し潰される。

だけど、ミノルがいれば心の支えになるし、余裕を持てる。


二人なら宝石の男にもきっと勝てる。


窓が開き、部屋に生温い風が入り込む。


「?」


私もミノルも窓には近付いていない。

なんだろう。


窓には白いローブの人間。


──ソラリスのローブだ。


「文楽!!敵だッ!!」


たちまち交戦状態へとシフトする。


流れるような素早い動きで部屋に侵入する敵。


身体は小さく、私やミノルと同じ中学生ぐらいの身長。

ローブを深く被っており、顔や性別は分からない。

身体の割にはローブがぶかぶかなサイズに見えた。


能力を発動して対処しないと。

火を出す?

ミノルの部屋だから火は使えない。


がしゃどくろ?

考える猶予はない。


私に近づく敵の両手に、キラリと光る何かが見えた。


「文楽危ないッ!」


ミノルが私を庇うため、私と敵の間に身体を入れ込む。


狭い部屋。

素早い動きと自身を顧みない全身全霊の入れ込み。


普通なら衝突するタイミングだった。


「え」


──首を刺された。


終わった。

死んじゃう。


ミノルも刺されている。

背中から心臓の位置。

白いTシャツに染みが広がっていく。


また守れなかった。

勝てなかった。


能力を貰って最初に戦ったドロスの時。

そして、宝石の男と対面した時と同じ抗えない無力感。


「ザッッッッコ!!でも”この子”に間違いなさそー」


白いローブから銀髪が現れる。

あどけなさが残る顔立ち。

細目でニパっとした笑みを浮かべている。


小学生低学年ぐらいの女の子に見えるが、拘束能力者とは別の人間のようだ。


意識は朦朧としているが、まだ、動ける。

アドレナリンが出ているからか痛みも感じない。


何もせず、このままやられる訳にはいかない。

がしゃどくろを創造して、それから──


「文楽、何か変だ。僕たちは刺されてなんかいない!これは血糊だッ!」


首に手を当てがう。

そういえば、全く痛みを感じない。


「あれ……傷がない。刺されて……ない?」


ぶかぶかなローブを脱ぎ捨てる少女。


投げ渡されたナイフは異様に軽い。

先を押すと刃が引っ込んだ。

押すと引っ込み、離すと出てくる。


それは明らかにおもちゃのナイフだった。


「ザコすぎだけど、やっぱりこの子──”りんご”が未来をブレさせる理由みたい」


「何を言っているか分からないがお前のそのローブ。ソラリスの教徒だろ」


「”ミノル”の未来は、りんごと真逆でほぼ決まってるー。それが普通のザコザコなんだけどねー」


白いローブを脱ぎ捨てると、この世界では見慣れない恰好を現した。

いわゆる、漫画やゲームに出てくるような魔法使いに近い恰好。


水色が基調の服装で、袖はダボっとオーバーサイズ。

肩の部分の生地は無く、透き通るような柔肌が露出している。


「貴女は一体何なの……?」


「私はモモ。()()()()から来たよ。よろしくね~」


ニパっとした笑みを再び見せる。

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