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#04. Analyzing 回収
「男性、身長175.3cm、体重61.4kg、普通
体系、開放性骨折及び脱臼、打撲、出血、溺没」
「3か月後に順調に新型に生まれ変われたら、
画期的な誕生日だ」
#08. Reboot 脱出
負傷した部下の搬送、ヘンリーの移動、
イーサンの移動を見届けたターシャ。
その後、気配を確かめながらウェストを出て、
サウスの船着場へ向かう。
入室すると、3つのコンピューターデスクと製造機の操縦席があった。
部屋の外では火災報知器の音がし、素早くドアを開ける。
そこは、何も無い廊下が伸びているだけだった。
辺りを見渡し、音の理由を突き止めるべく、イーストに繋がる連絡橋に向かう。
扉を開け、颯爽と外に出る。
拠点に射し込む陽光が、その青い目を一層明るくさせた。
風が強く吹くと、彼は風上を向いて2秒目を閉じる。
まるで、その強さや温度などを感じている様だ。
そこから、ウェストを振り返る。
上からじっくり下まで視線を落とすと、2階が赤く縁取られ、消えた。
火災報知器が鳴り始めた場所を特定。
玄関からは、担架に人を乗せて走る研究員が窺えた。
彼は下に向かおうと、正面のイーストに入る。
上層部の部屋が並ぶフロア。
下の階にも部屋があり、カフェもある事を高速に枠を走らせながら認識する。
どこが誰の部屋なのかも、直ぐに読み取った。
すると、不思議そうに首を傾げる。
自分や、他の保安官の名前が無かった。
その後、エレベーターを呑気に待つ。
問題無く復旧したそれに乗ると、青い目はその間、階数表示を瞬きしながら眺めていた。
大理石の床を持つロビーに到着すると、迷わず玄関に向かう。
中庭に出て、察した。
ここで騒ぎがあったのか。
石畳が酷く割れ、黒い煤の様な汚れが、ウェストの入り口まで伸びて付着し、消えている。
その汚れが気になり、彼はしゃがむと、触れた。
指先に付着したそれを擦り、ふと鼻に近付ける。
焦げ、煙、鉄、焼け、苦味。
不意に指先を離すと顔を逸らしながら、目を細め、不快そうな顔をする。
鼻を突いた、そんな所か。
におい成分を分析し、香気の特徴や、そこから連想されるものを探るアクションは、上手く働いた模様。
表情は2秒で戻ると、端のサウスに目を向け、歩き始める。
真っ白なそこに、行き交うゼロ達。
彼は白衣を揺らしながら、ゼロ達の合間を器用に擦り抜け、カウンターに着く。
2体が腰かけ、コンピューターと向き合っていた。
その2体から認識できたのは、保安官の任務、海洋バイオテクノロジー研究状況、アンドロイドと遺体のデータを整理し、纏めているという事。
その画面を見ようと、カウンターに回り込む。
1体のゼロを数秒眺めると、タイプしていた銀の手が停止。
彼はキーボードを自分の位置に合わせ、操作し始めた。
ここ一帯がやけに静かなのは何故か、気になっている。
目は左右に何往復もし、その間、当然の様に瞬きもしていた。
誤搬送を機に、System Rebirth初号機が焼却処分。
手段として、銃撃を含む基盤、バッテリーの破壊作業が選択されている。
薬品室での攻め合いに巻き込まれ、プログラマー1人が負傷。
誤搬送者の処分に関しては空白。
それに目を細めた時、ガラス扉が開く音を聞きつけ、顔を上げた。
フラフラした足取りで現れた女性は、膝から崩れ落ち、四つん這いになる。
その姿に目を見開くと、彼女に赤い輪郭が付き、点滅する。
彼はキーボードを戻し、再び脇の1体を数秒眺めた。
それは直に、軋み音を上げて復旧すると、何事も無かったかの様に作業に戻る。
彼女は空咳を連発しながら、少々震えた手を床に付き、立ち上がる。
その際に、目が合った。
「!?」
彼女は大きく後方へ引き、再び転倒。
端の壁に背が付くまで後退り、そのまま横移動し始める。
その間、怯える目を向けて離さない。
症状からして、化学反応により発生した気体を吸い込んだ影響か。
顔には倦怠感と恐怖をみるみる滲ませている。
痺れもあり、嘔気もしているのか。
彼は素足の音を立てながらカウンターから出ると、彼女に颯爽と近付いて行く。
「こ…来ないでっ!」
急な叫び声に彼は止まると、そっと首を傾げ、言った。
「誤搬送のターシャ・クローディア」
清々しい、清涼感ある声は、気さくな印象を持たせる。
これまで出会った者とは違い、平然とした表情で落ち着いている。
白衣を着ている為、船着場に連れられた時の様に、乱暴に連れられると思った。
だが、その様子は無い。
そして彼は、眉を顰めた。
「何してるんだ?こんなとこで」
その表情は生々しく、一切の違和感が無い。
「……貴方もしかして…」
ターシャは記憶を遡る。
よく見ると、あの場に固定されていたアンドロイドではないか。
瞬きして見つめてくる顔に、ついつい見入ってしまう。
そんな中、ある言葉も同時に過った。
RealはRを上回り、顔で表現する、と。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。