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Chapter-51

 アクアパレス龍ケ崎。

 左文字JEXホールディングス傘下の常陽リゾート株式会社が運営する、全天候型遊泳施設である。

 やや小ぢんまりとまとまってはいるものの、流れるプール・競技用プール・ウォータースライダーなどと、フードコート施設、更には浴場を備える、ウォーターリゾート施設となっている。


「いいのかねぇ、こんな事してて」


 流れるプールのコースの中にある島、備えられたデッキチェアに寝そべっている朱鷺光に対し、飲み物を持ってきた弘介が、そう言った。


「いいのいいの、こっちとしては、今は受け身なんだから。なんかあったらコムスターが記録しといてきくれるでしょ」


 朱鷺光は、呑気そうにそんな事を言いつつ、弘介から受け取ったコーラのカップのストローを吸う。


「それに」


 朱鷺光はカップを一旦傍らのテーブルに置いて、言う。


「ピリピリしてる時だからこそさ、たまには気を緩めないとやってられないよ」

「まぁそれもあるっちゃあるけどねー」


 そう言いつつ、弘介はメロンソーダの入ったカップのストローを吸う。


「会社にいても、なんか妙に俺1人だけ緊張しちゃってる感じでさ、確かに精神衛生的に良くないのはあるかも」


 言いながら、弘介も手近なデッキチェアに座り、軽く息を吐き出した。


「だろ?」


 朱鷺光が、苦笑しながら、訊き返すようにそう言った。




「俺達まで一緒させてもらっちゃって良かったのか?」


 プール側の更衣室出入口近くで、正恭は澄光に訊いた。


「いいんだって、どうせ優待客扱いなんだから」


 澄光は、そう言いながら、出てきた水泳場ホールの中を見渡し、先に入場しているはずの朱鷺光や弘介の姿を探す。

 夏休みの時期には入ったが、まだお盆には少し早い平日のせいか、中はそれほど混んでいない。


「いや、朱鷺光さん達にも俺らからも挨拶しておかないとなぁ」


 そう言いながら、俊彰が現れる。

 身長こそ澄光とさほど変わらなかったが、筋トレで隆々とした、筋肉質の体つきに、競泳用のぴっちりとした水着を着けている。


「いや、なんか俊彰と一緒にいると、あれだなぁ」


 澄光が、俊彰を振り返って、少し呆れたような声を出した。


「だろ? こいつ中学の頃からこうなんだぜ……」


 正恭が、ジトリと汗をかくようにしながらそう言った。


「あれ? 中学一緒じゃないだろ?」


 澄光が、ふと気がついたように、正恭と俊彰を交互に見ながら、訊ねる。


「一緒じゃないが、ひと学区違いだったからな。夏休みとかはよくつるんでいたんだよ」

「なるほどな」


 正恭が説明すると、澄光が納得の声を上げた。


「あら、あなた達も丁度出てきたところだったのね」


 そう言って、声をかけられる。


「あ、真帆子先生……」


 3人とも当然のように聞き覚えのある声と顔に、そちらを注視するのだが、そこで少し唖然としてしまう。


「…………」

「あら、どうかした?」


 どこか呆然とした様子の3人に、真帆子は不思議そうに声をかける。


「いや、先生、その水着は流石に……」


 言いにくそうにしながらも、澄光が微妙な表情をしながら言う。


 真帆子は、赤と白の縦縞のワンピースの水着を着けていた。腰元と胸元にフリルもついている。が、その格好はどう見ても────


「悪かったわね、どうせ私はお子様よ合法ロリよ」

「いや先生、俺達そこまで言ってません……」


 拗ねたような声を出す真帆子に、正恭が宥めるような口調でそう言った。

 澄光と俊彰は、乾いた笑いを浮かべながら、言葉に困っている様子だ。


「まぁ、今日はそこまで気にしなくても、オムリンも一緒だし」

「私がどうかしたか?」


 自分についで身長が低く、体型も同じ様に平坦なオムリンを持ち出した真帆子だったが、そのオムリンが、すっ、と姿を現した。


「あ、オムリン」


 澄光は、なんの気無しに声をかけたのだが、


「あ、ええぇ!?」

「う、うそ……」


 正恭と俊彰が驚いた声を出し、真帆子も絶句する。


「? どうした?」


 オムリンは濃いめの青基調の、スポーティーかつ、露出も大きいビキニの水着を着けていた。銀色の長い髪とコントラストができて、クールな表情もあり、そこそこ決まっている。


「あ、あれか、オムリンはいざという時の動きやすさを重視してそう言う水着にしてるのよね?」


 真帆子が、どこか焦ったような様子で訊ねるも、


「いや、割と見栄えを気にして選んでいる水着なんだが」


 と、オムリンは素の表情でそう言った。


「おかしいか?」


 オムリンは、澄光達の方を向いて訊ねるように言う。

 澄光達は、揃って首を横に振った。


「結論」


 正恭が言い、


「たかが5cmされど5cm」


 と、澄光と俊彰と3人揃って言う。


「ちょっと、あんた達ねぇ!」

「うひょー、離脱離脱」


 真帆子が憤ったような声を上げると、澄光達は途端に駆けていって、そのまま目の前の、流れるプールに飛び込んだ。




「何をやってるんだあいつらは」


 澄光達の「うひょー」という声を聞きつけた朱鷺光は、3人が水に飛び込むのを見て、呆れたような苦い顔をする。


「あいつら準備運動したんだろうなぁ」


 弘介も呆れたような声で言う。


「朱鷺光」

「お?」


 朱鷺光は声をかけられて、そちらの方を向く。

 そこに、パティアが立っていた。


 黒と紫のツートーンの、競泳水着をベースに、デザイン性を取り入れつつ少し大胆にしたような水着を着けている。


「なかなか似合ってるじゃないか。自分で選んだのか?」


 妙に喜んだような表情になりつつ、朱鷺光はパティアにそう訊ねた。


「いや、颯華(そうか)に選んでもらった」

「なるほどねぇ、確かに颯華っぽいセレクトではあるな」


 パティアが答えると、朱鷺光は顎に手を当ててニヤリとしながらそう言った。


「それと、これ」

「ん、ああ。わざわざ買ってきてくれたのか。サンキュ」


 パティアは、両手に持っていた、フランクフルトと、紙バスケットに入った太切りのポテトを、朱鷺光の座っているデッキチェアの傍らのテーブルに置いた。


「運転で疲れているだろうと思って」


 パティアはそう言って、朱鷺光の傍らに立った。


「ちぇー、俺も誰かに労ってほしいや」


 弘介が、どこか拗ねたようにそう言った。

 現地集合した正恭と俊彰は別計算としても、大所帯となったため、ドミンゴとUAZを2台連ねてきている。


「考えたら俺、ほとんど運転手みたいなもんじゃねーか、今日」

「悪かった悪かった。せめて左ハンドル運転させちゃ悪いと思ってドミンゴお前に運転させたんだから、許せ」


 朱鷺光は、悪いと言いつつ悪びれた様子もないような様子で、苦笑しながら言う。


「弘介さんの分は、私が用意してきましたよ」


 そう言って、イプシロンがやはり、弘介の傍らのテーブルにポテトとフランクフルトの皿を置いた。


「おー、イプシロンはそう言う格好、似合うなぁ」


 白基調の、チューブトップのワンピース水着を着たイプシロンを見て、弘介がそう言った。


「シロはお前も設計から携わっとろうが」

「それはそうなんだけどな、イプシロンはちょっと年齢高めに見えるし悪くないっていうか……」


 朱鷺光が呆れたように言うが、弘介はニヤニヤしたままそれに返す。


「ま、それで気が晴れるんなら安いもんだけど」


 朱鷺光はそう言って軽くため息をついてから、ポテトをつまんで口に運んだ。




「うわー、すごい、俊彰君だっけ、いい筋肉してるね!」


 俊彰の体つきを見て、爽風(さやか)がそう言った。


「うーっす、どうも、っす」


 俊彰はそう言いながら、爽風に見せつけるようにポーズをとってみせた。


「爽風ちゃーん、これ借りてきたよー」


 颯華が、そう言いながら、シャチ型のゴムボートを担いでくる。


「あ、いいねぇ」


 爽風は、それを見て、駆け寄ってくる颯華に自分からも近付いていく。


 爽風は青基調のセミセパレート、颯華は黄色基調のワンピース、どちらもスポーティー感の中にセクシーさも出せるデザインの水着を着けている。


「真帆子さんも一緒に遊びませんか?」


 と、真帆子を振り返ってそう言うも、真帆子は壁に手をついて、真っ白に燃え尽きたようになっていた。


「うん、色々と残酷な気がするな」


 それを見ていた、正恭が、そう言うと、澄光と並んで、うんうんと頷いた。


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