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一章 8話

ぼちぼち頑張って再開します。

やる気に満ち溢れた俺は草原中を駆け回り、眼に映るスライムを見つけては一撃で仕留めていった。


次々とスライムを倒すたびに俺は効率を上げる努力をした。最初は横から突いて全身をスライムの身体に浸からせていたのだが、タイムロスにもなるし正直全身ベタベタは気持ちのいいものではなかったため、斜め上から剣を振り下ろすようにした。これならば浸かるのは腕だけだし、時間を浪費することもなくスパッと引き抜ける。最終的にはスライムの横を走り抜ける際に辻斬りの如く『核』を切り裂いていた。



どれくらいそうしていただろうか。不意に脳内に無機質な声が響く。


『インベントリが満杯です。破棄するアイテムを選んでください。』

「ひゃっ!?」


本当に突然聞こえてきた声に心臓が止まりそうになった。いやマジで。


「インベントリ? ……って確かそんな名前のスキルがあったよな…」


えーとインベントリインベントリ……。お、あった、って何だこれ!?


インベントリ


スライムの欠片 スライムの核片 なめらかな液体

スライムの欠片 スライムの欠片 スライムの核片

スライムの欠片 薬草 薬草

スライムの欠片 スライムの中核 薬草

スライムの核片 スライムの卵 スライムの中核

スライムの核片 薬草 スライムの欠片

スライムの欠片 スライムの欠片 スライムの欠片

スライムの卵 スライムの核 雑草

スライムの欠片 スライムの核片 雑草

スライムの核 雑草 薬草


リザーブ


薬草



ひぃふぅみぃ……。なんでこんなにあるんだ? 俺拾ってないよな?

とりあえずアレか、リザーブっていうのが保留してるアイテムって事でいいのかな。なんか雑草とか結構あるしこれと入れ替えよ。

ってどうすればできるんだ?

少し悩むが、今までステータス的なものを見たい時念じれば出てきていたので、これも念じれば出来るんじゃないかと思い試してみる。


ぽふっ

「ん?」


柔らかい感触があり、自身の手を確認するとそこには草が握られていた。


「ほーう、なるほどなるほど」


つまりこれが()()したってことになるのか。インベントリを確認すると、予想通りリザーブの表記が消え、雑草の数が減り、薬草の数が増えている。

ということはインベントリの中身もこんなふうに取り出せるんじゃ?

よし、早速試してみよう。

インベントリを開いて、取り出すイメージを行う。


プルンッ

「つめたっ!」


急に現れた物質の感触が手のひらを伝う。そう、今俺が取り出したのは『スライムの欠片』だ。

いったいなんと表現すればいいのだろうか。俺の手のひらでプルプルと震える物質は不快に手をベタつかせることもなく太陽の光を浴びて僅かに輝いている。

少しそのスライムの感触を楽しんだ後、今度はインベントリにしまうイメージを行う。


シュンッ


スッとまるで空間に溶け込むようにして『スライムの欠片』が消えた。確認するとインベントリの中に『スライムの欠片』が戻っていた。

ひとしきり一連の動作を繰り返し行うと段々スムーズに行えるようになってきた。

それに満足した俺は再びスライム狩りを始めようとして、気付いた。

——インベントリ埋まってるんだからアイテム取得できないじゃん!



そんなわけで俺は村まで戻ってきた。勿論あの後アーリィと合流してからな。

その際に俺の作り上げたスライムの死体の山を見て若干引いた顔をしていたのは疑問だったが。だってスライムじゃん? そんな強くないし、一撃で終わるしなんかおかしかったのかな?


「……ちょっと、聞こえてる?」

「え、ゴメン、なに?」


ちょっと怒った様子でアーリィが口を尖らせる。


「もう、今から換金に行こう、って言ってるの!」

「あ、ああ、そうだね、行こうか」

「全く、ボーッとしちゃって、一体何を考えていたの?」

「ああいや、大したことじゃないんだ」

「そう? 大したことないなら良いんだけど……。怪我とかならすぐ言ってね?」


ん、それはもしかして俺のことを心配してくれt


「直ぐに離れるから」

「……なんで?」

「マリーのとばっちりがこっちにも来るからよ」

「あー…」


訳を聞いて深く納得した。



「さ、ここが【ギルド】よ」

「ほぇー、ここがねぇ?」


俺たちの前には、村の他の施設よりもふた回り大きく、さらに存在を誇張するように入り口の上には精巧に象られた竜のエンブレムが掲げられた建造物がある。


「ほら、中に入るわよ」

「あ、あぁ」


上を見上げつつアーリィの後を追い歩を進める。

両開きの扉を開け中に入ると、賑やかな広間が姿を見せた。ある者は卓で仲間と語らい、ある者は酒らしき物を愉しげに飲み、またある者は料理を運んだりとした光景が目に飛び込んできた。

そんな光景に目を奪われている間にもアーリィはツカツカと一点に向かって歩みを進めていく。

そしてカウンターらしき場所まで行くと歩みを止め、そこにいた人に話しかけた。


「ただいま、ラファ。換金をお願いしたいのだけど、良いかしら?」

「あ、アーリィさんお帰りなさい! 換金ですね、かしこまりました!」


元気な声でハキハキと喋る短髪茶髪の彼女は、ラファというらしい。……思うんだが、この世界の女性は顔面偏差値高すぎないか? ラファさん普通に可愛いんだけど。

思わずまじまじとラファの顔を見つめていると。


「……あ、あの、私に何か?」

「うぇ!? あ、いや、なんでもナイデス…!」


慌てて首を振って誤魔化す。


「あー、この人ね、リンって言うの」


突然紹介された俺はしどろもどろでなんとか自己紹介をする。


「あ、え、と深山燐です! よ、よろしく!」

「はい、私はラファと申します。このギルドで受付嬢をさせて頂いております」


そう言ってペコリ、とラファさんは綺麗なお辞儀をした。


「なぁにデレデレしてんのよ?」

「い、いやそんなデレデレなんてしてない!」

「ふぅん……?」

「な、なんだよ……」

「ん〜ん、べっつにぃ〜?」


にんまりと笑顔を浮かべるアーリィに俺はそれ以上何も言うことが出来なかった。


「ま、ちゃっちゃと換金を済ませちゃいましょ」

「かしこまりました。では素材をこちらに出していただけますか?」

「はい、これよ」


ドン、と大きな音を立てて膨らんだアイテムバッグが受付に置かれた。

その様を遠目に見ていた冒険者風の者や、ウエイトレスをしていた者の視線が集まる。


「こ、これは……、今日は大量ですね」


ラファさんはバッグの中身を見ながらその質量に驚いている。


「まぁ今日は2人分あるからかしらね」

「いや、それでもすごい量ですよ! ちょっと応援を呼んできますね!」


そう言ってパタパタと奥へと消えて行き、数分ほどで2人ほど連れて戻ってくる。


「お待たせしました、それでは確認させていただきますね!」


そう言って受付嬢3人はバッグの中から素材を取り出し始める。



そんな光景を呆けたように見ていると、時々受付嬢が感嘆の言葉をあげたり、驚いたりとしている。

そんな状態で待つこと数十分、漸く鑑定が終わったようだ。


「お待たせいたしました! それでは今回の報酬をお渡しさせて頂きます! 今回ゴブリンの牙が8本、ウルフの牙が5本、ホブゴブリンの棍棒が3つ、スライムの核の欠片が15個、スライムの核が52個で、合計82250メリルですので大銀貨8枚銀貨2枚大銅貨2枚、銅貨が5枚です!」


トンッと報酬の入った袋が置かれる。途端ギルド内がざわついた。

その中の1人の冒険者風の男が声を荒げる。


「おいマジかよ! スライムの核が52個だって!? ベテランでも1日にそんなに収集するのは難しいはずだ!」

「ええ、でも確かにスライムの核が52個ありました。私達もこんな大量の換金は初めてです」


その言葉を聞いてさらに冒険者達がざわつく。


「マジか……」

「何かコツでも……」

「52個とか……」


数ある冒険者達の言葉を遮ってラファさんが口を開いた。


「でも私も気になります。アーリィさん、こんなに大量に完全な核なんてどうやって集めたんですか?」


そう聞かれたアーリィは頰をかき、気まずそうに声を漏らす。


「あ〜、それはね? このリンが1人で集めたのよ……」

「えっ、アーリィさんじゃないんですか!?」


驚いた様子でバッとラファさんがこちらに顔を向ける。そしてラファさんに倣うように他の冒険者達もこちらに顔を向けた。


「い、一体どんな方法でこんな大量に集めたんですか?」


ずいっとこちらに迫るラファさんの顔に凝視され、自然とこちらの顔が赤くなる。


「あ、いや普通に倒してただけですけど?」


気恥ずかしさから若干目をそらしつつありのままの事実をあっさり述べると、そのあまりにも簡素な物言いに騒がしかったギルド内は一瞬で静まり返った。

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