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不思議な髪色の彼女のレースと、しがない僕の試合  作者: タマツ 左衛門之介久


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後日話し、加藤

ああ加藤、会えるか?うん今から。

お前の家でもいいけど、えっ、外の方がいい?

ああ、分かる。

ああ

ああ

じゃあ1時間後な、


 加藤と待ち合わせをしたのは、部活帰りに買い食いしながら寄った公園だった。


「おお〜い」

「よおっ!でも何で公園?」

「オレ達って、喫茶店とか行かなかったじゃんか。」

 部活の帰りに買い食いして寄ったの、酒屋とパン屋ぐらい。

「オレ達には場違いだろ」

「言えてる。」

 僕らは公園の平らなベンチを跨ぐ格好で、お互い向き合って座った。

 周囲が夕闇に包まれ出していた、あの日の様に。


「はい、お茶買って来た。コーヒーも有るよ。」

「それとクリームパンとモロモロな。」

「リッチだな。」



「加藤、お前に言いたい事が有る。凄く有る。凄く凄く、有る。」

「ちょっとオレに先に言わせてくれ。」

「うん、何?」

 加藤が僕に言いたい事、何だ?



「あの後大変だったんだぜ。幸子泣いちゃって。」

 加藤が開いてくれた、僕の『第二グランド帰還会』の事だ。

 幸子?誰?それも下の名前で?

「ええっと佐々木、いや竹山さんだったっけ?」

「前川だよ。オレ達付き合う事にした。」

 ええっ?!

「おめでとう、かな?」


「だけどオレだって泣きたかったよ。」

「なんで〜」

「オレだって佐原の事好きだったもん。」

 へぇ、そうだったんだ。


「お前、皆んな告ってたんだぜ。3組と4組、それと8組9組は全滅で、男子で告って無いヤツの方が少なかったと思うぞ。」

 そこまでかよ!詳しくは知らなかったけど。


 僕が約1年半過ごした高校は、1年生から2年生に上がる時にクラス替えが行われ、2、3年生は続けて同じクラス。

 進学組の1、2組は3年間同じクラスであった。

 ハンド部の山田とは1年生から同じクラスで、3年間同級生として過ごすはずだったけど。

 

「いや、ラブレターとかも有っただろうから、佐原に告って無いヤツ居なかっただろう。上級生とか下のヤツらも入れたら、もう分からんよ。」


「それでお前、告ってなかったのかよ?」

「うん、、、」無理だった。

 瑠璃子は眩し過ぎて、近付く事も出来なかった。

 それに、言い出す勇気も自信も、資格も、何も持って無かった。


「マジかよ、信じられん!佐原に告って無いの、お前だけだったのかも知れんぞ。」

 僕だけだなんて、それは無いだろう。

「そんなん大袈裟過ぎるだろ〜」

「いや、お前だけだぞ。」


「じゃあ何で一緒に帰ってたんだよ。あんなのどう見たって付き合ってただろう。」

 切っ掛けは、瑠璃子がお財布を忘れたって、僕がジュース代を出した時だった。

「ほら、夜道に帰るのが危ないからって、方向が同じ者はなるべく一緒に帰れって」

「そんな事してたのお前達ぐらいだったぞ。お前達の事を知って、皆んな泣いてたんだよ。あ〜オレ達の佐原がーって」

「アレックスはお前らの所有物じゃねーよ。」

 瑠璃子は女子にも人気が有ったと思う。

 彼女は人の悪口なんて言わなかった。

 


「でも3組って、」

「そう、オレも撃沈した。」

「マジかよ」


「愛してるとかじゃなくったって、とにかく佐原の事が皆んな好きだったんだよ。」

「それに佐原ってさぁ、告って来たヤツにも変な溝を作らないというか、分け隔てなくと言うか、寛容って言うのか?」

「佐原の事が嫌いとか嫌だなんて言ってたヤツ居たか?そんなん聞いた事が無い。告って撃沈したヤツらも、佐原の事を嫌いにはならなかった。オレもな。」

 自分の事を珍品なんて言ったり、差別的に感じる事も有ったとか言っていたから、だから自分は誰にでも分け隔てなく、、、僕なら無理かも知れない。瑠璃子、偉大だなぁ。


「あーちきしょう!寄りにもよって、何でお前なんだよ!」


「それはな、加藤、目だ。瑠璃子、アレックスの事を見る目の違いだ。」

「何だ、違いって。」

「何かアレックスって、皆んなに色眼鏡で見られちゃってた気がしちゃったって。それはちょっとした悩みでもあったそうだ、だって。」

「そう言うお前は?」

「見てた。」

「はぁ?」

「だってあの容姿だぜ、色眼鏡でも足りないだろ、それで見ない方がおかしいだろ。」

「それじゃあ、オレ達と一緒じゃんか、振られたオレ達と。」


「じゃあ何でなんだよ。」

「それはな、オレは色眼鏡の下で、ちゃんとした眼で見てたからだ。」

「何だよ、ちゃんとした眼って?!」

「さぁ」

「何だよそれ!」



 僕は、僕が居なくなった後、瑠璃子が加藤に『頼んだ』と言ったそれを聞いた。

「佐原、何か機嫌が悪くてさぁ」

「へぇ、そんなの見て分かったの?」

「分かるよ、それだけ皆んな佐原を見てたから。」

 あー、瑠璃子が言っていた、『ひとりに成れなかった』事か。


「お前が居なくなったからかは知らんけど」

「皆んなは佐原が成長痛だとかで、それが原因で部活がロクに出来ないからなんだろうとか言ってて。」


「実際、部活時間は何時もジャージ姿で、筋トレとかはしてたみたいだけど、ランニング姿は余り見掛けなくなってた。」


「まあ、そのおかげで練習には集中出来たけどな。」

 あー分かる。第二グランドの部活の連中は、皆んな瑠璃子の姿を探しちゃってたもんなぁ。


「10月過ぎぐらいだったかなぁ、お前が引っ越して1ケ月ぐらい経ってたと思う。」

「部活の時間にさ、佐原がグランドに現れて、呼び出された。」


「オレさ、バカみたいに期待しちゃって、でも違ったよ、お前の事が知りたいって。オレ、泣きそうになったよ。」

 あー、ゴメン。


『加藤君、草刈君と連絡取ってない?』

 何だよ、正雄の事かよ。まあそりゃそうだよなぁ。

『あー、時々電話とかしてるよ。』


「お前の事が知りたいって、」

「うん」

「お前さあ、連絡先とか言って無かったのかよ?」

「いやだって、付き合ってた訳では無かったし」

 ただ、帰り道が一緒だっただけ。

「ああ、佐原居なかったな。だけどお前らの付き合がどんなだったか知らんけど、手紙とか書き置きぐらい出来ただろ?」

「あっ、その手があったか。」

 僕はとにかく悲しくて、泣いていただけだった。

「それぐらい気付けよ、アホ。」



「だけどまあ、驚いた。だってそうだろ、あれだけ皆んなの事を振りまくっていた佐原は、誰か好きなヤツは居るのか?居たとしたらそれって誰だ?って皆んな思っていたから。」


「だけどさ、オレにお前の事を聞いて来るなんて、好きな人に告白する以上の勇気が無きゃあ出来ない事なんじゃないかとも思った。」


「だって本人より先に、別の誰かに『私、あの人が好きなんです』なんて言うか?それも男子に。」

「まあ、お前の事が好きだとは直接言ってはなかったけど、そんなの一緒だろ。」


「佐原に聞かれたのは、お前が今何してるのか、何部に入ったとかだった」


『佐原の心配事かな、アイツ誰とも付き合ったりしてないって言ってたよ。』

「あの時の佐原の顔、すぐに隠したけど、オレはお前の事が憎かったよ。」

「あー」


『お礼をさせて。』

 まさかっ!あんな事やこんな事?!

『調理パンでいい?』


「あの顔で言われたら断われ無いよ。まあ、断る理由もなかったし、調理パン高いし。何よりお前の事だしな。」


「その内、直接会って話すのも周りに変に見られるからって、ラインでやり取りする様になって」

「アレックス、スマホ持ってたの?」

「そりゃそうだろ。スマホも携帯すら持って無かったの、日本でお前だけだろ。」

「いや、でもアレックスがスマホ触ってるトコ、見たこと無かったから」

「お前、持って無いじゃん。それと、コレ多分憶測だけど、エゴサーチしたんじゃないかな」


「エゴサーチ?」

「知らんのか。」

「うん」

「自分の事を検索する。で、出て来た内容に酷い事が書かれてたり、個人情報が晒されてたり」

「あっ、それ一回やった」


「佐原ってさあ、目立ってたから。」

 それは校内に留まらず、一部であっても世間までも。

「タレントやアイドルでも無いのにさ、ネットで追い回される。今の社会問題だよな。」


「だから電源が常に入っていたかは不明だ。それにスマホすら持って無いお前の前で出さなかっただけだろう。」


「それで、ラインでお前の事を伝える様になった。」


「お前の住所もメールアドレスだって教えたんだぜ、直接連絡した方がいいだろうって、お前絶対喜ぶからって、フットボーラーキングマサオ、アットマーク、」

「待て、」

 自分で付けたメールアドレスだけど、誰かに言われるのを聞いたら、スゲー恥ずかしい!


「それで、お礼と口止め料だって、月・水・金にパンを貰っていた。直接だったり後輩経由とかで、でも変な噂が立ちそうになって」

「変な噂って?」

「オレが佐原の弱みを握って脅してる。無理矢理パンを買わしてるって。」

「何だそりゃ」

「だから食堂でお店から直接貰うようにしたりして。知恵を絞って努力したんだぜ。」

「それ努力って言うのかよ、」


「お前なかなか連絡して来ないし、メールもして来なくなって、」

「いや、部活必死だったもん。皆んな上手くて速くて強くて」

「佐原に何も返事も言う事も出来なくなって、分かるか、オレの気持ち?」

「いや、分からん。だってそんな事になってたなんて知らなかったし。」


「週に三回もパンを貰える程、お前の事言えないし、だから何か連絡をした時だけでいいって言ったんだけど。」

「ダメだって。自分が決めた事だから、変えないって。それに口止め料も有るからって。」


「お前そんな事ひと言も言わなかったじゃんか。」

「だってパン食べちゃったし。」

「律儀というか、お前もアホだな。」

「放っとけ」


「だけとちょっと驚いた。佐原がそんな強気と言うか、まあ強気か意思だな。そんな気持ちを表すなんて、驚いた。」

「いつも穏やかで、天使の様な佇まい。なのにだぞ。」


「お前の事がそんなに気になる、好きなのかよって、ちょっとムカついて、食堂のおばちゃんに佐原からのパンを3つくれって言ったんだよ。」

「ちっさいなー、」

「そしたらさ、おばちゃん、何個でもいいって。オレが欲しいと言った分だけ渡してくれって言われてるって。そんな事有るか?佐原の家、金持ちみたいだけど。」

「もう完全にオレの負けと言うか、何か佐原に逆らっちゃダメなんだって思った。」

「今の話しは、ホラーか何かか?」

「違うわっ!」



「それで」

「何だ?」

「ヤッタのか。」


「お前なぁ、そう言う話しは、、、加藤、天国行った事有るか?」

「有る訳、、、そんなにか?!」

「ああ、オレは女神を見た。」

 その前に、地獄にも落ちたけど。


「オレも続くわ。」

「タケヤ、前川さん?」

「そう、前川。」

「応援するよ。」

「いや、お前は出て来るな。ややこしくなるかも知れないじゃんか。」



「だけどさ」

「何?」

「お前自慢話しとかしないのに、何かさ、良かったな。」

「うん、、、ああ、」お前のお陰だよ。


「だけどお前がオレたちのキューピットだってのが、なんか許せん。だってこんなムッさいキューピットなんて居るか?」

「うるさいわ」


「でも、何かお礼でもしないとな。」

「いらん、いらん。」

「そう言うなよ。何か欲しい物有る?」

「プレステ」

「うーん、無理。」

「だろ。」


「まあ、何かあったらさ、女と金以外の事なら何でも言えよ。」

「そのふたつ以外でお前に頼みたい事は無いよ。」

「そっか、」


「あと、佐原に言っておいてくれよ。オレは調理パンより菓子パンの方が好きなんだよ。クリームパンとか甘いヤツを。」

「ああ、オレもどっちかと言うと、そっちが好きだ。」


「じゃあな、そろそろ行くわ」

「ああ、又な」




「加藤!」

「何だ?」


「ありがとう」


 加藤は自転車を漕ぎながら、左手振って帰って行った。

 僕はその背中を見送った。



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