【最終話:綴られる未来、虹色パジャマと銀髪の騎士】
「私の物語は、私が決める。――そして、この世界のエンディングは『誰も不幸にならない』ことよ!」
私はスキル【綴る者】を全開にし、真っ白なページに最後の一行を書き加えた。
それは、現実と異世界、虚構と真実を繋ぐ、禁断の「架け橋」の物語。
眩い光が王宮を包み込み、世界の理が再構築されていく。
気がつくと、私は見慣れた自分の部屋に立っていた。
手にはあの虹色のもふもふパジャマ。けれど、隣には――。
「……ここが、君のいた世界か。ずいぶんと……平べったい鉄の箱(車)が走っているのだな」
漆黒の軍服姿で、異様なオーラを放つ銀髪の美形。アルフレッド様が、私のベッドに腰掛けていた。
「アルフレッド様! 本当に来ちゃったんですか!?」
「当たり前だ。君がどこへ行こうと、私の愛から逃げられると思うなと言っただろう?」
相変わらず重すぎる愛の言葉に苦笑していると、部屋の隅、私のパソコンの椅子に誰かが勝手に座っているのに気づいた。
「ほう……。これが『インターネット』か。これならばラルム、貴様の新作をリアルタイムで追えるというわけだな。実に合理的だ」
「魔王様まで来てるぅぅぅ!?」
仮面を外した魔王は、私のデスクトップに表示された小説投稿サイトを興味深そうに眺めている。どうやら彼は「続きが読みたい」という執念だけで、世界の壁を越えて「読者(ガチ勢)」として居着くつもりのようだ。
「きゅぅ〜♪」
フェンリルちゃんも、私のクッションの上で丸まって幸せそうに跳ねている。
こうして私は、二つの世界を行き来できる唯一の「観測者」となった。
平日は女子高生として学校に通い、放課後はアルフレッド様と一緒に原宿でクレープを食べ(彼は『この甘味、毒は入っていないだろうな?』と警戒しながらも私のあーんに悶絶していた)、週末は異世界へ戻って「聖女」として国の問題をラノベ知識で解決する。
魔王はといえば、私の執筆を応援(催促)しながら、魔界の技術を活かしてこちらの世界で「凄腕のITエンジニア」として働き始め、執筆資金を稼いでくれている。
「ラルム。……今日のデートは、あの『プリクラ』という儀式をしたい。君と私の愛を、不可侵の記録として残すのだ」
「はいはい、分かりましたから、その剣を隠してください伯爵様!」
名前を失い、パジャマ姿で放り出されたあの日。
まさかこんな、騒がしくて愛おしい物語が始まるなんて思ってもみなかった。
私の物語は、まだ始まったばかり。
次はどんな「お約束」を綴ろうか?
虹色のパジャマをなびかせながら、私は今日も新しいページを開く。
――完――




