5.挑発
「あの…シンカさん?」
私は人通りが減ったところで声をかけた。
「なに? って、ワタシの名前、知ってたのね。」
「はい。とある人に教えてもらいまして。」
「へぇ〜、ワタシって有名なのね。これのお陰かしら。」
シンカはそう言うと、鞄から水筒のようなものを出し、私に見せる。
「アナタも、これのことは知ったるわよね?」
シンカは水筒の中身─ヤナイを一口飲む。
「はい、もちろんです。ヤナイは、カスタルの多くの人が飲んでますから。」
「そうね。
これ、とっても美味しいわよね。ねぇ、アナタもいる?
一口だけだったら、無料にしとくわよ。それ以上は…そうね、安くしとくわ。
もうすぐ仕入れる予定だし、たぁくさん買っていっても構わないわよ。」
シンカはにこにこしながら、そう言う。
一方私は
「遠慮させていただきます。」
とキッパリと断った。
するとシンカは、驚く。
「え? いらないの?」
「はい。いりません。」
私は理由を説明しようと、一息置く。
「私は、ヤナイによって心が身体が壊れている人たちを、たくさん見ました。ヤナイによって、命を落とす人も─。
私はこれ以上、あんな人を見たくないし、増えてほしくもない。
だから─私は貴方を捕まえて、ヤナイの拡大を阻止する!」
「へぇ〜、どうやって?」
「もちろん力づくで!!」
私は隠し持っていた二本の短剣を手に取り、構える。
「ふふふ、アナタみたいな可愛い女の子が、そんな物騒なものを持っているなんて、思わなかったわ。」
「気づかれて逃げられたら、面倒だったので。」
「びっくりするほど正直ね。ワタシ、そういう子嫌いじゃないわよ。
さて、ワタシを捕まえる前に、一つ質問に答えてくれる?」
? この状況で何を訊く気だろう。
「アナタ、どこから来たの?
この町の者じゃないわよね。」
「……そうですね。トライヤンから来ました。」
「まぁ、トライヤン! いいわね〜。ここからは遠いわね〜。
アナタをヤナイ漬けにしたら、一気に広まるかしら。」
「!?」
私は半ば感情のままに、短刀を滑らし、シンカの喉元まで持っていき、ピタリと止めた。
「……ッ」
私は一瞬、コイツを“殺したい”と思ってしまった。でも、ダメだ。今ここでコイツを殺してはダメ。
シンカはさっき、ヤナイを『もうすぐ仕入れる予定』と言っていた。つまり、シンカの背後に真の黒幕がいるということ。それを吐かせるまでは、殺せない。
あっ、だからシンカは挑発するようなことを言ったのかな? 自分が死んでも問題ないから?
いや、こっちは私一人。逃げることをまず考えるのがセオリーだ。でも、さっきからシンカにその気配は全くない。
じゃぁ、何で…? まかさ時間を稼いでいる…?
そんな考えが過ぎていると、シンカがほんの一瞬だけ、私から視線を離す。そして─ニヤリと笑った。
!? まさか!?
このとき、私はやっと、自分に忍び寄る気配に気づき、後ろを振り返った。
私のすぐ後ろに、男がいて、剣先を上に構えていた。
「…っ!」
ヤバい、この距離じゃ避けられない。
斬られる─
その剣は私目掛け、迷いなく振り下ろされた──。
どうも、こんにちは。
かなり意地が悪いところで終わらせた自覚のある、あぷりこっとです。
自覚はあるのにそのままにする…我ながらどうかと思いますが、楽しみが増えたとでも思ってください。
シンカは「Re」から始まる異世界ものの作品に登場する、主人公の敵役のなかなか死なないお姉さんの口調をイメージしながら書きました。
あのお姉さんは私はかなり嫌いなのに…なんで参考にしたんだろう…と思います(笑)。
なので、シンカの声は私の脳内では完全に女性でした(笑)。
皆さんの脳内では、裏声使っている男の声だったかと。これからもそれでお願いします。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
バイバ〜イ!




