聖女様の胸中
(【聖女】なんて【役職】をどうして私が授かったんでしょう?)
セイラはいつも考える。
誰にでも優しくて救いの手を差し伸べるという役割を求められる聖女だが、セイラは腹黒く、敵対する者には容赦しない性格である。
セイラが10歳のとき、【聖女】であることが発覚した後、姉マリーはセイラと会うたびに嫌がらせをしてくるようになった。
セイラの大事にしていたポーチを壊したり、何かあるごとに難癖をつけてきたりといった程度のものではあったが。
自分は小さな村の教会で働いているのに妹は聖女だともてはやされているのが我慢ならなかったのであろう。
世間のイメージする慈悲深い聖女なら小さな悪戯だと許すのだろうが、セイラは違った。
聖女の権力を使って徹底的にマリーの身辺を調べ上げ、マリーの弱みを握った。調べる者たちには「姉のことが心配だから。」と言い訳をしたせいで、姉想いの聖女様と思われ、むしろセイラの株は上がった。
真面目に生きてきたとは到底言い切れないマリーには黒歴史がたくさんある。特に男関係の黒歴史は多い。
セイラがそれとなく知っていることをアピールすると、マリーの顔面は蒼白になった。プライドの高いマリーは黒歴史を流されることを本気で嫌がった。
慈悲深い聖女ならせめてここで嫌がらせをやめさせるだけで終わるのだろうが、セイラは違う。
逆らえない姉を手玉にとって遊びだしたのだ。
貴族の男がマリーの色仕掛けに引っ掛かったタイミングで突然姉のもとへ押しかけ、姉の秘密の一部を暴露して別れさせてしまったり、マリーが買った高価な指輪を川に沈めたりもした。
その貴族の男は脱税の常習犯で、女癖も悪く多くの女を泣かせてきた男であったし、高価な指輪は偽物でそれどころか付けている者に軽い洗脳を施す危険な物であったのだから実はマリーのためになっているのだが。
セイラはマリーのためになると知っていてやったし、マリーが反抗できなくなったのち、セイラがマリーを溺愛しているのも本当のことだ。
ただ一般的な”聖職者の愛”と比べると、その愛が随分歪んでしまっていることをセイラは自覚している。
(私は他者を支配し、愉悦に浸るような人間です。どうか罪深き私をお許しください。)
村の教会の像に手を合わせてそう祈るセイラは世間が思う完璧な聖女にはなれないだろう。それでも【聖女】として多くの人を救っていく。




