苦労する候補生達
放課後、学園ダンジョンの前には特別科候補生の5人とリュートの姉ライリが集まっていた。
学園内にあるとはいっても、ダンジョンなのでやはり危険な場所だ。
ダンジョン攻略の届け出を受理する際に、学園が実力のある生徒に同行を依頼する。
同行した生徒は危険な状況になれば手を貸すことを許されるが、手を貸した時点でその日のダンジョン攻略は終了となる。
「ではダンジョンに入るぞ!準備はいいか?」
オレンジ頭の少年、ヘリウスが呼びかける。
「なんであんたが仕切ってるのよ!」
早速ニーネが突っかかる。
「別に誰だっていいだろ!」
「あんたに指図されるのだけは絶対嫌!」
2人の肌に冷たい糸が触れる。
「ひっ!」
「...2人とも黙る...」
スーナがそう言うと、2人は大人しくなった。
「じゃあ、行こっか。」
「はい!」
テナが呼びかけ、ミリーが元気よく返事をする。
「こりゃ随分と個性豊かなパーティーだが、苦労しそうだな。」
ライリはそう言いながらついて行った。
一方その頃、特別科の5人は100階層でのんびりお茶していた。
「キノコ研究室はいかがでしたか?」
セイラがリュートに尋ねる。
「キノコいっぱいもらえたし、助かった!ありがとな!」
「キノコに興味あったんですね。状態異常魔法の方は習得できましたでしょうか?」
「あ、そういやそっちが目的だったな。役に立つやつがいっぱい手に入ったよ。」
「魔闘大会に向けて一歩前進ですわね。」
「「えええ?」」
アイカとレイが驚きの声をあげた。
「なんで知ってんだ?」
リュートが尋ねる。
「あら、本当に出られるんですね。もしかしたらと思って言ってみただけでしたのに。楽しみですわ。」
セイラはそう言って笑った。
「ちょっと待って!リュート本気?私いくらリュートが相手でも容赦しないけど?」
アイカが尋ねる。どうやらアイカも出るようだ。
「攻撃魔法無しで魔闘大会なんていくらリュートでも無謀だと思うわよ。」
レイも止めようとする。
「アイカと闘うのは楽しみだな。レイも出るのか?」
「武闘は出るつもりよ。魔闘は1年生だし推薦をもらうのが難しいかもね。あれ?ってことはリュートは推薦もらえたってこと?」
学園3大大会に出るには教師1人の推薦が必要だ。教師は各科80人ほどであり、生徒数は各科1学年400人×6の2400人もいる。
1人の教師につき1人しか推薦できない上に、複数人の教師が同じ生徒を推薦することも多々ある。これは教師のボーナスが推薦した生徒の成績で決まるためである。
さらに、知り合いの教師が少ない1年生はほとんど推薦されることはない。
故に毎年各大会の出場者は20人ほどであり、1年生は1人出るか出ないかと言うのが普通であった。
「ああ、武闘はダイン先生、魔闘はキノコの爺さんにもらえたよ。」
「すごいわね!推薦がもらえたってことは何か奥の手があるのね。私もアイカも試験官をしていた先生の推薦よ。」
(そう言えば試験官をしていたドワーフの先生は元気かな?明日は技術科に行ってみるか。)
リュートはそんなことを考えていた。
しばらくして、リュート達がダンジョンから外に出ると見覚えのある一行がいた。
「おーい!」
リュートが声をかけると、特別科候補生の5人とライリが振り向いた。
「おう!リュート、ちょうどよかった。こいつらに【ヒール】をかけてやってくれないか?」
候補生の5人はボロボロだった。いつも元気なミリーでさえも疲れ切った顔をしている。
「わかった。しかし、戻ってくるの随分早かったんだな?」
リュート達も5人が今日ダンジョンに行くことを知っていた。
「こいつら連携が滅茶苦茶で20階層でつまづきやがった。というかほぼ自滅だった。」
「やっぱりか…」
リュートはなんとなく予測ができていた。その原因もなんとなく予測がついている。
「私も治療のお手伝いしますわ。」
セイラも一緒になって5人に治癒魔法をかけ始めた。
「ニーネと俺、レイ、アイカで明日ダンジョンに潜ってみるのはどうだ?」
「そいつはいいな!大分改善されるかもな。」
リュートの意図を汲んだライリはそう言った。
「ちょ、ちょっと!私が悪いってこと?」
ニーネが尋ねる。
「話を聞いている限り他の方々もニーネさんも悪いですわ。リュートさん、私も同行してよろしいですか?」
「もちろん!ニーネの扱いに長けたセイラがいると助かるよ!」
「ちょ、ちょっと、聖女様にもし何かあったらどうすんの?」
ニーネはなんとかセイラを止めようとする。
「あら?天才魔弓使いのニーネさんが守ってくださると思って安心しているのですわよ?それともわたくしを守れる自信がないのですか?」
「わ、わかったわよ...」
こうして明日はリュート、レイ、アイカ、セイラ、ニーネの5人でダンジョンに潜ることになった。




