アイカの反応
(やってしまった!)
リュートがそう気づいたのは謁見が終わった後だった。謁見は王から祝い金が渡された後終了した。
リュートは別室に案内され、そこに城で働いている従者が今後のことについて説明しにきた。
「リュート準男爵様、受勲及び婚約おめでとうございます。今後のことについては準備が整い次第、使者を贈らせていただきます。」
「そうか、ありがとう。ん?...婚約?あ!」
(やばいやばい、婚約のことすっかり忘れてた。)
冷や汗を流しながらこの後、急いでアイカの元に向かった。アイカとはそこまで進展していないとはいえ、レイが気を利かせてくれたときは、2人で街でデートするくらいの仲にはなっていた。
アイカに会うとリュートは真っ先に謝る。
「ごめん!メリル王女と婚約することになってしまった。」
「え、それってもしかして貴族に?」
「うん、準男爵になった。」
アイカは目を潤ませると、
「やったじゃん、リュート!」
と言って抱きついてきた。
「えええええ」
リュートは困惑する。
「やったね、これでじゅうこ…じゃなかった。お屋敷が貰えるね。」
アイカは思わず重婚と言いそうになったのを屋敷で誤魔化す。
(ん?そんなに屋敷に住みたかったのか?確かにずっとねーちゃんの家に居候してたもんな…)
などと考えながらリュートが聞きたかったことを聞く。
「メリル王女との婚約は問題ないのか?」
「そりゃ、もちろんリュートが1人しか女の人を守れないような男だとは思ってないよ。将来的には5人くらいと結婚してもおかしくないよ。」
この国、というかこの世界の結婚観は、
『優れた男はたくさんの女を養う義務がある。ただし身の丈以上に多くの女を囲ってはならない。』
というものである。これ故に、貴族のみが重婚を認められており、爵位や冒険者ランクなどに応じて、結婚できる人数には暗黙の了解がある。
そのため複数人の妻を持つ男の妻となるのは名誉なことだと言われている。
もちろん平等に愛せる男は少ないのでトラブルも多々あるのだが…
それはともかく、アイカが怒ったりせずむしろ喜んでくれたのでリュートはほっとした。
そして、もう1人の会うべき人、メリル王女の元へと向かった。メリルの元に婚約を伝える使者が来てから30分ほど後の話である。
普段はテナかヘリウスが付いていないと会うことが許されないリュートだが、婚約したおかげか、2人きりで話す時間を貰えた。
応接室のような場所に通される。
しばしの沈黙の後、リュートが口を開いた。
「メリル王女、俺と婚約するのが少しでも嫌なら言ってください。」
ここで嫌と言われたなら、王に頭を下げて婚約を解消させてもらおう。許してもらうためなら魔王軍に突撃だってしてやる。そのくらいの覚悟でリュートは尋ねた。
「いやじゃ…ないです。むしろ夢のようです。リュート様と婚約できるなんて…」
顔を赤くしながらそう口にするメリルを見て、絶対に幸せにしようと心の中で強く誓ったリュートであった。




