王との謁見
『13歳になったばかりの【テイマー】がSランク冒険者昇格試験に1発合格』
このツッコミどころが多すぎる事実は王都中に衝撃を与えた。
13歳はもちろんユキヒロに代わって史上最年少、【テイマー】が合格するのは史上2人目、1発合格も史上初というまさに記録のオンパレードだった。
リュート自身も驚いた。擦り傷をつけたといえ完敗だったので合格しているなんて思っていなかった。
実際はアシュガー相手に擦り傷をつけるということ自体物凄いことなのだが。
そういうわけで実感がわかないまま胴上げされ、ネリにインタビューを受けた後、王城に連れて行かれた。
「これから王と謁見していただきます。」
兵士のその一言が、夢見心地だったリュートを現実に引き戻した。
「え、謁見?」
「はい、Sランク冒険者は下位貴族並みの権力を持ちますので、合格してすぐ王と謁見するのが決まりです。望めば爵位も貰えるかと。」
そんな説明を受けながらリュートは謁見の間に向かう。
ここにアイカがいたなら
「爵位はもらっといた方がいいよ。ほ、ほら、お嫁さんたくさん貰えるし...そしたら私も...いや、なんでもない」
とか言いそうであるが、リュートは爵位には興味がなかった。
謁見の間の扉が開くと、真ん中に仮面を被って顔を隠した王、その左隣には王妃や美しい王女達、右隣には騎士団長のアシュガーと魔法使い風の女性、偉そうなおじさん達が並んでいた。
リュートは教えられていた通りに王の前で跪く。
「面をあげよ。」
という声を聞き顔をあげると、王が仮面を外した。
「あ!」
リュートは思わず声を漏らしてしまう。
そこにいたのは、以前ギルドでリュート達に罰を言い渡した白いひげを長く伸ばした50代くらいの男だった。
(確かになんかオーラあったもんな...ん?あの場にレイもいたよな?もしかしてあいつ知らない振りをしてたのか?)
リュートが思考を巡らせていると、王がニヤリと笑って口を開いた。
「リュート、久しぶりだな、あの場でレイには幻惑の魔法を掛けていたんだ。いろいろ聞きたいことはあるだろうが、その話は後だ。」
「お久しぶりです。なるほど...あのときは失礼ながらギルドマスターかと思っていました。」
「まあ、そう思わせるシチュエーションを用意したからな。それで本題だが」
そこで言葉を区切ると王の眼光がさらに鋭くなる。
「強制ではないんだが、我が国の貴族にならないか?他のSランク冒険者とは違って騎士爵ではない、準男爵だ。」
周りがざわめく。
「へ、陛下!ど、どうして13歳の子供に準男爵を?」
偉そうなおじさんのうち1人がリュートの疑問を代わりに口にしてくれた。
「正直に言おう。アシュガーはリュートを勇者以上の逸材だと認めておる。それはつまりSSSランクに至れる可能性を持つということだ。」
再び周囲がざわめく。SSSランク冒険者、それは召喚された勇者でもほぼ至ることができないという伝説の称号。約3000年前に召喚された戦闘狂の勇者が一生を賭けてその称号に至ることができたが、その過酷な試練の後遺症で命を落としたという伝説がある。
「リュートはソリリスのメリル王女とも親しくしているという。正直リュートが他国の貴族となるのは惜しい。」
「事情はわかりました。しかし、この国の貴族になることの俺のメリットはなんでしょうか?」
「まずはメリル王女との婚約。余の娘を向こうの王子に嫁がせる代わりにこれを認めてもらえるように話をつけた。そして準男爵には、国から王都に屋敷と毎月の給金3000万ダーツが支給される。そして最後に、」
王の表情が変わる。『これでチェックメイトだ。』という声が聞こえてきそうだ。
「勇者を徴兵する権利は余にあるのだが、勇者レイを戦場に向かわせるときはリュートとリュートが望む者に同行する権利を与えよう。これは他の国にはできんぞ。」
リュートは痛いところを突かれたと思った。大切な仲間を守る権利は、リュートにとってものすごく大きい。
それゆえに、メリル王女との婚約という1つ目のメリット(条件)をすっかり忘れて受け入れてしまった。




