人見知り王女攻略
紫色の目を持ち、紫色の髪を長く伸ばした少し小柄な少女が緊張した面持ちで部屋に入ってくる。全身をキラキラした青いドレスに身を包んでいる。
その後ろには金髪ショートカットの背の高いモデル体型の少女が立っていた。こちらは白いドレスアーマーに身を包み、1メートルを超える大盾を手に持っていた。
ガゼルが口を開く。
「メリル王女殿下、テナ嬢、こちらが例の冒険者達です。」
「ランザーク王国でAランク冒険者をしているリュートと申します」
レイとアイカもリュートに続いて挨拶をする。
「ソ、ソリリス連邦国第三王女のメ、メリルです。」
王女は俯きながら小さな声で挨拶する。どうやら聞いていた通り極度の人見知りのようだ。
「私はエマリーノ侯爵家次女のテナ・エマリーノ。ヘリウスとともにメリル様の護衛をしてるの。」
金髪ショートのテナは、リュート達が思っていた侯爵家のご令嬢のイメージに比べるとどこかサバサバしているような印象を持った。
挨拶が終わるとリュートが以前から薄々疑問に思っていたことを聞いてみた。
「どうして辺境伯の跡取りとか侯爵家のご令嬢とか、物凄く偉い方々が護衛をされているのですか?」
これにはガゼルが答える。
「うちの国からランザーク王国の学園に入学するには何か正式な理由がないといけないから、どこの親も護衛に行かせたがるんだ。それにうちのヘリウスもテナ嬢もなかなかに腕が立つからな。」
「テナは武闘派令嬢なんて呼ばれてるもんなイタッ」
ヘリウスにガゼルのチョップとテナの脛への蹴りが同時に届いた。
「ごめんな、うちの息子が失礼なやつで。学園で失礼なことを言ったら容赦無く殴っていいぞ。」
「はい、学園にいる間に私が躾けておきますね。」
ヘリウスは「痛え」と言いながら脛を抑えていた。
メリル王女はその様子を見てクスクス笑っていたが、リュートが見ていることに気づくと笑うのをやめて視線をそらしてしまった。
この日リュート達はシュトリリウム邸に一泊した。全員に来客用の個室が準備されており、ベットはリュートとアイカには信じられないくらいふかふかだった。
しかし、一緒に取った夕食や翌日の朝食の時間でもついにメリル王女とはほとんど話さずに終わった。レイやアイカも気を使って質問していたが、やはり王女は緊張してしまうようで会話は弾まなかった。
テナとは3人ともそれなりに仲良くなった。テナはリュート達冒険者の暮らしに興味津々という感じだったし、全く畏まらずにヘリウスと話すリュート達を見て、「私ともそれくらいの感じで接して欲しいな」と言っていた。
リュートはますますメリルが疎外感を感じるのではと心配したが、テナがメリルが会話に入れるようにと気遣っていた。どうやらメリルとテナはとても仲が良さそうで、メリルはテナに対しては完全に心を開いていると言った感じだった。
1泊した次の日、帰りの魔導船で、リュートが(今日も王女様とはあまり話せていないな。どうすればいいんだろ。)などと考えていると、意外にもメリルの方から話しかけてきた。
「あ、あの、リュートさん!」
「何でしょう?」
「さ、触ってもいいですか?」
「えと…何を?」
「そ、それです。」
メリルが指差していたのはリュートの頭の上、スライムだった。
「あ、どうぞ」
スライムがピョーンとメリルの膝の上に乗ったので「ひゃあ」と驚いた声を上げたが、そのあと恐る恐るスライムに触れたメリルは
「あっ、冷たくて気持ちい。」
と言ってスライムを撫で始めた。
リュートはチャンスだと思い、【スライム形状変化】や【スライム拡大縮小】を使って、メリルの膝に乗っているスライムを花や動物の形に変化させて見せた。
メリルは最初は驚いていたが、「わあ、すごい!」と目をキラキラさせていたので、そのまま冒険で出会った動物や魔物や王都で食べた食べ物などをスライムで再現しながら話してみると、楽しそうに聞いてくれた。
「何だかリュートさんのお話を聞いているとランザーク王国での日々が楽しみになってきました。ありがとうございます。」
そう言ってニコッと笑ったメリルの笑顔が綺麗で見惚れていると、隣に座っていたアイカから太ももをつねられた。




