63話 【災禍の竜】
そうして街を歩く事数分──
「……ここなのです」
ラウラの家に着いた。
【災禍の竜】襲撃後に、ラウラと同様に殆どの竜族がこの街を出ていったんだろう。
道中には雪も積もりっぱなし。
中には屋根に雪が積もり過ぎて、倒壊してしまった家もある。
この街は放置状態って訳だ。
そんな中──
「……ラウラの家だけ、綺麗じゃないか?」
唯一ラウラの家の屋根だけ、ほとんど雪が積もっていない。
まさか──
「誰か、来ていたのか?」
「……………………」
だが中に入らなければ真実を知る事はない。
俺達は警戒を強め、その扉を開いた。
そして──
「これは……!」
ラウラの家に、直前まで誰かがいた事を確信した。
──机の上に置かれた二つのスープ。
そのスープからは湯気が出ていたのだ。
外は極寒。
直前でなければ湯気は出ない。
そして、そのスープの傍らには一枚の手紙が置かれている。
手紙に書かれていたのはたったの五文字。
──『詮索するな』
筆記体で書き手の正体を絞らせない為か、わざわざコンピューターを使って書かれた紙が置かれている。
だが──
「このスープ……お母様の作ってくれたスープの匂いなのです」
「……は?」
「このスープの作り方を知ってるのはお母様、ラウラ、そして……お兄様」
「まさか……!?」
ラウラとアルマさんはありえない。
つまり──
「多分……この手紙はお兄様が書いたものなのです」
「…………」
だとしたら、ラウラに直接会って言うだろう。
いや……会えない理由があるのか?
ラウラが兄と対面したのは何年も前の話らしいしな。
仮にこの手紙を書いたのがラウラの兄──リオンさんの物だとしてくださいね、一体何を詮索するななのか。
アルマさんの手紙に書いてある事と、何か関係あるのだろうか。
だが──
「……ラウラ達は、お母様の言う真実を確かめる為にここへ来たのです。たとえこれがお兄様からのものでも、ここまで来て引き下がるのは嫌なのです」
俺も、ラウラは【災禍の竜】──実の母親を殺した者として、その真実を知るべきだと思う。
互いに頷き、そして──
「見つけたのです……この中に、お母様の見た全てが……」
棚の中に、一枚の手紙を見つけた。
早速目を通すラウラ。
俺もそれを覗き込み、内容を確認する
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二人へ──
まずこの手紙をどちらかが読んでいたとしたら、それは私が死んだ時か相当運が良かったかのどちらかね。
元気かしら?
ラウラは元気にやれているようだけど、リオンの情報は私の耳には届かなかったわ。
リオンも元気に生活できていればいいけど。
そろそろ本題を書くとしましょう。
あの時、私は全生命力を代償にする竜化──【金星】を使って、【災禍の竜】を討ったわ。
でも【金星】を使った私は死ぬ。
私は積もった雪に倒れ、静かに死を待ったわ。
そんな時、私は消え行く意識の中で、ある声を聞いたの。
『お前の脳、ちと借りるわい』
こんな声をね。
それから、その男が私の身体に何かを突き刺したわ。
その感覚と同時に、首から下の感覚が消えたの。
何があったかは分からないけど、多分首から下は不要だったから切り捨てたんでしょうね。
すぐに私は意識を失ったわ。
そして、私はとある施設で目覚めたの。
目覚めるはずが無いのに、ね。
どうして私が目覚めたのかは今でも分からないわ。
とにかく、私はそこで【災禍の竜】にされた。
その時にどういう訳か、無くなった首から下も復活したわ。
そう、【災禍の竜】の正体は竜族なのよ。
後から知った事だけど、何かの条件を満たした竜族に対して、【崩壊の果実】という果物の果汁を与える事で【災禍の竜】になるらしいわね。
そうして、私には新しい身体と、ニつ目の人格──アスタロトの人格が与えられたわ。
……と言っても、この身体の所有権はほぼアスタロトにあったの。
アスタロトが得た情報は、私に回って来なかったしね。
……まあ逆もまた然りで、こうして手紙を残す事が出来た訳だけど。
私が意識を持ってこの身体を動かせるのはたった30分──アスタロトの意識が寝ている時だけ。
今書いている手紙も、私がその30分の間に書いてるもの。
書くのにも一苦労だわ。
ここから先は更に重要な事を記しておくわ。
寧ろ、親としてはここから先は見ないで欲しい。
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「あれ……?」
手紙はそこで途切れていた。
……というか、破られたような跡がある。
何者かに、意図的に切られたらしい。
(さっきラウラが言っていた事が合っているなら、大方リオンさんが破ったんだろう)
だが──
「【災禍の竜】の正体が……竜族……?」
その前に書いてあった事実でさえ、俺達に途轍もない衝撃を与えた。
「…………どんな事が書かれていても、受け入れるつもりだったのです。けど──」
手紙に書かれた文字が滲む。
「同族に、故郷が……お母様が壊された……そんな事実、ラウラには……受け止めきれないのです……」
「…………」
「しかもラウラを……ラウラを最後まで守ってくれたお母様も、故郷を滅ぼした化け物になって…………」
故郷を同族に滅ぼされ、母親を失い、挙げ句の果に母親さえも故郷を滅ぼした化け物になった。
そんなラウラに、俺から掛けられる言葉は無い。
だから──
「……っ!」
「沢山泣けばいい」
俺はラウラの頭を撫でる。
「う、う……ぁぁ……」
そして──
「うぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
溜まりに溜まったラウラの思いを、最後まで爆発させた。
三章、遂に完結ですっっ!!
今回の章は書いてて凄く楽しかったですね……同時にラウラが可哀想すぎて……うぅ……
【崩壊の果実】って?
リオンは何処に?
手紙の後半には何があった?
謎は色々残ってますね……
三章面白かった!
と言う方は是非感想下さいな!
励みになりますので!
この後は恒例のキャラ紹介やります!
そちらもぜひご拝読くださいな!





