28話 俺、六年間をシャルにぶつけます。私、六年間を夜にぶつけます。
AnotherView:???
WGAの最終試験、その最後の試合が幕を開ける。
まず舞台に現れたのは、刀を腰に携えた銀髪の少年──天霧夜。
対するは、赤髪の少女──シャル・アストリア。
二人共、相手の顔を見て、驚きと共に懐かしさを蘇らせる。
「久しぶりだな、シャル」
「久しぶりね、夜」
シャルは虚空から真紅の大剣を取り出し、夜の方も腰に携えた刀を鞘から抜き出す。
同時に互いの得物を構える。
「色々と話したい事はあるが──」
「そうね、でもまずは──」
試合開始の合図が舞台に響き渡る。
「「俺(私)の六年間を──」」
二人は距離を詰め──
「「一番、お前(貴方)に伝えたい!!」」
互いの得物を衝突させた。
対戦相手が夜だと分かった際に、シャルは魔法を使わないという枷を自分に嵌めていた。
それは決して夜を侮っている訳ではなく、夜から貰った力を使っては、私の六年間を感じてもらえない。
だから自分の力だけで夜を倒したい──という、自身のプライドから来ている。
夜はシャルの大剣を躱し、受け流し、僅かなスキを見つけては斬り込んでいく。
六年間をひたすら自身の鍛錬に使った夜の刀の技量は、全世界で見てもトップクラスのものになっていた。
シャルは夜の鋭い一閃を、正面から受け止め、大胆に攻め込んでいく。
六年間で各界を回り続けて世界を知り、いくつもの実戦を積んだシャルの経験は、凄まじい勝負勘を養っていた。
どちらもこの六年を有用に使い、己自身を鍛え続けてきた。
そんな二人の剣戟を、最後の試合という事もあり皆が見ている。
「……凄い」
ある者は寝る事も忘れ、その試合に入り込み──
「まるで武器が身体の一部なのです……」
またある者は二人の様をそう表し──
「あれが魔力を持たぬと馬鹿にされ続けてなお、己を鍛え続けた者同士の試合か。いずれ手合わせしたいものだ」
そしてある者は二人に尊敬の念を向けていた。
そうして、一進一退の剣戟が続いて一分が経った頃。
互いの実力がほぼ同一であると判断した夜は、シャルから距離を取り、刀を鞘に収めて構えを取る。
これまでの戦いで、シャルは魔法を使わなかった。
夜には何となく理由も分かっていたが、だからといって夜が遠慮する必要は無い。
だからこそ、夜は六年で一番鍛え続けた文字通りの必殺技を振るうことにした。
安易に使うわけにはいかないが、遠距離攻撃を使わない今のシャルには効果的だと判断した。
その為に、夜は集眼を発動させる。
「…………」
シャルは困惑していた。
刀の間合いを活かすには、大剣の間合いの内側に入って打ち合うしかないのに、わざわざその間合いを放棄して距離を取った。
その事実と夜の構えに違和感を持ちつつも、大剣のリーチを活かして突撃する。
魔界には刀の文化は存在しない。
だから、夜のその構えが次にどう動くか、シャルは気付かなかったのだ。
シャルは大剣を振り下ろす寸前──
(!?)
途轍もない悪寒を感じ、大剣の軌道を右方向に変える。
「居合、一閃ッ!」
夜の居合は、常人なら耐えられない鍛錬を六年間続けた事により、人が見える速度を超越していた。
シャルの大剣に不可視の斬撃が走り、予想外の衝撃から大剣を飛ばされてしまう。
だが、夜は刀を完全に振り抜いた状態だ。
夜はこの一撃にこの勝負の全てを賭けていた。
音速を超える不可視の斬撃が、シャルに吸い込まれていくのを強化された視覚で確認していたが、その必殺技はシャルの大剣を弾き飛ばしただけに終わった。
勝負勘だけで、シャルは夜の必殺技を防いでみせたのだ。
シャルは武器を失ったが、だからといって攻撃手段が無い訳ではない。
シャルは完全に刀を振り抜き、スキだらけになった夜の身体に──
「ハァァッ!!!!」
「ぐっ……」
全力で、シャルの拳を叩き込んだ。
「勝者、2001番!」
「「「「「………………」」」」」
数秒の沈黙の後──
「「「「「うぉぉぉおおおお!!!!!!!!!!!」」」」」
今日一番の歓声が、闘技場を包み込んだ。
???'sView end
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ここ……は?」
「あ、起きたのね」
気が付くと、俺は見慣れない部屋にいた。
その問いに答えてくれたのはガイア。
「ここはWGAの保健室だ。お前はシャルの拳を腹に受けた後に気絶しちまったんだよ。ま、こうしてすぐに起きたから良かったけどな」
なるほど、情けない話だ。
そして──
「シャル、本当に久しぶりだな」
「ええ、本当に。あの時の事は絶対に忘れないわ。今でもずっと感謝してる」
「そんなにしっかりしなくてもいいんじゃないか?」
「駄目よ。人から受けた感謝を忘れる程、人でなしじゃないわ」
そういってニッコリ笑うシャル。
六年経って、かなり丸い性格になったようだ。
孤児院を自分で作り上げるくらいだしな。
そして──
「夜さん、やっぱりアストリア孤児院の院長さんとお知り合いなんですか!?」
「Zzz……」
「昔ちょっとな」
「咲ちゃんも、久しぶりね」
「はい! お久しぶりですシャルさん!」
「ちょ、咲さんもお知り合いなんですか!?」
昔何があったかは濁しておく。
それはそれとして、ガイアとシャル以外にも、この部屋にはリンカと月夜、そして咲がいる。
皆、俺の事を心配して来てくれたようだ。
それから6人(一人寝てるし5人か)で少し話していると──
『合格者の選定が終了しました。これより合格者発表と順位発表に移るので、校庭にお集まり下さい』
というアナウンスが流れてくる。
幸い、俺の身体に異常は無かったので、六人で校庭に向かった。
最後まで読んでくれてありがとう。
久しぶりに夜に会ったけど、変わってないようで良かったわ。
それにしても、順位が気になるわ。
全部結構上手く行ったと思うのだけれど、合格してる? 大丈夫? 心配だわ……(シャル)





