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14話 俺、更に鍛錬を積みまくったからそれなりに戦えるはずです。




 トレーニングルームの中心で木刀を構える。


『じゃあおにいちゃん、始めるよ!』

「ああ、いつでも大丈夫だ。速度は5.0からの加速、武器種は槍で頼む」


 いつもと同じ様に目を閉じる。


 咲は別室から機械の操作を操作し、俺の鍛錬をサポートしてくれる。

 あれから6年間。

 ジルとの戦いで力不足を感じた俺は、天霧の当主としても、次に彼女にあった時に失望させない為にも、厳しい鍛錬を続けてきた。


「…………」


 ふと、敵意を持った何かが出現する。

 目を閉じているから見えていないが、俺の前には咲お手製の機械が配置されたはずだ。


『参、弐、壱──』


 トレーニングルームに機械音が流れる。

 緊張で固まった意識をリラックスさせ、認識範囲をこの空間に拡張する。


感覚拡張(スプレッドセンス)

 集眼(ゾーンアイ)の一点集中とは反対に、意識を全体に広げ、安定した戦闘状態を維持する、この六年間で身に着けた技の一つだ。


『──戦闘訓練【回避】を開始します』

「っ!」


 アナウンスと同時に、俺は身体を後ろに反らす。

 その身体の上を風が通り抜け、その後も次々と繰り出される槍撃を身体を捻り、武器でいなし、あえて踏み込んで回避していく。


 無論、一度も目は開けていない。

 音や気配といった限られた情報から、敵の位置や攻撃範囲を探って動いている。


『──攻撃速度を6.0に変更します』


 繰り出される槍の速度が上がる。


『──7.0……8.0……9.0……』

「くっ……」


 槍は加速し続け、感覚だけで避け続けるのも厳しくなって来る頃だ。

 俺は目を開け、視覚による情報も頼る事にする。

 いくら気配察知能力が上がったとはいえ、やはり直接見た方が状況は理解出来るからな。


 そういえば、六年前は目を開けても速度5.0が限界だったな……っと、自分の成長を喜んでる場合じゃない。


『──攻撃速度10.0に達しました。【エアロプログラム】を作動します』


 きたか。


【エアロプログラム】

 実戦を想定して、咲が作り出したプログラムだ。

 この部屋を不規則な風が吹き荒れ、時には木刀なんかも飛んでくる。

 戦場では何か起こるか分からない。

 だからこそ、こうした不確定要素に対する対応力を身に着けておくのは重要だろう。

 ジルとの戦いで、よりそれを理解した。


「まだ、まだぁ!」


 後ろから飛んできた木刀を叩き落とし、その勢いを継続したまま正面から迫る槍を身体を捻って回避する。


『──11.0……12.0……』


 一人で霊装が使えない以上、俺には決定打になりうる高火力攻撃が無い。

 だからこそ、俺は回避技術を磨き続けた。

 回避し続けて敵の弱点を探り、天霧に伝わる多彩な技で弱点を突く。

 これが俺の戦い方だ。


 卑怯と言われでも仕方ないが、実戦に卑怯もクソもない。


『──15.0……最高速度に到達しました』

「くうっ……ッ!」


 もう敵の攻撃は目で追えない程の速さになっており、反射だけで木刀を動かし続けている状態だ。

 そんな状態で長く保つ訳もなく──


「うわっ!?」


 背中に衝撃が与えられた。

 エアロプログラムにより、飛んできた木刀だ。

 あまりの速度に、背後を意識する余裕が無かった。

 まだまだだな……


『──記録:6分43秒。到達速度は最高速度の15.0です』

「でも新記録だ」


 速度15.0──攻撃速度でいえば、戦争時代のエルフ最強の剣士【風神】が、全力で補助魔法をかけた後に剣を振るった時と同じくらいだそうだ。

 もちろん威力は比べ物にならないだろうし、実戦で立ち会って対応できるか、というのはまた別問題だが。


 それでも速度15.0で、ましてやその状態から13秒間も避け続けてられたのは今回が初めてだ。

 素直にこの結果を喜ぼう。


「お疲れ様、今朝は凄かったね。新記録?」


 鍛錬が終わって床に座る俺に、咲が部屋から出て声を掛けてくる。


「ああ、六年前は速度15.0なんて夢のまた夢だったのにな……成長するもんだ。咲、毎朝ありがとうな」


 俺がここまでの技量を身に着けられのも、全て咲が開発し、手伝ってくれているおかげだ。

 いくら感謝しても足りない。


「気にしないで、私もお兄ちゃん相手にいっつも実験させてもらってるしね!」

「さて、俺はそろそろ()()に行ってくる」

「あ、今日ちょっと相談したい事があるんだけど、お昼に時間取れる?」

「ああ、12時半でいいか?」

「それで大丈夫、行ってらっしゃい!」


 俺はトレーニングルームを出て、三年前に庭に作った道場に向かう。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 ──ガラガラ


 古風で小気味良い音が響く。

 こういった扉を見る事はほとんど無くなってしまったが、何とも言えないこの音が個人的に好きで、自分の道場に取り付けてみた。


 俺が道場を作った理由はいくつかあるが、一番の理由はこの家を守る天霧の技術の継承者がいなくなる事を防ぐ為だ。

 俺達兄妹も人間の中じゃ強い方だとは思うが、それでも経験は薄く、幼い。

 そんな俺達だし、何らかの事故で天霧が途絶えかねない。

 天霧家は人間界での影響も大きい。

 仮にその血を継ぐ者がいなくなれば、人間界上層部の均衡を崩す事になりかねない。

 終戦したあの戦争だって、再び起こる可能性も無くはない。


 そうした事情から──


「おはよーございまーす」

「……ん」

「おはようございます師匠、今日も頑張りましょう」

「三人共おはよう、さっそくやるぞ」


 三人の弟子をとった。

 三人共、住み込みで天霧の技術を習得する為に奮闘中で、俺が道場で戦闘術を、咲が機械の扱いを教えている。

 俺達も完璧ではないが、後継者を作るメリットを考えると出来るだけ技術の継承は早い方がいい。



 弟子達はみんな13歳、俺の三つ下だ。

 三人の中のリーダーである一条裕翔(いちじょうゆうと)、裕翔の双子の妹花梨(かりん)、そして頭脳派のラト・メルクリア。


 三年前、才能のある弟子を集める為に、俺は人間界を渡り歩いていた。


 そこで最初に見つけた逸材が裕翔だ。

 裕翔は弓状の霊装を持つ弓使いだが、接近された時の為に短剣術も身に着けている。

 それに加え、どうやら出身の村で自警団の手伝いをしていたらしく、実戦経験がそれなりにあり、それでいて変な癖が付いていない。

 基本だけを完璧におさえていた為、後は応用を覚えるだけだ。

 こっちとしては教えやすくて助かる。


 そして裕翔の双子の妹の花梨。

 裕翔を連れて行く事が決まった時は弟子にする気は無かったんだが、裕翔を弟子にしてから1年後──


『私を弟子にしてください』


 と直接訪問してきた。

 その時の花梨から凄まじいオーラを感じた俺は、一年鍛え続け、天霧の戦闘術を教えてきた裕翔との模擬戦を執り行った。


 裕翔は木製の短剣、花梨は素手で戦い、結果花梨が負けたものの、凄まじい気迫を纏って善戦。

 並の大人を複数人同時に相手取って倒せるレベルに至っていた裕翔を相手に、何度か攻撃を当てていた。


 何が花梨にあったのかは分からないが、これだけの気迫を出せるなら天霧の力にもなり得るだろうし、花梨自身も強さを望んでいる。


 双方にメリットがあると考えて、俺は花梨を弟子にした。

 ちなみに、花梨には霊装は無い。


 最後のラトは俺の弟子──と言うより咲の弟子としてこの家にいる。


 『もっと機械(彼等)を弄りたいから、天霧家の警備用ロボットを作った人の弟子にさせて……』


 と、この家に直談判してきた時は驚いた。

 咲の名前を直接言っていたわけではないが、秘匿していた咲の存在を知っている点から、当時の俺は、ラトへ警戒心を抱いていた。


 だが──


『ずっと家の周りから見てたけど、あれだけ高性能な機械が、勝手に自立して動けるはずが無いのダ。大まかな支持を出す司令官がいるはず。でも夜さんが出掛けている時でも機械が動きを変える事はあったし、中にもう一人、誰かいるって思ったのダ。……違ったのダ?』


 警備の機械や俺の動きからここまで完璧に見破られてはどうしようもない。

 しかも──


『弟子にしてくれなかったらこの情報をバラすのダ』


 なんて言われてしまってはどうしようもない。

 仕方なく咲に会わせたが、一連の事を話した後、ラトの事を気に入ったみたいだ。


 ちなみにラトの弟子入り以降、天霧家はよりスキの無い城塞へと進化した。


 一応、ラトも戦闘技術を習得する為に、俺との訓練をしている。


『咲さんがやってる事なら、ラトもやってみたいのダ』


 とのことらしい。

 天霧の技術がラトから漏れる事を避ける意味でも、ラト自身の戦闘能力が高いに越した事はない。

 技術が漏れる事は()()()()()ようにしてあるが、念には念を入れておく。

 ラトも自身の霊装は無いみたいだ。



 そうした三人の弟子達との訓練を昼終え、話をしたいといっていた咲の部屋へ向かった。

最後まで読んでくれてありがとうなのダ。

それはともかく、ブックマーク忘れてないカ?

ブックマークの数分、ラトと咲さんの研究費用になるから、沢山してほしいのダ。

一人一回までだから、読者さんが広めてくれると嬉しいのダ!(ラト)

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