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12話 私、ママと呼ばれてます。




 あれから六年が経過した。


 魔界は人間界の技術を更に研究し、遂には人間界を守る防壁を突破し、【光帝】率いる魔族軍は人間界へと侵攻した。

 長年の平和が招いた平和ボケでパニックになった人間界に、この侵攻は大きな影響を与えた。

 だがこの戦いを最後に、何故か戦争は終結へと向かい始め、遂に五界戦争は終結した。

 そして戦争終結から三年後──




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 AnotherView:Shall Astoria




「ねぇねぇシャルママ! こっち来て!」

「今行くわ、あとシャルママはやめなさい」

「なぁシャルママ、ご飯まだ?」

「すぐに作るから待ってて! あとシャルママはやめなさい」


 私は魔界に帰り、魔界の辺境の街で孤児院を開いていた。

 なんでこんな事になったのか。

 時は遡って六年前──




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「あ、ありがとうございます」

「いいのよ、ゆっくり食べて?」


 あれからの私は、あの山を基点に人間界の現状を知ろうと動いていたのよね。

 確かこの日は、山から離れている間に日が沈んでしまって、旅先にあった洞窟で眠ってたはず。

 のだけど、朝起きたらふかふかのベッドに寝かされていて、当時の私はついに精神がおかしくなったかと気が気じゃなかった。


「気が付いた?」


 この人間は紗綾(さや)

 18歳の普通の女の子で、霊装使いでもない。

 確かに見た目はそれらしいけど、当時の私は紗綾の持つかも雰囲気からもう少し大人だと思っていた。


 紗綾は洞窟の前をたまたま通りかかり、そこで一人の私を見つけ、孤児だと思って拾ってくれたらしい。


「違った?」


 当時の私はこくこくと首を振って、孤児だということを肯定した。


 本当の孤児ではないけど、人間界の現状を知るには良い機会かもしれない。

 私はそう考えていた。

 当時の自分はそれで納得していたけど、今思えば人の温もりに甘えたかったのかもしれない。


 戦争が終わるまでの三年間。

 私は孤児院で料理、洗濯、コミュニケーション、人間界に発達する機械、他にも沢山の事を学ばせてもらった。


 最初は幼い頃からの教育により、人間界は科学を発展させ続けて他種族と対抗出来ていたのね……とか思ってたけど、いつしか学びの時間が私にとって楽しくなっていった。


 それと、紗綾からは孤児や種族について学んだ。

 世界には戦争によって生まれた孤児が多数存在する事を。


 ──そして彼女には、異種族とも手を取り合って、そういった子供たちを無くしたいという夢がある事。


 その考えに感銘を受けた私は、敵対種族だからという理由で子供を殺していた自分が、どれほど重いことをしていたかを実感した。

 たとえそれが魔界からの命令であって、私に逆らう権利がなかったとしても。


 私が殺した彼らに、何か罪があっただろうか。

 当時の私がそんな事を考えていた時、人間界が魔族に襲撃された。


 孤児院にも魔族が来るかもしれない。

 そう考えたであろう紗綾は──


「みんなを地下室に連れて行って」


 孤児院の中で一番の年長だった私に他の子を任せ、単独で孤児院の外に出ていった。

 紗綾は身を呈してでも私達を守ろうとしていた。

 三年も一緒に暮らしていた私には、紗綾がどういう性格かを熟知していた。


 そんな紗綾が私は好きだし、絶対に死なせない。

 皆を誘導した後、こっそり気配を遮断して孤児院を出た。

 例え私が魔族だとバレても、紗綾には生きていてほしかった。


「シャル、ちゃん?」


 結果、孤児院には数人の魔族が襲撃に来たけど、被害は無かった。

 翼を展開して皆を守ったからね。

 でも──


 紗綾の前で翼を展開し、魔法を使用した私は、事情を話さざるをえなくなった。

 私が魔族だという事、この純白の翼が私を救ってくれた、とある恩人の霊装だという事、そして三年前の霊装神殿襲撃事件の首謀者が私だという事。

 それを聞いた紗綾は──


「魔族って事、私が気にすると思った? いつも言ってるけど異種族だって同じ命には変わり無いんだしそんなの関係ないよ。でもね……」


 その後の言葉は、今でも私の胸に刻まれている。


「シャルちゃん、人を殺した事を後悔してるんじゃない? だったらその選択は間違いだよ。私は別に聖人君子じゃないし、やむを得ない事情だってあると思う。でも大事な選択を他人に任せたら、自分のやりたい事なんて何一つ出来ずに終わっちゃう。結局何が言いたいのかって言うとね、『何をやるにしても、後悔しない選択を自分自身で選ぶのが大切』って事。自分の大切な事、他の人に決めつけられたら楽しくないでしょ?」


 この言葉を聞いた私はふるふると頷いて、紗綾の胸に泣きながら飛び込んだっけ?


 なんというか、人間界にいた頃は泣いてばっかりだった気がする。

 魔界の事ばかりを考え、自分のやりたい事を選ぶという発想が無かった当時の私にとって、この言葉は衝撃だった。

 私の頭を撫でていた紗綾の手のぬくもりは、今も忘れた事はない。


 そんな紗綾とも、別れの日はやってくる。


「ホントに行っちゃうのね」

「本当にありがとう。でもこれは【後悔しない選択】だから大丈夫よ!」

「うん、それなら良し!」


 魔族の孤児院襲撃から数ヶ月後。

 五界戦争終結の直後に、私は各世界を旅する事にした。


 五界戦争は多くの孤児を生んでしまった。

 紗綾の元でそれを学んだ私は、各世界の孤児達を、私が新たに建てた孤児院で養おうと思っていた。

 一応魔族の部隊長をやっていたから戦闘には自信があるし、何より戦争が終わったのが大きい。

 見た目が人間とはいえ、他種族から唐突に攻撃を仕掛けられる事も少ないと思う。


「またいつでも帰ってきてね? みんなシャルちゃんには懐いてたから、きっと喜ぶよ」

「ええ、それじゃ行ってきます」


 そうして、私は世界を旅した。


 彼から貰った【共鳴の翼(レゾナンス・ウィング)】、使い方はなんとなく分かってきた。

 翼は大きさは自在に変えることができて、大きさに比例して魔力の変換効率も魔法の威力も、そして飛行速度も上がる。

 飛行継続時間は無限だと思う。

 飛んでて疲れを感じた事がない。

 そういえば──夜、元気にしているかしら。

 いくら平和ボケしているといっても天霧は有名らしく、孤児院のテレビに映っている姿を何度か見たことがある。

 けど、やっぱり心配だ。


 とにかく、その翼を使って私は世界を飛び回った。

 頂上が雲を突き破った世界樹、噴火の止まらない火山、鮮やかに色づいた不思議な雪の雪原。

 他にも色んな物を見た。


 ──そして、その何処にでも孤児はいた。


 できる限りの孤児を、魔界の辺境の街【パープリン】にある私の孤児院に連れて行った。

 悔しいけど、全員を私の建てた孤児院に集める事はできなかった。

 できる事なら一緒に連れてきてあげたかったけど、こればかりは仕方ない。


 ともかく、そんなこんなで世界中の孤児を集めた私の孤児院は、様々な種族の子供達が共存する孤児院として有名になっていった。


 別に有名になりたくてこんな事をしたわけじゃないけど、これを機に世界中から孤児がいなくなればいいと思う。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「せっせっせ!」

「「「せっせっせ!」」」


 100人分の料理を大きな釜で煮込む。

 大きい子達の中には料理を手伝ってくれる子もいる。

 

「いつもありがとね」

「何言ってんだよシャルママ、感謝したいのはこっちだって」

「そうだよ、私達を連れてきてくれてありがとう!」

「ん、ママにはみんな感謝してる」

「そう言ってもらえると救われるわ。あとシャルママはやめてって……」


 こう呼ばれるのはどうにも慣れないわね。


 ちなみに、この大釜はパープリンの倉庫から借りてきた。

 孤児院が大きくなるに連れてパープリンからの援助も増えて、今では私が世界の各地に飛んでる間には、ボランティアの人が孤児のためにご飯を作ってくれてたりするらしい。


 私がパープリンに孤児院を建てたのは、パープリンの魔族はおおらかで、自然豊かな街だから。

 そんな街に来たばかりの私は、紗綾の元で学んだ耕作を子供や街の人に教えた。

 魔族的特徴の無い私をよく信頼してくれたと思うわ。 

 今まで魔界に農業は存在しなかったけど、パープリンでは良質な土や豊かな自然が広がっていて、農業をするにはもってこいの場所だったからね。

 やらないのは勿体無いわ。


 勿論、農業は孤児達にも教えている。

 私があまりここにいられない以上、自給自足をしてもらう必要があったからね。


「さて、出来たわね」


 色々考えているうちにご飯が出来た。

 私は子供達を呼び回る。


「ご飯っ! 出来たわよー!」

「出来ましたー!」

「「したー!」」


 手伝ってくれていた三人も同じように呼び回ってくれる。

 あぁ可愛いなぁもう!!




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「いただきます!」

「「「「「いただきます!」」」」」


 そうして朝食を食べようとしたその瞬間── 


 正面扉からノックの音が聞こえた。

 正面扉は食堂に近くにある為、ノックの音は普通に聞こえる。


「ちょっと出てくるから、みんなは先に食べててねー!」

「「「「「はーい!」」」」」


 実はこういった来客は少なくない。

 大体はこの孤児院を買い取りたいとか、シャルさんの話を聞きたいとかだけど、親切にしてくれているパープリンの人の可能性もある。


「はーい、なんのよ……う…………」

「ハァ……ハァ……!」


 けど──今回の来客は完全に予想の斜め上。


「母さま……!?」

「あぁ……シャル、シャル!!!」


 来客は母さま──マイル・アストリア、その人だった。


「シャルうぅぅぅぅ!!!」

「わっとと」


 そのまま突っ込んできた母さまを、私はしっかりと抱きとめた。


シャルママって何なのよ……


とにかく、最後まで読んでくれてありがとね!

所でブックマーク忘れてない? ブックマークの数だけ孤児院の子達に支援金が付与されるから、是非お願いね!(シャルママ)

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