11話 私、隠し子で暗殺者だけど機械いじりも得意です。
2/3 本日はもう一本投稿します
──天霧家長女 天霧咲。
彼女は天霧邸の隠し部屋、地下のモニタールームにその身を隠していた。
古来から続く戦の名家である天霧は、その独自の技術を受け継ぎ、進化させてきた。
先代天霧家当主──天霧蓮もその例に漏れず、自身の子である夜と咲に技術を伝えた。
蓮は子育てに従事しつつ、二人の行動の節に垣間見える才能を見逃しまいと、観察を続けてきた。
才能の片鱗は、注意深く見ていれば日常生活からも見て取る事が出来る。
蓮曰く、夜の持つ才能は頭の回転の速さと丈夫な身体、そして何にでも怯まない胆力だと言う。
運動能力と反射神経が異常なまでに高いのは目に見えてわかるし、遊び一つ一つにまで第三者視点で自分見る事が出来ている。
そんな夜に蓮が最初に教えたのは、戦闘の技術だ。
【戦闘】の技術を引き継いだ夜は10歳にして、魔法という圧倒的なアドバンテージがある他種族を相手取ることが出来る。
その上剣だけでなく、槍、弓等、彼の使える武器は多岐に渡る。
どれも一流とまではいかないが、相手によって得物を変え、常に自身に有利な環境で立ち回れる事を考えると、どれも十分と言っていい技量になる。
──では、咲は何の才能に秀でて、何の技術を受け継いだのか。
蓮曰く、咲の持つ才能は切り替えの速さと、圧倒的な応用力だと言う。
咲は既存の物を、より有用なものに変化させる能力がずば抜けて高い。
咲にとって、模倣は当たり前。
寧ろ進化させて当然だ。
そんな咲に蓮が最初に教えたのは、【機械制御】と【暗殺】の技術だ。
──何故【暗殺】なのか。
それは、彼女の切り替えの速さにある。
心の迷いは人を弱くする。
必要な殺生かを考え込み、悩んでる最中にに対象を逃す。
要は心がまともでは暗殺は出来ないのだ。
その点、咲の心はある種まともではない。
本来ならば9歳で人を殺してまともでいられるはずがない。
──が、咲は『これも必要な事』と即座に割り切れる。
だからこそ、蓮は咲に【暗殺】の技術を継承させた。
だが、咲はこの技を使って暗殺した事は殆ど無い。
いくら割り切れると言っても本人の心根が優すぎるが為に、自分から殺すような事はない。
あくまで必要に迫られた時にのみ使っている。
ちなみに歌も暗殺技術習得の一貫で練習した事だったが、その過程で普通に歌う事が好きになってしまったらしい。
【機械制御】は咲の異常な応用力があってこその技術だ。
暗殺するなら事前の情報は何よりも大事。
それだけでなく、天霧邸に複数存在する警備用の機械は、全て彼女が修復、開発している。
天霧家の表の顔が夜ならば、天霧家の裏の顔は咲。
二人は互いを信頼し、咲が得た情報を夜の冷静な判断力を持って交渉材料に使い、天霧側に有利になるような交渉をする。
先代天霧家当主の蓮が死んで二人だけが残されたが、天霧兄妹は与えられた技術を使い、天霧の名に恥じない働きをしていた。
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AnotherView:Saki Amagiri
立体軌道小型カメラ──通称【立体眼】
リアルタイムで映像を映す、空を飛ぶ小さいカメラって言えば分かりやすいかな?
このカメラは三年前に私が作って、その後も改良し続けてたもの。
その改良のかいあって、今では透視機能が付いた超高性能カメラ(これも私が作った(●´ω`●))を立体眼のメインカメラにしているから、ある程度の厚さの壁なら何もないように見れる。
ただ、誰かが来ている服はいくら頑張っても透視出来なかった。
……なんで?
まあともかく、立体眼はどこにでも移動できる目が三つあるみたいなもの。
すごく使いやすくて、いつも情報収集の際に活躍してくれる。
ただ、立体眼の映像は、このモニタールームでしか見れない。
超高性能カメラを3機も同時に使うと処理が重くて……
この辺りもがんばって改良しないと。
ふふん、わたしはすごいんだぞ!
とにかく、おにいちゃんが倒される瞬間を確認した私は、立体眼使ってジルさんを追跡していた。
ちなみに、今は壁越しの透視で追跡中。
集眼を使ったおにいちゃんを軽々倒すような人だし、ちょっと離れてるくらいじゃ気付きかねないからね。
「盗聴器をしかけてる……」
これを見て、わたしはジルさんが何を考えてるかを理解した。
おにいちゃんの予想通りだとすれば、おにいちゃんが連れて行かれる可能性はなさそう。
それに、今この部屋を出ていったらジルさんに見つかるかもしれない。
もう少しジルさんを遠くから観察してみよう。
これも全部おにいちゃんの指示だけど、それでもおにいちゃんを放置しておくのはあんまり良い気分じゃない。
おにいちゃん、ごめんね……?
全部終わったら冷蔵庫のプリンあげるから。
私も神殿から出てきたけど、存在が確認されてない事は確認済み。
それに、世間では天霧の血を継ぐ者ははおにいちゃんだけってことになってるし、多分大丈夫。
だけど──あの時駄々をこねておにいちゃんについていったのは間違いだった。
私は天霧の暗殺者。
平和ボケした人間界の事だし、一般人でおにいちゃんの顔を知っている人は少ないだろうけど、それでも皆無じゃないはず。
そんな中でおにいちゃんにベタベタ触れるのはまずかった。
普段は私もおにいちゃんも家から出ないし、霊装の事で興奮してうっかりしてた。
もっとしっかりしないと……
そんな事を考えていた時──
「えっ!?」
盗聴器をしかけていたジルさんが、壁越し立体眼の方を向く。
「気付かれたの!?」
幸い、ジルさんは首をかしげて部屋から出ていった。
気付かれて無いっぽいね。
危なかった、壁越しじゃなかったら間違いなく見つかってたよ。
その後、ジルさんがこの家の敷地から出たのを確認して、機械達に盗聴器の回収を指示する。
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「オモチシマシター」
「ありがとう! ……よし」
機械《子供》達が回収した盗聴器を解析してみる。
というか盗聴器ちっさ!
これはリアルタイムで仕掛ける所を見てなかったら気付かないよ……
「カイセキ、終了シマシタ」
「えとえと……?」
解析の結果──この盗聴器は15分毎に音声データを送るタイプらしい。
って事は……
「やばいやばい!」
慌ててこの盗聴器に残った音声を消し、無音の音声データを代わりに入れておく。
私が盗聴器を見つけて、解析していた事までバレちゃうからね。
とはいえ、この盗聴器を壊したら音声データが送られてこない事に不信感を持ったジルさんが来るかもしれないし、壊すのは良くないよね。
とりあえず、まとめて部屋の隅にでも置いて蓋をしておこう。
さて、急いでやることは終わったし、早くおにいちゃんの様子を見に行かないと!
Saki'sview end
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壊れた天井を見上げ、俺が地面に倒れている理由を思い出す。
ジルに向かって剣を振って、そしたら背中に衝撃が走って……
──そこからの記憶は無い。
俺は痛む身体を起こして、周囲の状況を確認する。
入り口の扉と天井が3割程無くなっているが、それ以外は変わってない。
そして──
「ジルは俺を連れて行かなかったな。って事は、咲が上手くやってくれたっぽい」
その理由は簡単。
魔族がいたという物的証拠が無い状態で、名家天霧の当主である俺を連れ去れば、色々と面倒くさい事になるからだ。
大方、ジルは盗聴器か何かを仕掛けて帰ったとかだろうな。
証拠があればまた別だが、そうなった場合は立体眼でジルを追跡し、俺が連れて行かれた場所を割り出す様に咲に話してある。
場所さえ割り出せれば、たとえジルが相手だとしても俺を連れ出せる秘策が天霧にはある。
とはいえ、策と情報で相手の一歩先を取れたからいいものの、今回はこの襲撃をそもそも起こさせない事だって出来たはずだ。
それに、俺はジルに一糸報いるどころか、触れる事すら出来なかった。
反省点は色々ある。
事が終わったら、また訓練に勤しむことにしよう。
「おにいちゃん!」
奥から咲が顔を出す。
咲からジルに盗聴器を仕掛けられ、それを無事に処理した事を聞き、すべて想定内で事態が終わった事に安堵する。
さて、まずは──
「とりあえず、家直そうか」
「……そうだね」
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AnotherView:Shall Astoria
天霧の家から空を飛び続けて数分、私は近くの(と言っても10キロは離れている)山に降り立った。
元は観光地だったのか、不思議な形の鉄の塊や人工物がたくさんあるし、この山の入り口は柵で覆われていて、あらゆる所から草も生えてる。
全く整備されていない。
当然人もいない。
「ふぅ……」
空は藍色に染まり、日は沈みつつあるわ。
出来ればもう少し離れたかったけど、あまり遠くに行くと魔界への帰路が分からなくなりそうで怖い。
地に足をついて、翼を縮小させる。
さっき確認したけど、今の私は角も尻尾も無い。
翼さえしまってしまえば普通の人間にしか見えない。
このまま魔界に帰ったら、他の魔族に襲われるかもしれない。
──どうして良いのか分からない。
いっそ彼の家に……いや、折角逃してくれたんだ。
甘えてはダメ。
両頬をバチンと叩いて、情けない自分に喝を入れる。
角と尻尾を失っても、魔族の誇りは失くしてない。
「でも、今は……」
山の頂上のベンチに座って街を見下ろす。
綺麗な夜景だった。
藍に染まった世界が、街の光にふんわりと照らされている。
私の中で、緊張の糸が切れた。
「ぅ、うぅああああ……!」
涙が溢れて止まらない。
味方に裏切られて、角と尻尾を失くして、魔界に帰れなくなって、この白い翼を貰って。
今日は色んな事があった。
誰もいない今くらい、弱い自分を解放してもいいわよね?
山の頂上で、私は暫く泣き続けた。
1章はこれで完結だよ!
次回は6年後、終戦して数年経った後からスタートになるから気を付けてね!
所でブックマーク忘れてない? してくれると歌のモチベーション上がるから、是非お願いします!(咲)





