PROLOGUE 星結の惨劇
はじめまして。
作者にとって、初投稿、初めての小説になります。
夢をめぐる少年たちの物語。
その始まりを、どうぞお楽しみください。
紅く染まったまどろみの空に、入相の鐘が谺する。
夜の帷が降りる時、刹那に生まれる、逢魔の世界。
逢魔の背戸に閂を差し、世界の五感を泥に浸す。
新月照らす常闇の世界。
夢は妖となりて、這い出ずる。
――ドン。
腹の底を震わせる、太鼓の音。
闇の中に、鬼がいた。
赤い面。
吊り上がった眼。
裂けた口。
額から伸びる、二本の角。
――ドン。
二つ目の太鼓が、夜を打つ。
刹那――
松明に、一斉に火が灯る。
笛が鳴る。
鉦が鳴る。
太鼓が轟く。
鬼が舞う。
今宵は、星結の日。
十歳を迎えた子供たちが、
己の夢を見つけ、
星へと結ぶ夜。
最初のひとりが、
神前へ進む。
少年の名は、ケータ。
授かった夢を胸に、
顔を上げる。
「僕は、この神社を継ぎます」
舞台で舞う鬼を見る。
「それから――」
少年は笑った。
「父さんを超える、鬼になります!」
――ドンッ。
腹の底を震わせる音。
白い光が、
境内を呑み込んだ。
鬼も。
舞台も。
社も。
夜も。
すべてが、
白く染まる。
次の瞬間、
炎が上がる。
神楽舞台を、
炎が包む。
鬼が舞う。
その傍らを、
黒い獣が駆ける。
一匹。
二匹。
また一匹。
鬼と獣が、
入り乱れて舞う。
――ズン。
大地が震えた。
大きな影が、
境内を覆う。
鳥居よりも高く。
社よりも大きな獣が、
鬼たちを見下ろしていた。
炎が上がる。
鬼が舞う。
獣が吼える。
炎が舞う。
神楽舞台が燃える。
社が燃える。
誰かが叫ぶ。
笛は、
もう聞こえない。
鉦も。
太鼓も。
聞こえるのは――
獣の咆哮と、
人々の悲鳴。
夢は妖となりて、
現へ這い出した。
その夜。
少年は、
偉大なる父の背中と、
慈愛に満ちた母の微笑みを失った。
遺されたのは、
わずか十歳の少年。
夢と現の狭間。
彼は誰時に、
晨朝の鐘が谺する。
帷は、
再び開かれる。
少年は友と出会い、
友と夢を追い、
幾多の夢と、
巡り逢う。
その果てに――
少年は、
何を願うのだろうか。
これは、
星宮ケータという少年の、
夢物語である。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
次話、本編スタートとなります。
星結の惨劇へと至る一週間前から物語が始まります。
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