第13話 あの子を守りたかった
電話が鳴ったのは、夕方だった。
「……少し、話せるかしら」
義母の声は、妙に弱かった。
翌日。
義母は菓子折りを持って来た。
いつもより小さく見えた。
「上がってください」
私が言うと、少し驚いた顔をする。
リビングに座り、沈黙。
「……結果、聞いたわ」
夫は黙って頷く。
「あなたの子なのよね」
「うん」
義母は、深く息を吐いた。
「ごめんなさい」
まっすぐ、私を見る。
「私、あなたを疑ってた」
言葉が、静かに落ちる。
「うちの子は不妊だって聞いたとき、正直、絶望したの」
夫が目を伏せる。
「この子は、父親になれないのかって」
震える声。
「だから……あなたが妊娠したって聞いたとき」
一瞬、言葉が詰まる。
「怖かった」
私は黙って聞く。
「裏切られたら、この子は立ち直れないって思った」
義母は、夫を見る。
「あなたは昔から、強そうで弱い子だったから」
夫が苦く笑う。
「守りたかっただけなの」
私に視線を戻す。
「でも、守る方法を間違えた」
深く頭を下げた。
「あなたを傷つけたわ」
私は少しだけ考えてから言う。
「信じてもらえなかったのは、悲しかったです」
義母の肩が震える。
「でも」
私は続ける。
「お母さんが息子さんを大事に思ってるのは、伝わってました」
夫がこちらを見る。
「だから、私も守ります」
お腹に手を置く。
「この子と一緒に」
長い沈黙。
義母の目に涙が浮かぶ。
「……ありがとう」
小さな声。
「私も、祖母になっていいのかしら」
夫が、ゆっくり笑う。
「もうなってるよ」
義母は、初めて安心したように泣いた。
不妊という言葉に縛られ、
嘘に振り回されたのは
義母も同じ。
でも一度裏切られた傷は
一生消えない。
私は許さない。
(続く)




