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黄金週間とチェルノブイリ

輪太郎は家族旅行にいったりクラブ活動が始まったりしますが、その合間にチェルノブイリ原発事故が発生します。大変です。


オリエンテーションも終わり、普通授業が開始されると、わずか2週でゴールデンウィークである。


とはいえ、ゴールデンウィークといっても、この時代の5月の国民の祝日は飛び飛びである。

4月29日の天皇誕生日、5月3日の憲法記念日、5月5日の子供の日と休みは3日しかなく、これに週末がからんでやっと連休になるだけだ。

1986年でいうと29日火曜に休んだあと、3日空いてさらに3日から5日までの土日月が3連休という飛び石連休具合である。

まあ、通常は土曜日が休みじゃないので3連休でも珍しい事態なのだが。


で、なんでゴールデンウィークの話をしているかというと、連休最初の29日に遊園地へと連れ出されたからである。

一人で残るのも考えたのだが、さすがに親父がいい顔をしなかった。

妹たち2人の希望には勝てず、ついていく羽目になり、おかげで行列でひどい思いをした。


さすがは荒尾のグリーンランド、素晴らしい集客力である。

いや、ついつい三井をつけてしまいそうになるが、この時期は三井鉱山に買われる前なのでまだ普通にグリーンランドだ。

グリーンランドは三井鉱山土地建物から独立し(この時代はグリーンランド) その後、三井鉱山が買い取り三井グリーンランドへ、さらにそのあと平成になって西部ガスへ売却され、またもグリーンランドに戻るという変遷を経ている。

前世を生きてた俺にとっては三井鉱山運営のの時代が長いので三井と前に付けたくなるのは当たり前のことだ。

しかしどの時代も集客力はそれなりに確かで、平成前半に景気の悪化で西部ガスに身売りこそしたものの、現代でも普通に年間300万人を集めうる実力はさすがというべきだろう。


とはいえ、そんなグリーンランドも昭和の時代は令和に比べると設備面では質素なもので、集客力の高いものは少な目だ。

え、それで集客力があるのかって?

同時代に他の集客施設がどれだけショボかったか上げてみようか? いや、むなしくなるからやらんけど。


そんな時代でもローラーコースターのハリケーン、宙返りコースターのアトミックコースターなど絶叫物がそこそこあり、アトラクション類もクリスタルハウスやスモールジャワなど地味目とはいえ、数があるのはさすがである。

昔からのティーカップやゴーカート、子供用コースターやトランポリンで十分楽しめるうちの家族にとっては、問題ない観光施設なのだった。


早朝からの移動でテンションが上がっていた妹たちは一通りアトラクションを回った後、気に入ったらしいトランポリンに張り付いてひたすら何度も飛びまくって午前中を終えた。

その後、家から持ってきた母の手作り弁当を木陰で平らげ、あとはだいたい満足したらしく、午後はお休みモード。

帰りの車の中では疲れ果てて寝てしまった。

まあ、妹たちがまだ年齢的に絶叫系に乗りたがる年じゃなかったから助かったが、俺まで乗らなきゃいけないようなら40年ぶりの絶叫マシンのはずだったのでそれが無くて本当に良かった。

妹たちにとっても楽しい1日になったことだと思う。



実はこのまま「5月に入ると」と続けたいところだが、そうはいかない情報が4月30日の新聞を通じて発表される。


チェルノブイリ原発事故の発生である。

事故自体は4月の26日には発生していたようだが、西側諸国に発表されたのが29日未明、日本でそれが報道されたのが4月30日だった。

たしかこの時は放射性物質が風に乗って、日本まで到達するんだったよな。

大気中のセシウム比較で福島原発の10倍の規模の流出が起きてるはずなので、やってきたとしてもさもありなんということになるが。


よりによって、こんな俺がテストで切羽詰まってるときに起きなくてもよかろうもんを。


まあ、とはいえ、日本まで到達できる放射性物質量の量はさして多くないはずだ、

なぜって、漏洩した放射性物質の主なものの質量数の問題だ。

重い物質は距離とともにどんどん地上へ落ちていく。

そのため、地球の反対側まで届く量など知れている。

しかも、放出量の大多数を占めるキセノンやヨウ素は半減期がとても短い。

1か月ほど注意して見ておけば日常生活の範囲ではほぼ汚染を気にしなくていいレベルに落ちつくのではないだろうか。

ヨウ素などを吸収しやすい海藻類などについては注意が必要かもしれないが、それも2年ほど摂取量を減らせばいいように思う。


とはいえ、現在はまだ事件も発生したばかりだし、集まってる情報も不十分だ。

こりゃしばらくは日本も混乱するかもしれないなあ。



日は明けて5月に入った。

今日は5月1日。

本日6時間目は第1回目のクラブ活動の日だ。


事前に指定された視聴覚室に向かうと、中には歴史の新島先生のほかに5人ほどの制服姿の男性陣の姿が見える。

新島先生はまだ今年で4年目の若手教師で、この中学校が最初の勤務先だったはず。

ソフトな天然パーマで眼鏡に団子っ鼻の人の好い顔立ち。細身の体形でチノパンに半袖開襟シャツ。

そのくせどこかちょっと疲れた感じのするビジュアル。

なんだかご同類というか、ブラック勤務従事者特有の感じがする先生である。


ほかの連中も大体俺と同じ陰キャの香りのする奴らで、背が高いのが居たり、低いのが居たりはするが、全員細身のやせぎすばかり。

俺ともう1人以外は全員眼鏡かけてるのがそれっぽ過ぎて笑えるくらいだ。


指導者は新島先生になるのかな?

俺も含めると生徒は6人か。

パソコン1台に6人は微妙な数だ。

触れる時間はかなり限られそう。


新島先生は俺に席に着くように指示を出すと、説明を開始した。


「今日は僕も含めて全員の自己紹介と、勉強に使う機材に関する説明をする。

まずは名前とクラス、パソコンの使用歴があればそれも併せて自己紹介を頼む。

ああ、あと、このクラブは今年からなので、2年生より上のクラブ員はいない。全員1年生なのでよろしく。

では、名前を呼ぶから順に頼むな。」


順に名前を呼ばれ、自己紹介をしていくが、3人はコンピュータについて全くの素人、1人は富士通のパソコン……FM77AV-1を持っており、残りの1人はMSXユーザだった。

つまり、タッチタイプは出来て3人……もしかしたら俺以外全員ダメの可能性もあるかも。


何しろ、この時代のパソコンはキーボードのレイアウトも割とばらばらだ。

8Bitパソコンの多くはホビーパソコン扱いなので、そもそもほとんどテンキーが無いし、カーソルキーなんて、位置も配置もめちゃくちゃで、並びもひし形だったり横一列だったり。

MSXの一部機種などカーソルキーの高さが高さがキーボードのASDの列の横くらいにあったりする。


そのほか、入力方式でかな入力かローマ字入力かという問題もある。

俺の場合、最初かな入力で覚え、途中でローマ字入力に切り替え、その後、日本語キーボードから英語キーボードに切り替え、と遷移したため、だいたいのキーボードには手癖で対応できるのだが、普通の子供はそうじゃないからな。

ちなみに、かな入力の時期には親指シフト入力なんて代物も使っていたので、ホントにゲテモノ指と言っていい。


ああ、言っておくが、かなでの日本語入力に関する限り、入力速度は親指シフトが最速だ。

異論は認めるが、少なくとも俺は今もそう確信している。

問題は、現代ではどうやってもキーボードが手に入らないことだ。

うん、そう、ただそれだけだ。



まあ、物悲しくなる余談はいい。


先生によると、使うパソコンはやはり視聴覚室に置いてあるPC-9801だそうだ。

機種名はPC-9801 VM2。

まあ、定番ですね。俺が欲しいのと同じやつ。


今年の4月から導入された機種で、バリバリの最新型との説明があった。

まあ、10月になってVX登場する前だから、確かにまだ最新型といえば最新型ですね。

FM音源が搭載されてたUVとかの存在を無視するのであれば、だけど。


まあ、U系列は98の系譜なのにホビーパソコン扱いの機種だから、除外されるのは仕方ないのかもしれないけど。



先生によると授業の中では一太郎を使った文章作成を取り扱い、全員が書類作成できるようになるのを目指すらしい。

自分の入力したデータは各自のフロッピーに保存して残すので、次回までにフロッピーを調達しておくようにとのこと。

確認したらプリンタは職員室に1台しかないそうだ。

つまり、作成したデータを印刷するのは新島先生が代表して職員室で行うという事か。


一応、全員が時間内に文書作成を終えることが出来るようなら、BASIC等を試しても良いとのことだったが、この分だと当面難しかろうなあ。

見るからに初見の3人はスピードが足りなさそうだし、他のメンバーもどうかわからん。

しばらくは無理と思っていた方がよさそう。


いっそ、キーボード練習用にBASICでタイピングゲームでも作って、それを先生に売り込もうかしらん。


まあ、そのためには、このパソコンを自由に使える時間が無いといけないという、ジレンマがあるんだが。

自宅で組めるようになると話は早いんだが、まだしばらくはなあ……。


とりあえずは、中間試験を待つばかり、と言うやつか。


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[一言] …ひのくにランドでは駄目なんですか…
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