時、巻き戻った後2
逆行転生ではお約束の成り上がり方法について考えてみますが、やっぱり氷河期の壁は厚いようで・・・。
氷河期をうまく回避して、体を壊さない範囲で勝ち組を目指す。
とりあえず今目指す目標はこんなもんか。
それじゃ、勝つにあたって、どう勝負するのがいいのだろうか?
逆行転生ものの成り上がりでお約束なのは競馬だが、残念ながらこれは難しい。
まずもって熊本には地方競馬しか存在しない。
この競馬場、荒尾競馬というのだが、県央から遠く離れた北の端にある。
場所的にはむしろ福岡県のほうが近い位置だ。
つまり、俺が住んでいる場所から行こうとすると電車か車が必要になる。
電車の場合でも片道約1時間かかるし、車となると1時間半が必要になる。
子供だけで移動するには遠すぎるし、小遣い握りしめて通うにしても、数か月分が電車代だけで消えてしまう。
しかも、当然のことだが、馬券の購入に年齢制限がある。
買えるようになるのは成人後になるし、そのころにはバブル崩壊後だ。
知識が無いのであまり詳しくは語れないが、地方競馬の常として、バブル後の景気はあまりよくなかったように思う。
記憶が正しければ、荒尾競馬も確か平成の10年代には閉鎖されてしまっていたはず。
そのうえ、俺の記憶に勝ち馬の情報は少ない。
残念なことに俺は前世で馬娘をプレイしたことが無かった。
もちろん、ネットでネタになってた馬くらいは知ってる。
しかし、追っていなかった以上、知識もさほど多くない。
知ってるのはサブちゃんの馬ことキタサンブラックや超有名馬のディープインパクトくらいか。
しかし、あの2頭は両方とも平成の馬だし、荒尾競馬にも何の関係もない。
昭和の馬?そんなの知っているわけがない。
中央競馬に関してすらこのありさまでは地方競馬で荒稼ぎなど夢のまた夢だ。
うん、無理だろう。
やっぱり競馬での成り上がりはありえないな。
では、株式投資はどうか?
逆行転生ものの成り上がりの定番として次に使われるのが株式投資だ。
しかし競馬よりましとは言え、これもハードルが高いのは変わらない。
確かに、未来から来た俺は、当然、確実に勝てる銘柄を知っている。
特に、これから大きく値上がりする株式の多くがIT関連株である事もあり、上がる会社と上がる時期については結構はっきりした記憶が残っている。
なら上手く行きそう、と思うかもしれないが、さにあらず。
問題は、その投資が可能かどうか、
つまり、必要なタイミングまでに資金と環境が準備できるかどうかにある。
要するに、資金の調達と、年齢の問題だ。
証券取引を行いたい場合、まずいずれかの証券会社に対し、証券取引用の窓口口座、いわゆる証券口座を開設する必要がある。この証券口座は購入した株式などを預けておくための窓口になるので、証券取引を行いたければ絶対に開設しておかなくてはならない。
しかし、残念ながら証券口座の開設には年齢制限がある。
開設時、契約者が民法上の成人でないとならない。つまり満20歳まで証券口座が開設できない。
もちろん、すでに取引をしている家族や十分な額の投資資金があれば別だ。
すでに人間関係がある場合、法での規制があるわけでもないので、こっそり取引できる場合もある。
しかし、我が家にはそんな資金もコネもない。
当然、まっとうな手段では無理ということになる。
ガーンである。
一応、2000年代初頭くらいになると、一部の証券会社では親の同意のうえでなら窓口口座を開設できるようになる。そうなれば、未成年取引も不可能ではなくなるのだが、残念ながらそのころには俺は成人済みだ。
俺が未成年取引を行えないことには変わりがないのだった。
つまり勝負するには、俺が成人を迎える1993年10月以降でなければならない。
しかし、ここで時代が待ったをかける。
バブル崩壊の開始が1991年3月で終了が1993年10月なのである。
なんというか、こう、この絶望感が伝わるだろうか?
絶対、神は俺を苦しめようとして過去に引き戻しただろ。
そういうわけで、株式収益で氷河期を回避したいなら、実質的に最初で最後の暴騰ポイントが1995年のネットスケープ社株である。
成人後、大学生の間に短期間で暴騰するという条件だと唯一のチャンスと言っていい。
とは言え、時期的に可能なだけで、実際に行えるかは別の問題だ。
ネットスケープ社は海外株、それもNASDAQ株になるから、資金があっても確実に購入できるとは限らない。
まずもって、アメリカに法的に問題ない預金口座と投資用の窓口口座を開く必要があるし、資金移動の際には為替レートについても考慮して動く必要がある。
NASDAQの仕組み上、オンライン取引と言いながらマーケットメーカーである証券会社を介しての取引が必要になるので、投資会社への人脈も必要になるだろう。
また、収入があるという事は納税も必要になる。
日本在住の俺がアメリカでの株取引で成功した場合、どのように納税すればいいか、また、アメリカと日本での納税が重複することはないのかとか、そういう事も調べる必要がある。
せっかく儲けたのに、そこから税金を2重どりされるのでは利益がドカンと減るのは間違いない。
問題は、こうしたことをどのように解決すればいいか、それすらわからないことだ。
金さえあればプロに任せて解決できる事なんだろうが、現時点ではまずもってその金がない。
正直、うちは資産家ではない。
現実的には3人分の教育費用だけでカツカツのはずである。
つまり、投資資金を家計から引き出すだけの余裕はない。
という事は、株式投資に手を出すにしろ、必要な金をどこからか持ってくる必要がある。
今年が1985年だから、ネットスケープ株に投資する1995年まであと10年。
せめて国内で完結できるようになるインターネットバブル期(1999年)まで待ってから勝負がかけられれば倍率が上がる分、もう少しハードルも下がるのだが・・・。
残念ながら氷河期を回避するためとなると、タイミング的にはネットスケープ株でもギリギリだ。
なにしろ、暴騰期がちょうど大学4年生の就職活動の時期にあたる。
どうあがいても就職活動には手を付けざるを得ない。
高騰の最終局面となると普通に企業からの内定が出終わっているタイミングである。
地獄の就職氷河期に逃がさないぞと言われている気分。
成功しても、タイミング的にはギリギリのギリもいいところ。
何とか株式で収益が出せればよし。
不十分な額にしかならなければ、得られた金でできることは多くない。
いいとこブラック企業からの逃走資金にできる位が関の山だろう。
もちろん、そういう場合でも、大学院へとハンドルを切って、助教授期間を投資資金で乗り切るとか、そういう方向ならそれはそれでありなのだろうが・・・。
いずれにせよ、今やるべきことは明確だ。
金を稼ぐこと。
それも、現在小学6年生の俺が、22歳になるまでに。
必要な金額も明確だ。
投資して数年は食えるだけのリターンが得れるだけ。