捜索の方向
結局孫達は蘇順の厳罰を望まなかった。
それはひとえに白が、「蘇順が自分を逃がしてくれた」と言ったからだ。白を害そうとした行為を蘇順が反省したと考えた孫達は、「どちらにせよ、蘇順を見つけることが先決ですが」と渋い表情になった。
白たちが団徳に戻ってからすでに五日経つ。未だにあの二人は捜索の網にかからない。
「こうなると、ただ辺境を闇雲に探しても手掛かりは見つかるまい」碧天も盛容の一人の前では渋い顔になった。
雪を避けるための地形や、冬でも牛や人が通れる道筋、地形を重点的に、廃村から放射状に捜索範囲を広げさせていた。そろそろ北側は霊山の人間が踏み込める限界線に達するところまで捜索を終えている。「あの廃村で見聞した物資から、本格的に雪山を攻略する装備があったとは考えにくい。北の捜査は打ち切る。他の三方向の捜索も、集落に限って行え。どこかに籠っていても、補給などで集落に立ち寄る可能性がある。それから、張の素性を洗え。石虎、衛、あともう一人男がいたな。現在の所在と、素性、なんでもいい。情報を集めろ」
「承った」と応じつつ、盛容は息を吐く。「…そうだな。交代で休みを取らせろ。どちらにせよ、長期戦になるだろうし」
「任務が多すぎる。そもそも「黒の院」の探索が第一目的ではなかったのか」盛容は足音を荒げて長椅子に歩み寄り、体を投げ出すようにして座り込んだ。もう従者の振る舞いはお仕舞いらしい。ことあるごとに「自分は天の護衛だから」という割には、すぐ元の先輩面に戻るのはどういうわけか。それなら家臣ぶらなければいいのに、と碧天は内心でにやつくが、表面上はしれっと答える。「最優先というわけではないな。ただ確実にあるとわかっていたからな。まあ、こんなに早く見つかるとは予想外だったけど」
白が意識を取り戻してから、伯父がやってきたのを皮切りに、伯母や、村のお節介な数人の小母さんたちが三々五々訪れた。
伯母はちょっとこわばった顔で、玄を解体したことを告げた。私がいなくなって大騒ぎになり、傷ついた玄を見つけ、伯母たちは玄を私の小屋に入れた。玄は一晩生きていたが、夜明けに様子を見ると冷たくなっていたそうだ。小間物屋の小母さんは、「春まで凍らせておくこともできたんだけどね。雪が本格的になる前に、解体したほうがいいって、あんたの伯母さんが決めたんよ。姿そのままで残ったほうが、辛いんじゃないかってね」
玄が残っていたほうが辛かったかどうかはわからない。ただ、伯母が本当にそう考えて実行したのは『匂い』でわかった。解体作業は力が要る上に、水を大量に必要とする。本格的に川が凍り付くとできなくなる。冬になったばかりなので、まだ凍り付くところまではいかないだろうが、相当冷たかったはずだ。毛を毟るところまではできず、毛皮の状態で小屋で乾かしているらしい。肉は部位ごとに切り分け、手伝ってくれた人たちに分けた後、食糧庫で保管しているそうだ。伯母は解体したことを告げただけで、詳しくあれこれしゃべったのは件の小母さんだった。




