二日間のあらまし
明けましておめでとうございます。
今年もお付き合いいただければ、うれしいです。
蘇順の経緯を聞き、孫達は言葉を発することができなかった。蘇順のことはもちろん知っていた。それほど親しくはない。だた、自分の子供である孫維と年が近いため、名前も顔も知っていたし、それなりに気にはかけていた。こんな小さな村では、誰もが顔見知りだし、村内で集まって作業をしたりすることは当たり前だ。当然子供たちは友人になり、時には恋人、家族になる。村の子供たちはいずれ身内になるかもしれない人間なのだ。
孫達が知る蘇順はしっかり者で、気が強く、割合に早い時点で女性らしい振る舞いをする子供だった。孫維はどちらかと言うとおっとりしていて、村長として男になることを考えると蘇順との縁組の可能性もあった。その父親はあまり気に入らなかったが、排除するほどではなかったので、孫維が希望すれば孫達は反対しなかっただろう。
白は村の子供とはあまり接触を持っていなかった。平蘭のように少し年上で面倒見の良い穏やかな気性の人間とは話すこともあったようだったが、基本誰とも話したがらない。蘇順とも付き合いはなさそうだと思っていたが、そんな熾烈なやり取りがあったとは知らなかった。
孫達の知る蘇順は誰かを害するような人間ではない。それが自分の身内である白を刺したと言うのだ。信じられなかったが、碧天たちが嘘をつく理由が思いつかない。今は眠っているという白が、意識を取り戻せばばれてしまうような嘘をついても仕方がないではないか。
二人の間に割り込んでいた石虎とも顔見知りだった。ちょっと軽薄そうだったが、仕事はきちんとこなしていたし、愛想は良かった。何度も伝言や荷物を頼み、近辺の情報を教えてもらった。それ以上のことは知らなかったし、特に必要があるとも思っていなかった。愛想がいいので、村の誰彼とも接触があるだろうとは予想していたが、まさか二股をかけたり騙して拉致したりするような行動を起こしていたとは全く考えていなかった。
辺境は小さな集落ばかりで、大金を持っているような者はいない。協力しないと日々の生活自体が回らないので、それほど大きく貧富の差がつかない。だから物取りや詐欺など金品を狙った犯罪は少ない。村の人間はみな顔見知りなので、外部の人間には敏感だし、土地勘がないと村から逃れることも難しいので、誰かを攫って売り飛ばすという事件もあまり聞かない。都会のほうが人は多いし、隠れやすいし逃れやすい。わざわざ辺境に誘拐しに来る意味がないのだ。
碧天は、石虎たちが拠点にしていた廃村のことも説明し、そこで出会った阿珠のことも伝えた。しかし、それらについてはまだわかっていないことも多い。それに孫達にとってはいわば管轄外だ。廃村については郡の役人や官警に連絡すれば孫達の仕事は終わる。阿珠は怪我人だし、素性が判明していないのでしばらく保護する必要はあるだろうが、せいぜい春までのことだろう。
碧天が淡々とこの二日間の出来事を説明している間、盛容は碧天の斜め後ろで、沈黙していた。初めはどうして座らないのだろうと思っていたが、二人がこの部屋に入ってきたときに、扉を閉めたのは盛容だったことを思い出した。その時も違和感があったが、理由がわかった。この隊商の責任者だと紹介されたから、一番上位にあるのは盛容だと思っていたのが間違いだったのだ。




