駅府にて
拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
よいお年を。
派遣した村民と旦商会の人員が、白を連れて戻ってきたと知らされ、家へ運んでもらえるだろうと思っていたら、駅府へ運ぶと言う。旦商会の人間が指示したというので、旦商会の者はともかく、白と蘇順は団徳の人間であるから村が保護するのが筋である、と主張すると、もう商会側の手で運んでしまったと言う。門衛として対応し、孫達に知らせにやって来た村民はごく普通の農民で、村内の役目番をただ単に務めているだけだ。孫達が思うように動いてくれるわけではない。
急いで駅府に駆けつける。蘇順を見かけなかったという報告も確認する必要がある。白は意識がなかったらしいし、気が緩んだ自分の不甲斐なさを呪った。
駅府の門はすぐに通された。門衛の一人が孫達を案内する。館の玄関にも二人の男が孫達に挨拶をし、一人が奥へと消えていく。玄関の傍の応接間に通され、門衛がその場で茶を淹れてくれた。
辺境の塩と酪を入れるものと違って、明るい澄んだ色をしている。そこに牛乳や蜂蜜などを入れて飲むのが王都流だと勧められた。牛乳や蜂蜜は辺境でも入れることはあるが、元の茶の色が違うので、ずいぶん違うものに見え、飲む気にはなれなかった。大体ゆっくり茶など啜っている場合ではない。
そこに現れたのは、二人の男だった。一人は隊商の責任者の盛容殿だ。一番にその体格の良さが目に付くが、決して焦らず一言一言確かめるように話す様は、さすがに大商会で責任ある立場の人間だと感じさせる。
もう一人は見覚えがない。盛容殿より小柄だ。孫達よりも少し低いくらいの身長に、ぶかぶかの服を着ているところを見るに、どちらかと言うと華奢な印象を受ける。その顔を見て、子供なのか女なのか、一瞬迷う。だが、子供がこんな席に来るはずもない。
彼は手を胸に当て、「ご足労いただき、かたじけない。私は碧天と申す。こちらは盛容、既にご面識を得ておりますが」あっさりとした礼を行った。そしてさっさと上手へ座ってしまった。
年齢からいうと碧天は一番下である。
この場合誰が一番上座になるのかは、孫達にはちょっと迷うところだった。そもそも駅府、というのが難問なのだ。村内にあるが、村の物ではない。正確に言うと国の物であろう。但し、旦商会のように民間人でも、借り受けることが可能な施設だ。今回のように、大人数で宿泊したいが、村にはそれに対応できるような宿がない場合などに使える。辺境では夏以外の時期は野営できないため、そういう施設が必要なのだ。もちろん、軍や学術的な調査団、役人や官警などが利用することもあった。
商会は民間人なので、社会的な身分はそれほど高くない。大商会となれば話は別だ。しかし、孫達には王都から来た旦商会がどの程度のものなのか、見当がつかなかった。
村に迎えたと考えれば、商会の人間は客人だ。駅府が旦商会の物なら、孫達が客人となるが、駅府は商会のものではない。孫達のちょっとした戸惑いをついて、碧天はさっさと話しを進めることにした。




