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賊の宴

 酒を勧めると、衛は遠慮したが石虎のほうはあっさりと乗ってきた。石虎がぼろぼろと経緯を漏らすのを、衛は少し戸惑ったようにちらちらと見ていた。しかし困っていたのは衛も同じだったのだろう。石虎を止めることはしなかった。

 三人を連れてくることはもともと予定外だった。石虎と衛はこの避難所で冬を過ごすつもりで団徳近辺までやって来た。序でに情報やら物資やらの補充に団徳に寄っただけだった。土産も数がなかったし、雪が降りそうだったので、(ハク)のところには顔を出し、蘇順のところにはいかなかった。まさか、それがきっかけで蘇順が逆上するとは思ってもみなかった。

 三人を避難所まで連れてきたのは、他にいい方法が思いつかなかったからだ。事件に気づいた村人が蘇順や(ハク)に事情を聴けば、石虎の関与は浮かび上がってくる。二股自体は刑罰があるものではないが、恐らくその後団徳からは立ち入りを拒否されるだろう。飛脚としては致命的だ。

 それ以上に事情聴取が問題だ。石虎は正確な身元の情報を隠している。可能な限り曖昧な表現で済ませ、それでは通用しない場合だけ、具体的な情報を出すようにしてきた。しかし、それも実は偽物の情報だ。団徳よりも西南の村の出身だと言い、詳しく説明しなければならないときは、個別の集落名を出す。また別のところでは、別の集落の名前を告げる。親の情報も少しずつ変える。それでも多くの情報を集めて精査すれば傾向はわかるし、虱潰しに集落を回って探せばいずれはばれるだろう。それでも冬の間は無理だ。集落間の移動はできず、雪が解けてからでも、実際に移動を重ねて情報を集め突き合わせるにはかなりの時間がかかる。

 事件が殺人未遂になるので、それなりに調査しようとするだろう。間の悪いことに、直前に石虎自身が団徳に現れてしまっている。直接的な関与さえ疑われるかもしれない。

 咄嗟に連れてきてしまったものの、三人をどうするのか、決めかねていた。蘇順は石虎に惚れているようだから、生かしたままでもいうことを聞くかもしれないと思ったが、怒鳴り込んできた様子を見るとそれも怪しくなってきた。

 「面倒だが、殺すか、売るかだな」張の発言に、「やっぱ、それしかないか」と石虎が唸る。

 殺すのはその作業が面倒だが、後腐れはない。全く儲けがないので、面白味には欠ける。張としては散々遊んでから殺したいところだ。しかし石虎たちはいたぶることにはあまり興味がないようだし、ただで張に玩具を提供する義理もない。

 売り飛ばすには伝手が必要だ。石虎たちは人身売買の手伝いをしたことはあった。ただの手伝いで、伝手というほどには顔つなぎができていない。うまく売り込むことができるか怪しいし、売れてもかなり買い叩かれるだろう。張の手を借りたほうが間違いがない。

 もちろん、張のほうも有り難い。どうせ阿珠も始末しなければならない。そのうえ、「王都の人間だって?」際立って垢抜けた上玉がいる。あれなら貴族の子だと偽ってもばれなさそうだ。かなりの儲けが期待できる。

 黙って手酌で一人飲む杜を尻目に、石虎と張は盛り上がった。衛は何度か口を挟もうとはしたが、無駄だと悟り、毛布を被って横になった。売りたくないと思ってはいても、どうすれば石虎を説得できるかがわからなかった。一人だけ、衛が連れだして逃げ切ることができるだろうか。牢の扉を開けて、呼びかけて、その後…を想像しているうちに眠ってしまっていた。 

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