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蘇順の過去

やや脱線回?

 蘇順の嫉妬の起源は相当古い。

 物心ついた時から、孫維は蘇順より半年ほど年上で、常に先を行くちょっと気になる存在だった。辺境の寒村にはもともとそれほど人口は多くないし、子供の数もそれなりだ。西にあるという派守国では、一組の夫婦で何人もの子供を産むそうだが、それを聞いたときは父親にも子供が産めるのかと思ってしまった。しかしそうではなく、母親が何人も繰り返し妊娠出産を繰り返すのだそうだ。

 偉華では、母親が出産できるのはせいぜい二人までだ。一人産んで力尽きたように亡くなる女性も多い。父親は出産できないから、大人二人で一人しか子供ができないとなると、国民は減る一方のはずだが、六感の一つに、聖母と呼ばれる能力がある。その力を持った子供は成人すると多くの子供を産むことができるのだと言う。団徳にはそういう女性はいなかったから、子供は一人っ子か二人兄弟までだった。

 蘇順も孫維も一人っ子だ。一人っ子は兄弟に憧れる気持ちを持っていたりするものだが、蘇順ももし兄がいたら、孫維のように、転んだときにちょっと手を引っ張って膝の砂を払ってくれるのではないかと思っていた。

 だが、孫維には(ハク)がいた。

 孫維は一見(ハク)のことを嫌っているように見えた。連れだって歩くことなどないし、言葉を交わすこともない。(ハク)がやってくるのを見ると、孫維は口をへの字に曲げてそっぽを向く始末だ。従弟なのに、孫維に嫌われている。そう思うと口元が緩んだ。

 (ハク)は可哀想、と言うのが、村の中では主な意見だった。この辺りは村のご意見番である慎さんあたりの意向が大きい。

 「孫夏が死んじゃって呆然としてたのはわかるし、その忘れ形見を手放せない気持ちもわかるよ。でも結局自分たちじゃ手が回らんのは、わかってたことだわね」

 村長は20代そこそこで村長になった。父親が山で事故に遭って、その怪我がもとで亡くなり、その後母親が急に倒れて亡くなった。結婚したばかりで、立て続けに不運に見舞われ、準備不足のまま村長を継ぐことになり、支えになる妻もすぐに身籠ったため、無理がきかない状態だった。

 妹の孫夏はまだ若く、村長を支えるような力はなかったし、むしろ両親を亡くし、兄も結婚して子供ができたとなればそちらを優先するという中で、精神的には孤立していたのかもしれない。そういう状況下で出会った男に惹かれる気持ちはわかるような気がする。結果として孫夏は身籠り、出産して亡くなった。

 父親は不明。村長がさらに重荷を背負い込む羽目になる。村内では村長の負担を見かねて、(ハク)と養子縁組をする申し出があったらしい。子供が少ないこの国では、子供を持てなかった夫婦やなくした家族が子供を引き取って育てることは珍しくない。そういう夫婦に育てられれば、案外幸せだったかもしれない、というのがご意見番の話だ。

 しかし村長は拒否した。妻は反対したが、それなりには面倒を見てやった。少なくとも最低限の世話はしてやったし、きつい仕置きなどもしていない。ただ、母親のような愛情はなかったし、伯母としても少々冷たかったのかもしれない。

 だがそんなものだろうと思う。そこで拗ねる(ハク)のほうが贅沢なのだ。

読んでいただき、ありがとうございます。

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