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幹部

 石虎は暖かな家の中に入った。家の間取りは扉を開けてすぐに土間と、そこから一段上がった板張りの床の玄関、これは応接間や居間も兼ねている。土間には外から持ち込んだ物がそのまま置けるし、板張りの床が客をもてなす椅子や卓になる。この部屋は風防室も兼ねている。寝室へ風が吹き込まないようにしているのだ。

 土間から続く台所、板張りの床からは二つの寝室へ行けるようになっている。玄関の土間には火鉢があり熾きが僅かな光を放ち、台所の竈にはまだ小さな火が点っていた。

 板張りの床に二人の男が座り込んで、石虎を迎えた。二人とも無精髭を伸ばし、血走った目がじろりと石虎を睨んだ。床には酒瓶が数本転がっていた。

 「獲物を三人、歓迎とはいかねえな」扉を開けたほうの男は、肩と首の筋肉が大きく盛り上がり、節くれだったごつごつした手をしている。張というその男は、誰も答えないことも気にせず、一人で言葉を続けた。「それほど食料はねえぞ。食料より、薪のほうが問題か」

 それは石虎もわかっていた。この廃村を見つけたのも石虎なら、拠点として手を入れたのも石虎だった。この廃村を見つけたことは仲間内で手柄の一つととらえられたし、もともと情報を集め、獲物を見繕う石虎の働きも評価されていた。だからこの廃村では、石虎は幹部の一人として発言することができるようになっている。

 この廃村で、使用できるのは家畜小屋と倉庫、居住用としての二軒の家だけだ。本格的に拠点として活用するのはまだ先のつもりだったのだ。奥の院と呼んでいるあの大きな建物については、中を覗くことすらできていない。

 倉庫や家畜小屋に入れた物資は、主に石虎が手配して入れた物だ。この冬は、拠点と言うよりも立ち寄り先の一つ、避難先の一つとしての活用しか考えていなかったので、冬中ここで過ごすには物資が足りなさすぎる。一人が越冬するくらいの分量しかない。

 集落近辺なら、道が雪で埋もれるほど降ることはない。ちゃんと装備を整えれば、集落間の行き来は真冬でも可能だ。だが、この廃村は集落よりも少し高いところに位置している。集落よりも降雪量が多い可能性がある。

 住宅の設備から、家が埋もれてしまうほどには降らないと思うが、そもそもこの廃村の性質が不明だ。ここで越冬するつもりがあったのかどうか、定かではない。代官や領主などのように、冬になると郡都などの雪が降らない地域に移動することを前提に設立されたかもしれないのだ。

 廃村の位置は組織の幹部しか知らない。任務によってこの廃村に避難する可能性があるならば、任務を命じる幹部が教えることになっている。張は一応幹部の一人だが、もう一人いる無口な男、杜と石虎は初対面だ。張は適当に杜にも話しかけているので、顔見知りらしい。杜自身は何の任務についているのか、なぜここにいるのか説明しないで、ただ酒を飲んでいる。

 石虎も酒を口にしたかった。とりあえず外套を脱ぎ、扉の近くではたいた。壁の釘に引っ掛け、板張りの床に腰を下ろす。思わず息が漏れる。

 次の瞬間、扉をぶち破る勢いで、衛が飛び込んできた。

 

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