↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

1. イオニア教皇国へ

 4大国の王侯貴族が留学してその魔力を競うのは、神聖イオニア教皇国の首都ヴェネトにある神聖魔法学院だった。春の国と言われるミケーネ王国の東に位置するトラキア諸侯国からも、貴族と選抜された平民が留学にやって来ていた。その平民の一人が私、マーガレットだ。


 物心付く頃には、我が家は母一人子一人で暮らしていた。8才が過ぎた頃から、母は私に水魔法を教えていった。貴族は10才で魔法属性を調査し、多くの国は13才の時に平民も魔法の有無を調査する。だから、私は多くの魔法師より2~5年以上早くから指導を受けていた事になる。


 12才の時に母は亡くなった。私達が住んでいた土地の領主は私を孤児院に入れてくれた。だから私は飢え死にする事はなかったが、何せ孤児院は飢え死にしない程度の食事しか出なかった。なのに作業はするのだから、だんだん私はやせ細っていった。


 転機は13才の時の魔法調査だった。魔法調査で無事、水魔法の属性判定を受けた。属性判定の時に教えられた呪文は母から教わったものとは違った。それでもやる事は一緒だから、当然の様に水魔法が発動し、その威力が人並み外れていた(当たり前だ。4年以上練習した事だったから)事から、私は領主の館に併設された魔法学校で魔法を学び、練習した。全部、母から教わった事の復習だったから、魔法自体は氷結魔法まで発動させていた。


 何度も言うが、呪文自体は異なるけれど、魔力を用いてやる事は一緒なのだから、全て復習だった。どころか、母の教えた魔法の内、上級の範囲魔法は、領主の魔法学校では教えていなかった。


 母は私に魔法を教えながら言った。

「私はこの魔法を守り、それを娘に伝える様にと親から教わったわ。でも、私の家は無くなってしまったから、あなたがあなたの娘にこの魔法を伝える必要はないわ。好きに使いなさい。ただし、この魔法を使う時、あなたは私の家にかけられた呪いを受ける事になるから、それでも使うべきかは考えてね」

「家にかけられた呪いってなあに?」

「一つはこの魔法を厭う人達がいること。もう一つはこの魔法の使い手であるあなたを手に入れ、娘を生ませようとする人達がいること。それでも良いなら、この魔法を使いなさい」


 そう言われれば使わない方が良いと思う。幸い、一般的な呪文は領主の魔法学校で手に入れた。これで普通の魔法使いとして生きる事は出来そうだ。


 とは思ったのだけれど、トラキアは諸侯国だった。つまり各領主が寄り集まって国にしている。だけれど、外交的な配慮で神聖イオニア教皇国の魔法学院に一定数以上の留学生を送り出す必用がある。つまり、魔法師の多さが国力の一部として重視されているんだ。


 だから、諸侯の魔法学校で優秀な成績を収めた者が集められ、優秀な諸侯・陪臣の子供と、力のある平民の子供が留学する事になった。幸いなのか、不幸なのか、同学年の中で私の水魔法は威力も精度も桁が違った。諸侯の子や陪臣の子供達より上だったのだ。


 少し気まずい思いをしながら、4属性魔法、つまり火・風・水・土の各属性の平民代表の一人として留学する事になった。もちろん、諸侯ならびにその陪臣の子女からも4人留学する。


 4大国が囲む内海の中に浮かぶ島が神聖イオニア教皇国の領土だった。私達トラキアからの留学生は、8月の半ばに帆船でこの国にやって来た。そして手で漕ぐ中型船に乗り換え、運河を通って神聖魔法学院の敷地に入った。


 その時、気になる事があった。私には人の魔力が分かる。魔力の強い人はどこにいるか分かるんだ。留学生を決める集まりの時にも諸侯とそのお抱え魔法師、そして諸侯の子息、陪臣の子女に一人ずつ魔力の強い者がいるのを感じた。私の母ほどではないけれど。


 そんな人達より、よっぽど強い魔力を感じた。まるで潮騒の様な、波の立てる音の様な魔力を。いや、もちろん神聖魔法学院の生徒である王侯貴族や教師なら魔力の強い者がいるのは当然なんだけれど。強い魔力を感じたのは、海の中だった。


 湾内に入った私達の帆船に半マイル横をついて来ていた。港で係留された帆船には近づいてこなかったし、手漕ぎの船が運河に入った後はどこかに行ってしまった。


 魔力を持つ海獣がいる?神聖なる教皇国の領海に?


 私には魔力の大小は分かるけれど、この海獣の実際のサイズは感じ取れない。海上に浮かんでこないと。船に危害を与えられる様な海獣ならば駆除されていても不思議は無いから、悪意のある海獣では無いのかもしれない。


 どちらにせよ、陸に上がってしまえばあの海獣からは手を出せないのだろう。私より魔力が強い人達がいる筈のここで、騒ぎにならずに放置されているのなら。


 私達は運河の船着き場を降りて、近くにある魔法学院に入った。運河は重量物を船で運ぶものではあるけれど、魔法学院にそうそう大きい荷物を運ぶことはないだろう。だから、これは何かあった時に、港に停泊している4大国の軍船に王侯貴族を運ぶために接しているのだろう。


 ちなみにトラキア諸侯国も外洋帆船としては小型の軍船を停泊させている。もっとも、乗組員の数が4大国とは桁違いの為、それらと小競り合いになったら、あっと言う間に制圧されてしまうだろう。


 私達トラキア諸侯国からの留学生は、魔法学院に入ると二手に分かれた。諸侯・陪臣の子達は王侯貴族用の寮に向かう。私達平民の留学生は平民の寮に向かう。


 王侯貴族とは言え、授業中に部下を連れて歩く事は出来ないが、寮では使用人に身の回りの世話をさせているそうだ。もちろん平民の寮生にはそんなものは無く、食事の準備以外は自分でやる必要がある。それでも着替えや日用品はトラキア諸侯国の大使館のスタッフが揃えておいてくれた。ここを出るまでは飢える心配は無いし、服も最低限の用意はしてもらえる。


 そして、問題なく卒業出来れば、最低限地元の領主に魔法兵として雇ってもらえる。


 一方、4大国やその他の王侯貴族がこの学院に集まるのは、二つの意味がある。一つは将来、国の重役となった場合に備え、顔を繋いでおく事。もう一つは、ここで有力な魔力を持つ結婚相手を探す事だった…もっとも、平民には関係のない事だけれど。王侯貴族がその縁者に平民の血を入れる筈は無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。