第46話 仕込みは大事
調理台の上に一抱えほどの大きさの鶏肉がどんと載っている。
思ったんだけど、これって普通の鶏の肉じゃないよな? 大きさが明らかに違うし。
鶏の魔物とか、そういう生き物の肉なのだろうか。
まあ、美味ければいいんだけどさ。
から揚げを作るための仕込みに使うのは、にんにく、生姜、酒、醤油だ。
鶏肉を一口サイズに切り分けたら、摩り下ろしたにんにくと生姜、酒、醤油を振り掛けて漬け込む。
漬け込む時間は最低でも一時間は欲しい。
こうして味を馴染ませることによって、揚げた時に美味しいから揚げになるのだ。
「それは何だ?」
調味料に漬けた肉を見て小首を傾げるシーグレット。
にんにくの匂いが付いた手を洗いながら、俺は言った。
「建国記念日の時に作ろうと思ってる料理さ。お試しってことで、夜のまかないにしようと思ってな」
「ああ、そうだな。せっかく目新しい料理を出しても美味くなかったら意味ねぇからな」
今、口元拭っただろ。
それらしいこと言ってるけど、単純に食いたいだけなんじゃないか? あんた。
まあ、にんにくと生姜って食欲そそる匂いだもんな。涎が出るのも分かるよ。
「で、その肉はどう料理するんだ」
「今はまだ仕込みの段階だよ。調味料の味を肉に馴染ませてから料理するんだ」
「成程な」
肉の入ったトレイを冷蔵庫に入れる。
これで仕込みは完了だけど、何か一品だけってのも淋しいな。
俺は床に置かれている箱からジャガイモを取り出した。
ついでだし、フライドポテトも作ろう。
ジャガイモを洗って皮を剥いて芽を取って、スティック型になるように切っていく。
手軽に皆でつまめるように、これを大量に作った。
これも揚げるだけだから、やり方さえ教えれば誰でも作れる料理になるだろう。
味付けはやっぱり塩だよな。ケチャップでもいいんだけど、作らなきゃならないし。
「お前は本当に料理上手だな」
切ったジャガイモを鍋に入れていると、シーグレットが腕を組みながら言ってきた。
「作れねぇ料理なんてねぇんじゃねぇのか? お前」
「買いかぶりすぎだよ。俺は万能超人じゃないんだから」
俺にだって作れない料理はある。プロの料理人じゃないんだから。
何でもできるって勘違いされちゃ困るな。
頼りにされるのは嬉しいけどさ。
鍋を調理台の上に置いて、俺は手を洗った。
「それじゃ、仕込みは終わったから休憩に行くわ」
「そうか。仕事の時間には遅れねぇようにしろよ」
シーグレットに見送られながら、俺は厨房を出た。
休憩時間は大体自分の部屋でごろ寝してるんだけど、今日は何か外に出たい気分だし、足を伸ばして中庭の方にでも行ってみるかな。
たまには日光を浴びないと病気になるからな。
健康第一、これ大事。




