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魔法にかけられて

水の宇宙人マナブと破壊の概念インテリタスが紡ぐ連作短編です。


こういう、なんてことのない子供の遊びの中でインテリタスの情緒が育って欲しいと思いながら書いています。


■いる人

インテリタス…破壊の概念。少女の姿を得た。人間勉強中。きらきら光るものが好き。

マナブ…水の宇宙人。美青年。世話焼き。バンドのベーシスト。お土産の竜の巻き付いた剣とか好き。

 正面から強い風が吹いてマナブの身体を襲った。どこで発生した突風だろう。柔らかくも細かい棘のある風がチクチクと肌を撫でる。水の身体が何か角のあるもので泡立たせられるのを感じながら、マナブは立ったまま通り過ぎるのを待つ。目を瞑らなければ耐えられないほどの強さだが、巻き込まれるほどの規模の風ではない。


 その風の渦から抜けたあと、マナブの身体には金属の表面のように光り輝くひっつき虫が大量についていた。


「あーあ」


 どうやら今の突風は秋の種子の大群を乗せたもの──種まき屋の風だったらしい。ひっつき虫はこうやって運ばれて人にくっつき、それ以外の種は風に乗り、それぞれ好きなところで降りるに違いない。植物の種子が他の生き物を頼って種を運ぶことは特区も外も一緒だが、種まき竜巻は大量の種が突風をレンタルして一堂に会し、運ばれる怪異なのである。


 普段ならばレザーのジャケットとパンツで身を固めているマナブだったが、生憎、今日に限って柔らかい布のTシャツにGパンを着用していた。全身、引っ付き虫まみれでキンキラである。


「ついてないなー」


 生地に絡みついて離れない植物の種を摘まむ。種子の中心から生えた鉤付きの柔らかな棘が太陽に反射してキラキラと輝いた。単独でなら何とも思わない植物の種の一粒だが、身体全体に付いてしまった種子は厄介だ。一つ一つ、布から引きちぎるようにとった種が、いつの間にかマナブの片手でも収まらないほどの山盛りになっている。それでも髪の毛や綿パンに残っているひっつき虫を見て、マナブは腰を落ち着けてから駆除することに決めた。


 幸い、今から行く場所には大きなコンクリート片がある。座って何かとじっくり向き合うにはぴったりの、大きなベンチのようなコンクリート片が廃棄されているのだ。


 今日も同じように、空き地の真ん中には大きなコンクリート片が鎮座していた。その上にこじんまりと少女が座っている。──マナブと同じく、ひっつき虫を大量に付けて、その姿は光を反射して黄金色に輝いていた。


 先ほどの突風にこの娘も巻き込まれたのだろうか?


「おはよう、インテリタス。お前も、種まき屋の風にやられたのか?」

「やられ……」


 少女の返事は尻すぼまりだった。


「……って、うわっ!」


 普段からは考えられない素早さで、インテリタスはマナブに寄ってきた。あっという間にマナブの前に現れた少女は、マナブが片手に溢れさせていた大量の輝くひっつき虫に目を凝らしている。キラキラと輝くものが好きなこの娘は、煌めく植物の種に興味津々らしい。普段据わった目つきで世界を見ているインテリタスだが、キラキラしているものを見ているときは話が別だ。ピンク色の瞳にハイライトが現れたように、ひっつき虫を浮かべて瞳を輝かせていた。


「お前にも付いてるけどな」

「ついてる」


 突風に襲われたのに気づきもしなかったのだろうか、単に激ニブなだけなのか。男の指摘にインテリタスが首を傾げた。マナブは少女の服に付いていた輝くひっつき虫を取って見せる。


「同じやつ」

「おなじ」


 インテリタスが自分のワンピースを確認するために身をひねった。大量にくっついたキラキラとした種が光を反射させ、服自体が輝きを放っているようにも見える。まるで、お姫様の綺麗なドレスのようだった。TシャツGパンが光っていたらお笑い芸人に違いないが、ワンピースにくっついているというだけで、こうも印象が変わるのが愉快だった。


「めっちゃ光るじゃん……。あ、良いこと考えた。じっとしてろ」


 マナブがインテリタスをまっすぐ立たせた。柔らかい生地のスカートに模様を描きながら、ひっつき虫を付け直す。インテリタスの服に付いている分が終わったら、今度はマナブの服に付いている分を付けた。インテリタスに付いたひっつき虫の場所を整えて、……完成だ。


「すげー、お姫様みたい」


 魔法使いが魔法をかけたように、インテリタスのワンピースは金色からピンク色に偏光するドレスに変わっていた。


「いい感じだな! 回ってみろよ」


 マナブに言われるがままインテリタスが危なげな足どりでくるくると回る。スカートがふわりと広がり、今度は周囲の景色を反射させて虹色の光を放つ。ひっつき虫の仕業とは思えない出来栄えである。それに気を良くしたのか、少女が二度目のくるくるをしようとし──、躓いたのをマナブの手が抱きとめた。


「おっと、大丈夫か?」

「だいじょうぶ」

「ふふ。なんか、ダンス踊ってるみたいだな。そうだ、お前の保護者にも見せてやろうぜ。──お手をどうぞお姫様」


 男のエスコートで空き地を後にする二人。


 保護者にめちゃくちゃ呆れられるとも知らずに……。

読んでいただきありがとうございます☺

読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!


もしよければ評価を頂けるととても嬉しいです。


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