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202/202

201話 オシャレしよう

平和な日常回です。


 ある昼下がり、私たちは日用品の買い出しに商店街へ来ていた。

 

「さすが商人の街というべきか、店が多いわね」


 大きな広間には見渡す限り様々な屋台や露店が並び、いろんな物が売られている。

 

「何かいいものないかしらねー?」

「無駄な物は買わないからね」

「その通りですね。ところでエレンさん、あそこにあるお酒掘り出し物っぽいんですけど買っていいです?」

「高いから却下」

「それはないですよー!」


 そんなやり取りをしながら買い物していると、ミラがある露店のほうに吸い寄せられていく。


「ミラ、どうしたの?」

「エレン様見て! これすごく綺麗だよ!」


 ミラが指をさしたのは、きれいに輝く赤い宝石のブローチ。

 ……のように見えるが、値段を見るととても安い。

 露店の店主に聞くと、どうやら子供用のおもちゃらしい。

 

「ミラ、これが欲しいの?」

「えっと……いいの?」

「ええ、大丈夫よ」


 安いし、何よりミラが欲しいものはできるだけ買ってあげたい。


「わーい! エレン様ありがとう!」


 その流れで幾つも露店を回り、同じように安い宝石のおもちゃであしらわれたアクセサリーを次々買っていく。

 気付けば、両手に一杯くらいの量になっていた。


「あんた、無駄なもの買うなって言っておきながら……」

「ミラちゃんに甘いですねエレンさん」

「う……」


 その結果、二人から呆れた目で見られてしまった。


「別にいいじゃない。ミラだってオシャレしたい年頃だろうし」

「エレン様、これつけていい?」

「ええ、いいわよ」


 ミラは赤い宝石のおもちゃが付いたブローチを手に取り、自分の胸に……と思いきや、本体である木の箱につけようとする。


「エレン様、どうやってつけよう?」

「え……? あ、そうか」


 一瞬ぽかんとしてしまったが、少女の姿はあくまでミラが魔力で作り出した分身だ。

 アクセサリーをつけるとしたら本体のほうに決まっている。


「ちょっと待ってね」


 ミラの本体にはブローチを留める場所はない。

 そこで、土魔法で小さな泥のような粘土を作り、それを接着剤代わりにしてブローチを本体にくっつける。


「これでいいかしら?」 

「わーい! エレン様ありがとうー!」


 ミラが満面の笑顔ではしゃぐ。

 うん、喜んでくれてよかった。


「そういえば、エレンさんとポンコツさんはオシャレに興味ないんですか?」

「え?」


 私とアルテナが?

 

「いやいや、あたしたちは冒険者よ? そんなことに現を抜かしてる場合じゃないわよ」

「まあ理由はともかくとして、私たちには縁遠い気がするわね」

「そんなことないですよ。いいですか? 私たちは確かに冒険者ですが、同時に花も恥じらう乙女でもあるんですよ。オシャレだって必要に決まってます!」


 マルタが頬に手を当てながらなんか言っている。


「花も恥じらう乙女って……」

「はぁ……。クソうさぎ、あんた歳考えなさいよ(←お前が言うな)」

「私はまだピチピチの二十代ですよ!」


 どうなんだろう?

 その言葉が似合うのはこの中でミラだけな気がする。


「そうだ、これから服を買いに行きませんか?」

「それは別にいいけど」


 服も大事な日用品だし。

 なんかテンションが高いマルタを先頭に、商店街にある大きな服屋に入る。


「いらっしゃいませ~! 何かお探しのものはありますか?」

「何か乙女に似合いそうなのをお願いします!」


 早速服屋の女性店員に変なリクエストをしている。

 大丈夫だろうか?


「でしたら、これはいかがでしょうか?」

「お、いいですね! 早速ポンコツさん試着してみてください!」

「はぁ!? なんであたしが!?」

「いいからいいから!」


 マルタは店員から服を受け取ると、アルテナの背中を押して強引にカーテンを開け、試着室へ入る。


「ほらほら! 観念して着替えてください!」

「ちょ、わかったから! こら! 変なとこさわんじゃないわよ!」

「良いじゃないですか女同士なんですし!」

「良くないわ!」


 カーテンの中で何が行われているのだろうか?

 しばらくして。


「出来ましたよ! 刮目してくださいエレンさん、ミラちゃん!」


 そう言ってカーテンが開かれる。

 するとそこには。


「「え?」」

「…………」


 現れたのは、清楚な白いドレスを着た、長いサラサラの金髪を靡かせる絶世の美少女だった。

 彼女は両手を前に添え、私たちに向かって静かに歩みを進める。

 そして……。


「こんにちは。エレンさん、ミラちゃん」


 優しく微笑みながら優雅に一礼した。


「な……な……な……!?」


 驚きのあまり言葉が出ない。

 これは……誰!?


「……プッ! あははははは! いや、驚きすぎでしょ! なによその顔!?」

「……あ、アルテナ?」


 バカらしく笑ってる姿を見て、私は目の前の美少女をやっとアルテナと認識した。


「すごい! アルテナ様とっても美人だよ!」

「クックック、当然よ」

「いやー清楚でドッキリ作戦大成功ですね! エレンさん今の気持ちはどうですか!?」

「……アルテナの口を永遠に塞ぎたいと思ったわ」

「あ、それめっちゃわかりますねー!」

「なんですって!?」


 やれやれ……本当にびっくりした。

 アルテナが見た目だけは美少女だってことを忘れていた。

 一瞬ドキっとしたじゃない……。


「では次は私ですね! ちょっと待ってください!」


 そう言って今度はマルタが一人試着室に入る。

 そういえばマルタは受付嬢の制服と、今の和服姿しか見たことない。

 一体何を選んだんだろう……と思っていると。


「ジャーン!」

「「え……」」


 マルタが選んだのはなんとバニー服だった。

 いや、なんでそんなものが普通に売ってるのよ!?

 確かにバニー()だけど……。


「どうですかー? ンフ♡」


 自分の大きな胸を強調するように、前かがみのポーズをとる。


「わー! マルタお姉ちゃん凄い!」

 

 ミラが微笑みながらマルタを褒める。

 確かに凄い……んだけど……。


「何が花も恥じらう乙女なのよ……」

「まあ、ウサギの獣人だし似合ってんじゃないの」

「なんなんですか二人とも! その冷めたリアクションは!?」


 そう言われても私たちは女だし、マルタのキャラでバニー服って似合いすぎて逆に冷める。

 男ならテンション爆上がりしただろうけど。


「ていうかマルタ、あなたはまず下着から選んだほうがいいんじゃない?」

「え、何故下着なんです?」

「だってあなた履いてな……」

「は・い・て・ま・す!」

「そ、そう……悪かったわ」


 マルタが顔を真っ赤にして否定してくる。

 うーん、まだ私の中でバカドクロの時のノーパン事件が印象に残っているみたいだ。


「よし! 今度はあっと言わせる物を選んで見せますよ! ポンコツさん! どっちが自分に似合う服を選べるか勝負です!」

「ふ、受けて立とうじゃない! エレン、あんた審査員になりなさい!」

「えー……」


 その後、しばらくの間二人の勝負に付き合わされた。

 そして夕方、やっと自宅に帰れた私たちだったが……。


「いやー、いい買い物が出来ましたねー!」

「クックック。なかなか品ぞろえがよかったわねあの店」

「あんたたち……」


 結局服屋で店員の口車に乗せられ、色々二人の服を買わされてしまった。

 ああ……余計な出費だ……。


「エレン様大丈夫? 私のアクセサリーあげるから元気出して」


 そう言って、ミラは露店で買ったうちの一つを私にくれる。


「ありがとうミラ。それにしても……」


 青い宝石のおもちゃが埋め込まれたネックレスを窓から夕日にかざすと、とてもキラキラして美しく見える。

 本当に安物なのだろうか?

 そう思い鑑定を使うと……。


 ――――――――――――――


 サファイヤのネックレス


 サファイヤをあしらったネックレス。


 本物の宝石を使っており、高価な代物である。


 ――――――――――――――


「え!?」


 鑑定の結果まさかの本物!?

 露店の店主もおもちゃだと思ってたのに……。


「……ミラ、今日買ったアクセサリーを全部テーブルに出してくれない?」

「え?」


 そして鑑定の結果、ミラが選んだおもちゃのアクセサリーはすべて本物の宝石があしらわれていることが発覚した。


「これもミミックの嗅覚かしら……?」

「マジで!? これ全部本物!?」

「すごいですよミラちゃん!」

「えへへ……ありがとう」


 結局、余計な出費がかさんだものの、それをはるかに超える収入を得た私たちなのだった。

以前序章まで書いてたものを再連載しようと考えてます。

なのでしばらくこちらは投稿頻度週一くらいになりそうです

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