魔改造トヨダAA vs 爆撃機エクスカリバー
1
「意外と早かったじゃん」
車内のフロントガラスから爆撃機を二機確認したミドリは、コントロールパネルやハンドルの操作をしていく。
上空。
「こちらエクスカリバー。標的と思われる頭上に到着した。射撃の許可を願います。どーぞ」
『こちら団長の片倉菊代。到着を確認した。市街地での無制限射撃を許可する。市街地での無制限射撃を許可する』
「こちらエクスカリバー。市街地での無制限射撃の許可了解」
一号機のパイロットがそう了解したあと、コントロールパネルの照準を地上で停車している魔改造トヨダAAに定めたのちに、コックピット下面から二つの機銃を出現させた。
「FIRE!」
と、レバーの引き金を引いて銃弾を発射していった。
地上に移り。
ミドリの操作ののちに、車体底面の真ん中あたりから円筒形のジャッキが出てきて駐車場のアスファルトに着いたと思ったら、重量級の車体を持ち上げていき、クルッと約九十度方向転換させ十字軍の装甲車両の方を向いた。地面とタイヤの隙間は小さめで良い。油圧式のジャッキが下がり着地したときに、エクスカリバーからの銃弾が降り注ぎ、車体の両側のアスファルトを抉っていった。シャッターグリルから機銃を出して、ミドリは一番手前の装甲車両の地面を狙って撃った。下から吹き上がる衝撃とアスファルトの破片を喰らった空の装甲車両は、突き上げられて宙で回転していき、手前から三番目の装甲車両へと落下した。次に、二番目の装甲車両の頭の下へと銃撃した。その勢いを受けた空の装甲車両は、地面から蹴り上げられたようにして立ち、スピンしながら三番目の装甲車両に倒れ込んだ。
「な、なにを、しているんですかね……?」
驚愕して呟く花陽。
再び車体底面から油圧式ジャッキを出して、魔改造トヨダがクルリと百八十度回転して菊代たち四人と向き合った。これにはたちまち、ギョッ!としていく新世界十字軍の淑女たち四人。超低空飛行のエクスカリバーが少しだけ前に移動したとき、魔改造トヨダに大きな影が差していってその運転席に座る人物が明らかになった。
「え! ミドリちゃん?」
「嘘? あの糞ミドリなの!?」
「うわわわ! 本当に生きてた!」
「マジかマジか! 本物のミドリちゃんだ!」
以上、順に。菊代、夢子、花陽、花陰
と、思い思いに驚きの声を上げていった。
これに気づいたミドリは、ニコッとして小さく手を振った。
キャーーッ!可愛い!とミーハー化するファ姉妹。
そんな美人中華姉妹の真横を射撃音とともに銃弾が駆け抜けていき、腹を仰いで倒れていたトレーラーにブチ当たって、底面のフレームをタイヤごと捲り上げた。驚きに思わず身を屈めたファ姉妹と夢子、そして「おわあ!」と声を上げた菊代。女四人の反応を無視したミドリは、喜びの声を上げた。
「おーし! 計算通り!」ーちょっとズレたけれど。ーー
再び、頭上から銃弾が降り注いでくるが、先ほどと同じく、車体の両側のアスファルトを抉っていくという状態だった。先の塀をぶち壊して隣の工場まで銃撃したとき、ホバリングしていたエクスカリバーは一旦少し上昇して滞空した。この隙を狙い、ミドリは魔改造トヨダのジェットエンジンに点火した。水素エンジンのロケット噴射により、一時的な加速をして即席のスロープを上りきる手前でミドリはハンドルを切って、鉄筋コンクリートのブロック塀に“着地”して走っていく。塀を走らせていき、ハンドルを切り再びロケット噴射して、即席で作った装甲車両の残骸のジャンプ台に乗り移ったとき、車体底面の左右から主翼が出現した。そのさらに、三度目のロケット噴射をして走った瞬間、魔改造トヨダが空を飛んだ。駄目押しの四回目の噴射をして加速を増した車体は、滞空していた爆撃機エクスカリバーのコックピットの位置まで上昇していた。予想値にしなかった事態に、パイロットが目を剥いて思わず「メーデー! メーデー!」と無線で叫んだそのとき。魔改造トヨダのシャッターグリルの機銃から連射されていき、銃弾を受けた機体装甲は破れて穴が開き、エンジンを空中に散布していった。銃撃をしながらも空中で五度目の加速した魔改造トヨダは、黒鉄色の凶悪な鉄製バンパーを爆撃機のコックピット後ろに衝突させて、本日六度目のロケット噴射をして加速していった。パイロットは脱出を試みたが、不幸にも跳ね上がったキャノピーに座席が引っ掛かり、「ノオオオオォォォーーーー!!」と機体ともども道連れとなった。バンパーで機首後部を貫通していき、車体底面の主翼こと超高周波ブレードで切り裂いていきながら、ミドリはシャッターグリルの機銃の射撃の手を止めず、駄目押しの七度目の加速をして愛車よりも数倍巨大な爆撃機の機体を強引に押しやっていき、建物の屋上を通過して金網フェンスを突き破ってグラウンドにへと機体ともども落下した。かのように見えたが、墜落の手前で機体を割って飛び出した車体は、即座に噴射口の向きを下に変えて緩めの噴射をして落下の衝撃を緩和させたことにより、底面から強く落ちても愛車の破壊は防げた。爆炎の柱を立ち上らせていく中で、車体底面に主翼を収納して砂の地面に強く着地した魔改造トヨダのハンドルを切ったミドリが、グラウンドで急角度にUターンをして、つまりはドリフトをして、宗教施設の上空でホバリングをしている次の獲物に狙いを定めた。黒煙と赤色と橙色の炎を上げて燃え盛る爆撃機の機首越しに二機目のエクスカリバーを確認したのちに、車体両側のフロントドアの真ん中にある蓋を下に開けてミサイルを出した。それは、先の追跡劇で、菱金幸世の乗っていた大型トレーラーへと放った物であった。
魔改造トヨダと対峙する形で向き合った爆撃機エクスカリバーは、機首後部の両サイドの一部を開いて、ミサイルを撃った。敵機が機首後部の両サイドの一部を開いたときに、ミドリは瞬時に予測して、分厚いルーフの真ん中から四角い箱のような物をせり上げさせていた。その箱の前面に二つあるスピーカーから、常人には聞き取ることの難しい音波を出していったその直後、エクスカリバーのミサイルと音波の触れた瞬間、弾頭から花を咲かせるように粒子状に粉砕していき、グラウンドに到達することなく二つのミサイルは爆発してその役目を果たせずに散っていった。そしてこの音波はエクスカリバーにまで達して、機首から浴びた機体はたちまちコックピットの計器パネルに異常をきたした。操縦困難となって、パイロットが爆撃機からの脱出を試みたその直後に、魔改造トヨダからミサイルが四発も射たれてきたではないか。
「イエアアアアアアァァァーーー!!」
パイロットの断末魔とともに先発のミサイルが二発、機首とコックピットに真正面から直撃して爆発。お次は落下し始めた機体の機首底面にブチ当たって、その爆撃の勢いに押されていき、塀と車道を超えた落石防止のコンクリート壁へと激突して爆発を起こした。
「よっしゃーー! 五月蝿い蝿蚊どもは片付けた。あとは予定通り、カルト教団に殴り込むぞーー!」
車内で両拳を振り上げて喜んだミドリは、顔の左側から耳にかけて掛けていたゴーグルのイヤホン部分のスイッチを入れて、通話していく。
「マールちゃん。ウザい虫は叩き落としたよ」
『マジ!? スゴいじゃん!』
「で。今から予定通りに屋上から攻めるから、あとはお願いね」
『任せて任せて』
隣の駐車場。
ミドリが爆撃機を二機撃墜したのを見た潮干リエは、親友の浜辺銀と一緒に軽くジャンプをして「ひゃっほーーー! やーーりぃーー!」と手を打ち合った。そして、この二人の喜びに続くように、龍宮紅子と磯野マキとカメ、梶木有美と野木切鱶美と鱏美のそれぞれがお互いに「あはは。やったやった! すごーい!」と手を取り合って喜んでいた。
2
「マジかよマジかよ。爆撃機に勝つ自動車てありえねえぞ……。ーーーおい、夢子!」
「イェッサー!」
「中の四〇〇人は諦める。一階の隊員から火炎放射器を借りて焼き払え」
「いいいい今、なんと……?」
団長の菊代からの指示に、小隊長の夢子は驚きを表した。
「私に同じこと言わせんな。お前、仮にも小隊長だろ? 手柄上げてこい」
「イェッサー!」
団長の鋭い蜂蜜色の眼光を受けた夢子は、恐怖を覚えながらも敬礼して施設へと駆け足で向かっていった。このやり取りを見ていた側近の花陰は。
「まさか、あの女の子たちを焼却するんですか?」
「ああ。たった一台の車にここまでヤられたんだ。相手が例え私の推しだろうが、世の中、そう“トントン”と行かせてたまるかよ。“まっつぐ”行くのは私たちだけで良い。小娘の鼻をヘシ折ってやる」
そして、白い歯を見せて太陽の光りに輝かせていく。
「それとな。鱗の娘を“ここ”で処分してもだ。あの町からは必然的に“鱗持ち”が産まれてくるんだよ。ーーー制圧下に置いてしまえば、“鱗持ち”は私たち十字軍の手の中だ。好きなときに好きなようにできるさね」
「な、なるほど」
菊代の容赦ない見切りの付け方に、花姉妹は声をそろえた。
隣の駐車場。
ダークブルーのフェアレディZとシャンパンゴールドのファミリーカーが入ってきて、二列目の空いている区画に並列駐車した。
ダークブルーのフェアレディZからは。
海淵海馬、妹の流海、長男の龍海、長女の真海。
シャンパンゴールドのファミリーカーからは。
黄肌潮、長女の有子。
これらに気づいた、リエと銀と紅子。
「あらー。海馬さーん! 潮さん、おかえり!」
「あはは、本当だ。海馬さんが来た。流海さんもいる!」
「おおーい! 海馬さーん! 潮さーん!」
各々の一巡目の反応を終えたのちに、二巡目に入る。
以下。リエ、銀、紅子。
「あら? なんか人数増えてない?」
「本当だ。海馬さんとこも増えているよね?」
「ねえ。なんか。すっげーーイイ男がいるんだけど」
それから、有美と鱏美と鱶美も続いてきた。
「綺麗な男の子ね。海馬さんの愛人かな?」
「おいおい。師匠、あの人社長だけど旦那さんがいるんですよ」
「美人社長とイケメンの愛人ってのも良い組合せやね」
そうして、マキとカメの磯野姉妹へと繋がる。
「ていうか、海馬さんの後ろの色男は誰かしら?」
「いやいやいやいや。ちょっと待ってちょっと待って。お姉さま、あの女の子二人、ほら! あの二人!」
と、一通り感想を述べたところで。
二組の母娘が手を繋いで待機組の八人のもとに駆け寄ってきた。
有子と真海を前に出して、潮と海馬は愛娘の横で片膝を突いて。
「じゃーーん! 私たちの娘が帰ってきましたー!」
そう声をそろえて、両手の平をヒラヒラさせた。
「ただいま!」
ニコニコと輝かしい笑みで、有子と真海が敬礼をした。
直後。
きゃーーーっ!嘘!なんてこと!おかえりなさい!
以上のような悲鳴とも歓喜とも感激ともとれる声が、陰洲鱒町の女たちから上がっていった。
「みんな。ただいま」と、有子。
「うふふ。ただいま」と、真海。
「あたしと真海と母さんたち、あの中の四〇〇人の女の子を助けにきたんだ」
「そうそう。久しぶりに暴れちゃおうかなーって」
これらの状況を確認していた麗華。
現場を指揮していた横溝警部に。
「警部。今からバス呼びますね」
「ええ。そうしてください。頼みます」
横溝正則警部から了解を取った麗華がスマホをジャケットの内ポケットから取り出して、別の駐車場で待機中のバスを見張っていたキャサリンに連絡していく。その一分から二分後、ルビーレッドの五八年型プリムス・フューリーに先導されながら大型観光バスが五台ほど院里学会の正門前を横切っていった。
これに何事かと驚いて、菊代とファ姉妹がバスに目を向けたそのとき。先導車の車種にもちろん目を奪われたが、観光バスの会社名に驚愕していった。
「“KKK”、だと……!?」
「マジすか! ヤバすぎでしょ!」
と、姉妹一緒に声をあげる。
新世界十字軍の動向など気にしていられるか、と言っている感じで、五八年型プリムス・フューリーの運転手のブロンド美女は鼻歌をしてニコニコしながら愛車と観光バス五台を隣の駐車場に入れて、麗華の誘導に従っていった。三列と四列の区画を使って、えらい慣れた手つきと動きで麗華は五台の観光バスを縦列に駐車させていく。さすがは自動車会社の社長夫人である。五台目の駐車を確認したとき、横溝警部は部下にひと言断って麗華とバスの方へと移動していく。そして、観光バスの社名に驚いていたのは、陰洲鱒の美女たちも同じであった。
「KKKだって!?」第一声は、潮だった。
「マジマジ? あの長く尖った刺々って、やっぱソレなの!?」
と、車体のペイントを指差す銀が続いて。
引いていく海馬。
「協力民間企業ってヤツでしょ。いくらなんでも尖りすぎよ……!」
「なになに? 助けた四〇〇人の女の子、あのヤバいヤツに乗せんの?」
流海に限っては、なんだかワクワクしていた。
リエは頬を痙攣させていく。
「麗華ちゃんったら、冗談キツすぎない?」
「もー。母さんたちってば。早とちりしないで。ほら、ちゃんと見て」
困った顔で、真海が車体の看板を指した。
彼女に続いて冷静だったのは、有子も同じであった。
「『Kita Kyushu Kanko bus shokai 』て書いてあるじゃん。株式会社 北九州観光バス商会。あたしがチアリーディング大会のとき、いつもお世話になっていたところだってば」
「あら。本当だ……。イメチェンしたのかな」
我が愛娘の指摘に気づいた潮。
海馬も、バスの変化に気づく。
「前、黒色の極太明朝体だったからねえ」
「真海ちゃんも、部活はチアだったものねー」
うふふ。と、流海も思い出していた。
このように和みはじめたところに、麗華が足を運んで来て。
「はーい。では、陰洲鱒の皆さんも私たちと一緒に避難移動してもらいまーす」
「え? 私たち全員?」驚きを表したリエ。
「あなた方は民間人です。ご協力は大変ありがたいですが、先ほどの爆撃機が今度も施設を狙うとは限りません。なので、ミドリさんの心を折られる前に彼女の“弱点”を無くします」
「ミドリちゃんを無敵にするんだ?」銀の質問。
「はい。いくら腕っぷしが強くても、娘さんにとってお母さんが被害に遭うのはメンタルが大いに削られます。場合によっては立ち直れなくなります。だからその弱点を取り除くことによって、彼女が好きなだけ暴れられることになるわけで、これで結果的に施設を占拠している侵略者たちを全滅させることが可能になると判断したんです」
「なんだ。それなら話しは早いじゃん」
有子が被せてきた。
「私たちが加勢すれば、早く片付くんじゃない」
真海も乗った。
「さすがに彼女ひとりじゃ負担が大きいわよ」
と、海馬が微笑む。
「アイツらを叩きのめすのと女の子たちの解放はさ、あたしらが請負うよ。だからリエたちは先に避難しててイイぜ」
そう言って、潮は親指で背後の宗教施設を指した。
その言葉に状況を目に入れたのちに、再び皆を見た麗華は。
「まあ、そこまで仰るならあなた方に期待しましょう。ーーーでは、海馬さんと潮さんたちは彼女の加勢をお願いします。そしてあとの残りの方々は、私とキャサリンの先導に付いてきてください。お願いします」
との、麗華が紹介した手刀の先には。
「ハーイ、みなさーん! ミーは、キャサリン・ルビー・ボンドでーす! これから淑女たちのお世話をしたりお世話になったりしますです。よろしくお願いしますネ!」
ハーイ!と天高く挙手した長身のブロンド美女。
キャサリン・ルビー・ボンド。四八歳。
アメリカ合衆国生まれアメリカ合衆国育ち。
元CIA職員で元リベロー従業員。リベロー解体で無職。
グレーの三つ揃いの膝丈スカート。白色のブラウス。
パールホワイトのスカーフタイがお洒落のワンポイント。
長女にジェシカ。長男のジミーと次男のジョニーは養子。
キャサリンのキラキラとした明るさに、陰洲鱒の美女たちは見とれていく。
「ねえねえ、麗華ちゃん。こちらの可愛い人はなに?」
ワクワクしていた銀。
麗華は、同僚というか部下の質問に答えていった。
「彼女? アメリカでリストラされたから、私が引き取ったの。ほら、護衛人ってこう見えても人手不足だし。いちおう、見習いとして私の部下になってもらいました」
「イェーイ。シーアイエーとリベロー、リストラされましたヨ! ミーは今はフリーターオバサンね! 皆さん、仲良くお願いしまーす」
「と、いうわけです」ニコニコしていた麗華。
「と、いうわけでーす!」ニッコニコなキャサリン。
あはは。と、笑い声を洩らした有美が。
「キャサリンさん、私と年近そう。ーーー麗華ちゃん。よくまあ、こんなマスコット見つけてきたよね?ーーーで、護衛人の私たちも付いてってなにするの?」
「先に避難している恵さん姉妹とその娘さんたちなどの、民間人の護衛に付いてもらおうと思って」
「ああ、そういうことね。了解」
「ありがとうございます」
そうして、海淵真海の家族と黄肌有子と潮を残して、各々の愛車やバイクの乗って移動を開始していった。このとき、駐車場を出ていく仲間たちに手を振っていった真海と有子たち。




