十八(了)
事件から数日後。鳴海は事後処理の進捗状況を確認するべく、0課オフィスへと足を運んだ。
今回の事件では重症を負うことこそなかったものの、『雷電』による体調の不良に加えて、全武装の装着を短いスパンで繰り返したことにより、やはり少しの間の休養を要求された。
因みに休養中にニュース番組で知ったことだが、事件現場周辺を不発弾処理の為と住民を避難させていたが、鳴海の『雷電』で起きた轟音と炎の所為で不発弾処理に失敗したとの憶測が飛び交っていた。0課にとってはありもしない事実を追いかけてくれた方が、妖関連の隠蔽が楽だからと放置しているらしいが。
報告は大よそのところを京一郎がやってくれたので、安倍を狭苦しいアパートへ再び出向かせることは避けられたが、やはり事件の当事者の報告は欠かせない。その為、体力の回復を待って改めて報告に戻った訳だ。
「失礼します」
一言挨拶を告げてドアを開けた鳴海を出迎えたのは、いつもの可愛らしい容姿の安倍。
ではなく。
「よう、鳴海。もう体は大丈夫らしいな」
「京兄!?」
京一郎が緑茶を啜りながら手を振ってきたのだ。
「何で? 確か今度は中国辺りに行くとか言ってなかったっけ?」
事件が終着した時、報告が終わり次第、次の地へ発つと言っていたはず。なんでこんな所でのんびり茶をしばいているのか。
「いや、それがよ」
「ワシが頼んだのじゃよ」
回答を出したのは今度こそ、彼の上司の安倍だった。
「近頃、ここ近辺に強力な妖の出没が目立っておるようじゃからの」
「それで、凄腕退魔士の俺に白羽の矢が立ったって訳よ」
得意げに胸を張る京一郎だったが、
「まぁ、素行に目を瞑れば役には立つからの」
安倍からは手厳しい一言が加えられた。彼の女癖の悪さは何とかしてもらわないと、退魔士業界における0課の評判を落としてしまいそうだ。
「ったく、可愛げのねぇババアだぜ」
「そういうところを直せと言うとるのじゃ! こんな“ぷりちー”な乙女をつかまえて!」
「何言ってやがる! 齢ウン百歳のどババアの分際で!」
やいのやいのと騒ぐ二人を前に鳴海はえーっと、と要約した一言を言い放つ。
「つまり、俺は京兄と一緒に闘えるってこと?」
「ん? おう。ま、そーいうこったな。これからよろしくな、鳴海」
安倍のグルグルパンチを頭を押えてかわしながら、屈託のない笑顔を向けた。
「へへっ! こちらこそ、京兄!」
鳴海も顔いっぱいの笑顔で応えてみせる。
(それに……お前にはまだ背負いっぱなしのモンが色々あるみてぇだからな)
鳴海がわざわざ警視庁に身を預けてまで為そうとしていること。
自分を兄と呼ぶときに一瞬だけ見せる、懐かしそうな顔。
鳴海自身は心配を掛けまいとしている所為か、上手く隠そうとしている。しかし、人生経験がそれなりに豊富な京一郎はそのことに気がついていた。
(せめて、荷物を軽くするくらいの手助けはしてやりてぇかな。なんせ、“兄”だからな)
「ふんっ!」
「ぐほっ!?」
心中カッコよく決めていた京一郎だったが、決めている間に出来た隙を狙い安倍のボディストレートが炸裂した!
「何すんだ! このババア!」
京一郎は安倍を捕まえようと逃げる彼女を追うが、小柄で身軽な彼女は簡単には捕まらない。
「やーい、うつけ者。美少女一人捕まえられんのか~!」
「くっそ! んの老いぼれがぁ……。テメェで美少女とかサラッと抜かしてんじゃねぇ!」
「ああ、二人とも落ち着いて。苦情が来ますよ……」
今まで静かだったオフィスが、少し騒がしいことになりそうだ。
鳴海は暴れまわる二人を、やや諦観めいた眼で眺め、静かにそう思った。
後ほど、苦情が殺到したのは言わずもがなか。
アーマード・オウガ第二章目を読んで下さった皆様、ありがとうございます。前回後書きを投降させて頂きました日より、随分と間が空いてしまいました。
私の投降速度はやはり遅いほうなのでしょうか。
いつまでもノロノロと更新をしていてはいつか皆様に忘れられてしまうのでは、と心の中で戦々恐々としております。だったら速度を上げろという話でございますね。
今回の二章目では味方のキャラクターを登場させるお話となりましたが、如何でありましたでしょう。
彼は、いぶし銀な兄貴分というイメージで考えているキャラクターですので、少しでも頼りがいがある奴だ、と思って頂けましたら幸いでございます。
また、二章目は少しエグめな表現の多いお話でありましたが、ご不快に思われた方はいらっしゃいませんか? もし、可哀想じゃねーか! と思われる方がいらっしゃいましたらこの場を借りてお詫び申し上げます。
さて、近頃は私事が少々忙しいものですので更新頻度は更に落ち込むことになるかもしれません。
ですが、見捨てずに拙作をのぞいて下さる皆様。いらっしゃいましたら、私はこれからも精進を重ねる所存でありますので、どうか宜しくお願いいたします。
最後にもう一度、拙い文章をご覧になって頂きありがとうございます。また次の機会にお会いできれば、と思います。
以下、本章のタイトルになっている“CRY THUNDER”を解説させて頂きます。もし、ご興味がおありでしたらご覧下さい。
一章のタイトルを音楽のタイトルより拝借致しましたので、以降もこれで縛ろうと勝手に自縛致しまして、悩みに悩みぬき“CRY THUNDER”と致しました。
“CRY THUNDER”はイギリスのメタルバンド(正式にはメロディックスピードメタルと仰るそうです)の“Dragon Force”の楽曲の一つでございます。“THE POWER WITHIN”というアルバムに収録されています。
このバンドは非常にスピーディで疾走感のある曲を多く作られていますので、そういった方向性の音楽がお好きな方にはピシャリとハマるかと思います。
さて、この“CRY THUNDER”という曲ですが、当然に洋楽なわけです。ですが残念ながら私はこの歌詞を的確に意訳できるほど英語能力に秀でてはいません。
そこで、CDに付属していた和訳歌詞と、違和感を感じたところを自力で訳しまして大よその概要をおまとめしました。
一言で申してしまいますと、『革命』でしょうか。悪の暴君を正義の剣と人々の団結によって打ち破る、と言った感じの内容にお見受けいたします。
如何でしょう。今回のお話は鳴海と京一郎が協力して強力な敵を打ち破っております。何処となく通じるところがあるかと思います。おまけに、タイトルに“THUNDER”=雷、歌詞中に“剣”と今回のお話のキーワードも含まれています。
とても丁度よい楽曲だと自己満足に浸りました。
曲の解釈に関しましては、もっとしっくり来るものがあると仰る方がいらっしゃいましたらお教え下さい。カッコいい和訳、お待ちしております。
では、今回のサブタイトルに関する言い訳もこの辺りで締めとさせて頂きます。
下らない駄文にまでお付き合い下さった皆様に最大限の感謝を申し上げます。
では、また次の機会でお会いできることを願っております。




