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アーマード・オウガ  作者: ハル
弐:CRY THUNDER
19/65

 京一郎は潰れた教会跡地を訪れていた。突然現れた男は黒鬼が現れるという場所を知っていると言った。その男が言った場所まで足を伸ばした訳だが。

(ハッキリ言って、胡散臭(うさんく)せぇな)

 都合がよ過ぎる展開だったのだ。何者かが自分を罠にかけようとしていると思った方が安全だろう。

 待ち伏せをしてこちらが逆に罠にかけてやるのが一番良いのだろうが、既に仕掛けられていた場合無駄な徒労(とろう)となってしまう上、彼自身が策を(ろう)することを望まない。

(何であろうと、正面からブチ破るだけだ)

 礼拝堂の長椅子に寝そべると、竹刀袋を脇に抱え、静かにその時を待った。



 欠伸(あくび)を噛み殺しつつ待つこと(しば)し、その時は訪れる。

 ――ギギィ……

 錆付いた音を響かせて、礼拝堂正面の大扉が開かれた。

(足音は……一人。気配も一人分か)

 椅子の背もたれに身を隠したまま京一郎は相手の戦力(この場合純粋な人数差)を分析する。もし罠だった場合、ぞろぞろと人数で押してくるかもしれないからだ。

 しかし現れたのは現実にたった一人。もしかしたら本当に黒鬼が現れたのかもしれない。相手に悟られないように慎重に背もたれから顔を出し、相手の様子を(うかが)った。

(へぇ……。どうやらビンゴだったらしい)

 現れたのは一人の青年。しかし、“普通の”青年ではないらしい。

 キョロキョロと慎重に辺りを窺うその両の目が金色に輝いている。まるで闇夜に(うごめ)く獣の眼。

 しかし最も特徴的なのはその右腕だった。西洋の甲冑に日本の鎧を足したような、特徴的な形状の装甲に覆われている。しかもその指先に並ぶのは鋭い爪だ。

 もしコイツが犯人なら、その目つきもなるほど、なんだか凶悪な気がする。

 決め付けはよくないかもしれないが、普通の人間が持っている訳もないものを装着している。事件に関わりがあっても可笑(おか)しくはない。大体、こんな場所に何の用があるというのだ。

 京一郎は勢いよく立ち上がり、その青年へと言った。

「おい、そこの不審人物! テメェがガキを惨殺した犯人か。言い訳があんのなら後でゆっくりと聞いてやる。取り合えず」

 彼は竹刀袋の紐を解き中に納まっていたソレを取り出す。

 刀。

 一言で言えばそれ。

 しかし、鞘から抜き放たれた刀は通常のものとは違う形状を持っていた。

 切っ先は西洋刀の如く諸刃になった所謂『剣』だ。

 だが、諸刃を構成しているのは剣の中程までで、そこから先は通常の日本刀の如く、(みね)を備えた片刃の形状。勿論、反りがある

 鋒両刃造(きっさきもろはづくり)

 この形状はそう呼ばれる特殊な造りであり、これはとある神聖な武器と同じ形であった。

 京一郎は刀を二三度振るい、風斬り音を響かせると、獰猛(どうもう)な笑みを浮かべた。

「後悔しやがれ、鬼野郎」

 そして、風の如く襲い掛かった。


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