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かくれんぼ

*←は視点変更を示します。


目が覚めると、いつもの教室にいた。




僕の名前はたちばな 千颯ちはや

いつも七時に起き、カーテンを開けて太陽を瞳に焼き付ける。

それから目玉焼きにベーコン、バターを塗ったパンを食べる。

そして玄関を開けて、学校に徒歩で向かう。

学校は近く、家からでも学校が見えてしまう。

学校に向かう途中、青空を見上げる。

僕はこの幸せが好きだ。

だから、人の幸せが壊れる瞬間が好きなんだ。


僕は教室の端の席で、青空を視界に入れる。

人と話すのは嫌いで、友達なんてものはいない。

ぼーっとしている間に時は流れ、下校の時間になる。

鞄を片手に持ち、

誰にも話しかけられることもなく、

学校から出ていく。

家に帰ると夕飯を食べ、

趣味なんて持たない僕は、少し早く就寝する。

それの繰り返し。

暇だとも思うし、

楽しいと呼べるものなんてない。

だが、幸せはこういうものなんじゃないかと最近は思っている。

ただ、「暇潰し」がしたいな。

そんな事を思いながら目を瞑った。

いつも通りの朝が来るはずだった。

だが、


目が覚めると、いつもの教室にいた。

いつもの机。

一瞬、夢か、はたまた学校で寝てしまったのかとも思った。

だが、そんな浅はかな考えは捨てられてしまう。

クラス全員、四十人がその場にはいる。

全員制服を着ていて、机に頭を向けて眠っている。

教壇には見慣れない、木で出来た仏像がでかい仏像が置いてある。

脳が状況を理解し終わる前に仏像が動いた。

「起きろ、ゴミクズ共。」

皆がその声で、ほぼ同時に顔を上げさせられた。

「なんだよ、これ。」

髪がオールバックの沖田 健が、

最初に声を上げた。

「なんだこれ夜じゃん、やばいな。」

いつも沖田と一緒にいる高杉 晴人。

髪をセンター分けにしていて背がかなり高い。

皆が騒ぎ始めた頃に、それを制すように声がする。

「今から暇潰し(げーむ)が始まる。」

仏像が表情一つ変えずにそう告げる。

映画だったら誰かが騒ぎ出したり、

帰ろうとするのだろう。

だが、誰も口を開くことはできなかった。

それほどに空気は冷たかった。

本能がこれは、ただ事ではないと告げている。

産毛は全て立ち、鳥肌が立っているのが自分でもわかる。

「まず第一の暇潰し。

かくれんぼ。」

仏像はそう告げた。

「は、なんだよそれ。」

皆が固まる中、沖田が口を開く。

「ルールは、学校全部を使った、

ただのかくれんぼです。

ただし、偽物の私を見つけた場合、

暇潰し終了げーむおーばーとなります。」

げーむおーばー?なんだ、それ。

薄暗い部屋の中で表情が変わらない仏像が、

少し、笑っているように見えた。

「ここは、皆さんの隠れ場所となります。

偽物は一体います、お気をつけて。」

「この暇潰し(げーむ)を、

頑張って見つけてくださいね。」

少しすると仏像が消え、黒板にカウントダウンがチョークで書かれている。

黒板の数字は、1分ごとに減っている。

00:59

そしてその数字の下に生き残れ。と強く書かれている。

「なんなのこれ!わけわかんない!」

妙な緊張感が解かれたからか相澤 絵美が騒ぎ出す。

「絵美、少し冷静になれ。」

沖田がパニックになる前に止める。

流石だな、

まさかこんな異常事態ですら冷静だとは。

僕は遠くからそれに感心する。

だが対して僕もそこまでパニックになっているわけではない。

「……やばいな。」

だがやはりパニックとはいかずとも冷静になれている人は少なく、高杉も語彙力を完全に無くしている。

「まず状況を整理しよう。」

沖田がそう言うと一人、手が上に伸びた。

「はーい、これってかくれんぼなんだよね?じゃあ、あいつを見つければいいわけだ。

じゃあ偽物ってなに?普通のかくれんぼにはないでしょ?」

白石 栞奈が当然出てくる疑問を皆の代わりに発言する。

「今はまだわからない、だが考えている時間もない。」

00:55

「今は早く、本物を見つけよう。」

「男子は一階からニ階、女子は三階を探そう。」

沖田がそういうと皆がゆっくりと教室を出ていく。

時間が00:50になった頃にはもう自分しか残っていなかった。

全員、このゲームを「理解」出来ていない。





俺は、沖田 健。

一瞬、自分の名前を忘れそうになった。


そうだ、

俺はこの学校が好きだった。

俺はこのクラスが好きだった。

俺はここにいる全員で卒業したかった。

神はそれを赦してはくれなかった。


鉄の錆びた匂い。

廊下は赤く染まる。

視界は歪む。

この瞳は、首のない死体を捉えている。

「ああああああああああ」

人生で、初めて大声で叫んだと思う。

「な、なんだよこれ。」

答えと言わんばかりに記憶が戻る。


偽物の私を見つけた場合、



「暇潰し終了げーむおーばー




00:35


生き残れ。



とにかく走った。

嫌な赤色を、

出来るだけ遠ざけるように走り続けた。


走った。赤が迫る。

走った。それなのに。

赤がまだ迫ってくる。

「なんなんだよ!これ!」

逃げられない。

頭を掻いた指先が、血で濡れていた。


「健!平気か?」

走って来たのは晴人だ。

「ああ、大丈夫だ、ありがとう。

お前が来てくれたおかげで少し、

冷静になれたよ。」

「そんなことはいい、近くの教室で休憩しよう。」

二年一組に俺たちは逃げ込んだ。

部屋の端の地面に座る。

「やばいな、これ。」

晴人は、小さく呟いた。

息を大きく吸う。

「よし、要するに偽物を見つけずに本物を探せってことだろ。

やってやるよ。」

「おっ、やる気が出てきたな。

健がやる気を出せば、出来ない事なんてない。

だって、いつもそうだったんだからな。」

立とうとすると晴人が何かを言った。

「だが死体が別の場所にあるってことは偽物は動いてるってことだよな?」

「ん?そりゃそうだろ。」

偽物は一体だと本人が言っていたし、

それ以外の暇潰し終了げーむおーばーは伝えられていない。

「じゃあおかしくね?」

「……なにがだ。」

晴人はたまに勘が冴える。

俺ですら気づかなかったことに、

簡単に気づいてしまったこともあった。

「隠れる側が動くっておかしいだろ。

それもうかくれんぼじゃねえよ」

それはそうだ、だがそんな事を言ってしまえば偽物がいる事自体。

まて、

「おい、晴人。」

「なんだよ。」

これが合っているとしたら。

「あの仏像、本物はいるって言っていたか?」

「うーん、よく考えたら言ってねえけど、

それがどうしたってんだよ。」

そうか、

「このゲームには、本物なんて存在しない。」

「は?じゃあなんだよ、クリアできねえってのか。」

「違う、あいつはなんて言ったか思い出せ。」

「そりゃ偽物を見つけてしまったら死ぬ、だろ。」

「そうだ、言われてないんだよ。」

「まてまて、それって、やばいだろ。」

ははっ、ふざけた暇潰しだ。

震える腕を、もう片方の腕で押さえた。

「本物を見つけろ、なんて言われてねえんだ。」

そして黒板に時間と一緒に書かれた文字は、

見つけろ、

ではなく、生き残れだ。

「じゃあ俺たちはどこに行けば。」

「それこそ最初に言われたさ、皆さんの隠れ場所は「ここ」だってな。」


00:20



息は絶え絶えになり、額から汗が垂れている。

「これでクリアか?」

晴人がそう言うが、まだだ。

「まだ、一つする事が残っている。」

「は?なにがあるってんだよ。」

「少し見てろ。」





僕は、橘 千颯は、

いつものように、端の席で空を眺めていた。

ちょうど時間が00:15になった時に、

二人組が勢いよく、前の扉から入って来た。

やはり、あの二人はクリアしたのか。


だが、せっかくクリアしたっていうのに、

なにか変な事を言っている。

「まだ、一つする事が残っている。」

沖田 健を高く見過ぎていたようだ。

これでクリアだ、することなんてない。

まさか、まだこの暇潰し(げーむ)がわかっていないのか。

沖田は息を整え、扉に近づき大声で叫んだ。

「みんな!!!もどってこーーーい!」

耳があまりの大声でキーンと響く。

そんなことをしたって意味なんてない。

どうせ、誰も生き残ってなんかいない。

そう、思っていたのに。

一人、また一人。

どんどんと人が集まってきた。


00:00



生存者34名  死亡者6名




「ゴミクズの皆さん、おめでとうございます。」

「第一の暇潰し(げーむ)お疲れ様でした。」


クラスメイトは、クリアしたっていうのに、

誰も声を出さず、床を睨んでいた。



だけどよかった、こんなにも生き残ってくれて。

君たちのおかげで、



もっと、「暇潰し」ができそうだ。




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