5.女神カナ
私はカナ。神と呼ばれる存在。
ある日、私が担当する知的生命体が存在する星の一つに、魔王の存在を確認した。
魔王は星を殺す。
だから、手遅れになる前に殺さなければならない。
そうは言っても、私が直接手を出す事は出来ない。
私が魔王を殺すとなると、生物の殆どが死に絶えてしまう。
私は管理する全ての知的生命体のデータを検索し、この世界と私が与える力に適応する者を探し出す。
天の川銀河太陽系第三惑星地球・日本国……・相戸勇気・20歳・男
私は、彼に力を与え、彼の地に送り出した。
勇気は、無事に魔王を倒してくれた。
そして、彼は六人の女と結婚する事になった。
子供が欲しいのね。
でも、この世界の人間と地球人の間には、子供は出来難いのよね。出来ても流産し易いし。
ああ。良い子が居るじゃない。
東の国の王女ナイティア。
彼女なら、相性抜群だわ。
問題は、勇気と結婚する東の国の王女は、ナイティアではなく叔母のアンジェリーナだと言う事。
だから、私は運命を操作する事にした。
勇気がナイティアと結婚する様に。
と言っても、大した事はしていないわ。
勇気達を恨んでいる女官を後宮に異動させただけ。
勇気は、アンジェリーナを嫌っている。
彼は、自分の役に立たない女が嫌いだから。
アンジェリーナを嫌いな勇気は、彼女の花嫁衣装に警備を付けない。
それを見た勇気を嫌いな女官は、勇気の婚約者のドレスを切り裂く。
花嫁衣装の替えが無いアンジェリーナは、嫌いな勇気への皮肉を込めて駄目にされたドレスを着て行く。
そんな彼女を見た勇気は自作自演と思い込み、アンジェリーナを国へ返す。
妹を追い返された東の国の王は、代わりに娘を嫁に出す。
もしも、勇気か女官が感情より理性を優先させる事でもあれば、運命は変わらないでしょう。
勇気の子供は産まれない。
さて、結果はと言えば、上手く行ったわ。
勇気はナイティアと結婚し、ナイティアは息子を産んだ。
それなのに、勇気は気に入らないみたい。
次の国王は、身分・血筋に拘らず優秀な者の中から国民投票で選ぶようにしようと言い出したわ。
果たして、勇気の思い通りに行くものかしらね?
確か、地球での民主主義化は百年位かかった筈だし。
三十年が経った。
色々あったわ。
勇気の妻が増えたり。
反勇者派が、勇気を暗殺しようとしたり。
国王の座を狙うある男が、ライバルとなり得る有能な者達を次々と暗殺したり。
そして、勇気は五十歳で退位する事となり、とうとう新国王選挙の投票が行われた。
結果は、勇気の息子が圧倒的支持で当選。
国王の血縁者が次の国王になるもの。
世界を救ってくれた勇者が建国した国なのだから、その血を引く者が次期国王に相応しい。
そういった考えを覆すほどのカリスマを持った候補者が居なかった事が、この結果を齎したのでしょうね。
勇気達はこの結果に不満なようだけれど、現在の民意なのだから仕方が無いわよね。
なんてね。
実は、私が操作したのよね。
どうして、そんな事をしたかと言うと……だって、勇気達は私を崇めないんだもの。
それだけならまだ良いけれど、見下しているのよね。
子供が無事に産まれるよう守ってくれないなんて役立たずだ、とか。
ナイティアに子供を授けて無事に産ませるなんて頭おかしい、とか。
だから、私を普通に信仰しているナイティアとその息子に、ささやかな手助けをしたの。
他の候補者達の汚職やスパイ行為や醜聞が、白日の元に晒されるように。
ね? ささやかでしょう?
最後までご覧頂きありがとうございました。
勇気は、建国出来たし・国家運営も大体上手くやりましたし、優秀ではあるんですよ。
女関連ではアレですが。