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異世界でなんでも斬れる剣を拾った  作者: チラシの裏の汚い妖精さん
一章 駆け出し冒険者編
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第8話 中二病でもニートがしたい

 

 

「えーそれではー。

 これより俺達の今後の方針を決める異世界緊急サミットを始めたいと思いますー。

 参加者は2名。

 サミットじゃなくてピロートークっていうんだよそういうのはねー」


 相変わらず橋の下で俺は頬杖をついていた。

 そろそろ流石に異世界らしい場所も見てみたいものである。

 これではただのアウステルリッツと変わらない。


「いや、絶対に違うと思うが。

 というか余韻もくそもないな。

 別に……構いはしないがな!」


「いやマジな話、これから何をするべきか何の当てもないのは本当なんだよ。

 いきなり異世界に召喚されてチートとか渡されても、夢いっぱいの中学生じゃあるまいしこれといってやりたいことはない!

 王様でも目指す?

 どう考えてもめんどくさいからヤダ!」


「身も蓋もないがまぁ、一理ある。

 私も王公の懐刀など退屈だ。錆びる」


 錆びるのアンタ。

 それ素材としてステンレス以下よ?


「だがどうする?私とてただの剣だ。

 使い方の指導は出来てもマスターの目的については名案などないぞ?

 一応、何か考えでもあるのか?」


「ない」


「…………いや……私にどうしろと」


 平野耕太作品の巻末と表紙裏に書いてある漫画みたいな顔をされた。


「それな。これといって具体的な目標は全くないが、まぁ基本方針みたいなのはある」


「ほう。貴様といえば行き当たりばったりの相がもろに顔に出ているような奴なので、正直言って意外だが私も似たようなものだ。

 考えがあるのなら聞かせてくれ」


「よかろう従者。

 まず俺は魔王を倒してヒーローだとか勇者になりたいとか、そういう願望はまったくない!」


「うむ。………………うむ?」


「伝説の剣を手に入れたからって剣の達人になりたいわけじゃないし、大魔法使いになる目標もない。

 ただ日々をのんびりだらだら自堕落に暮らしたい。

 それ以外の努力をするつもりなどない!」


「貴様が主で良かったと言ったな。

 あれは嘘だ。

 …………聞きたくなかった……」


「まぁまぁそう頭を抱えるな。

 今からそれだと、これから頻繁に繰り返す頭痛で死にたくなるぞ?」


「…………………」


 軽いジョークのつもりだったが、出荷される豚さんを見るような目で睨まれた。


「うそうそ、六分の一ぐらいはジョークだから。

 …………そう睨むなって。

 まあ俺もね?異世界まで来てニートはさすがにどうかと思うから、出来ることなら冒険者とかやってみたいとは思ってますよ。

 そこで質問なんだが、まず冒険者はこの世界に存在するのか?

 異世界ものなら定番なんだけど」


「貴様の思っているものと同じかどうかはわからんが、ダンジョンに潜ったり魔物を討伐して生計を立てる人間を言っているのなら、この世界ではありふれた職業だ。

 簡単な適正審査にさえ通れば誰でもなれるので、副業として資格を持つ人間も多いと聞く」


「ん。イメージと完全に一致しているような微妙に誤差があるような……。

 そんなに簡単になれるのか?」


「最低ランクの資格を持つだけならな。

 冒険者と一口に言っても、資格の発行や依頼の斡旋を同じ機関が行っているだけで、個々の実力はピンキリだ」


「出た!冒険者ギルドだ!」


「知らない癖によくわかるな。そうだ。

 冒険者の活動はギルドによって管理、支援されている。

 所属する全員がギルドのしきたりに従うわけではないようだが。

 資格だけ箔付けとして取って、盗掘者や密猟者紛いのことをする人間も一定数存在する。

 バレれば当然ギルドの名を汚す者として討伐対象になるがな」


「怖い先輩がいっぱい居そうで嬉しいなぁアハハ」


 乾いた笑いが出た。


「主が舐められるのは見た目と実力的に確定事項と言ってもいいが、他のごろつきどもとは比べ物にならない伸びしろがあるのも断言できる。

 これからの努力と成長しだいでいくらでものしあがれるさ」


「俺が嫌いな言葉は一に努力で二に頑張るなんだが」


 ジョジョ屈指の汎用性を誇る名言だと思う。


「知らん。

 冒険者になりたいなら良くも悪くも実力主義だ。

 どこの新人も派閥のパシりから抜け出そうと躍起になっている。

 上へ行きたいなら努力は必須科目だ」


「わかっちゃいたが異世界も世知辛ぇ……」


「ピンキリと言ったが、最上位には王家から直接依頼を持ちかけられるような連中もいる。

 マスターもそこに名を連ねるだけの潜在力、いや、それらを遥かに凌ぐ潜在力が眠っているはずだ。

 頑張れ」


「男の子の夢を叶えるためには、結局その単語が欠かせないのな。あーやれやれ」


 言いながら立ち上がる。


「別にギルドの管理下にないダンジョンに潜るだけならギルドに属さなくてもやれるぞ?

 どこにあるかわかれば、だがな」


「お前わかるのか?」


「残念ながら」


「知ってた」


 つまり冒険者ギルドに属するのは確定な。


「せっかく来たんだし、しばらく観光しようかと思ってたけど。

 先にギルドに行った方がいいかな?」


「別にどちらでもよかろう。

 冒険者資格の取得に関しては二、三日この街に拘束される可能性はあるが、どの道、その間にこの街を離れるつもりもあるまい」


「まだこの石橋の下から一歩も動いてないからな」


 この世界のことを知るためにも、しばらくは滞在したいところだ。


「そう言えばこの街の名前はなんて言うんだ?」


「ナーザルだ。

 別段大きくも小さくもない地方の一都市だが、教会がシルメリアを守護神として祀っている。

 それ以上のことは私も知らん。

 街の人間に聞くか、図書館に行く方が早い」


「……ふと疑問に思ったんだが、お前の知識量ってどのぐらい信用していいの?」


「戦い以外の事には常識的な知識しかない。

 私は魔導書グリモワールや知識書の宝具ではなく、神剣なのでな」


 別に博識ってわけでもないのね、という暗に込めた意図が伝わったのか、心外だと言わんばかりに鼻を鳴らされた。


「やっぱ観光から始めた方がいいかもなぁ」


 土地勘が全くないので、このままでは街から出るのにも苦労しそうだ。


「いや待て、その前にやるべき事があるだろう?」


「ん?」


 ちょっとした事だが、エルギヌスに言われてまず準備が必要なことに気がついた。



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