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異世界でなんでも斬れる剣を拾った  作者: チラシの裏の汚い妖精さん
一章 駆け出し冒険者編
25/33

第25話 初歩的なスキルから天下を取ろうと思う

 

「えーと、どれどれ・・・?俺が習得可能になったスキルは・・・」


 ステータス欄の下の方に新しくスキル名が浮かんできていた。


・強撃

・ステップ

・見切り

・硬直キャンセル


 この4つだ。

 剣士の初期スキルと称号によって取得できるようににったらしい、けど、硬直キャンセルってナニ?

 神剣の契約者なんて称号なら神聖魔法とかそういうのを覚えるべきなんじゃないの?


「よくわかんないのが混じってますけど、この中だと強撃か見切りがお勧めですよ」


「そのこころは?」


「まず先に私の知ってるスキル効果を説明しましょうか」


 ナツメさんの説明は冒険者の体験談とか混じって長うざかったので簡単にまとめる。


・強撃 名前の通り強力な一撃を繰り出すスキル。

・ステップ 名前の通り素早いステップで移動したり、攻撃を回避するスキル。

・見切り 短時間急所や弱点を狙って攻撃する力を上げる、いわゆる会心率を上げる感じのスキル。


「で、この三つの中でステップ以外の二つをお勧めする理由、ていうかステップをお勧めしない理由なんですけど、コスト対効果を考えてのことなんですね」


「ほう」


 なんかまともっぽいことを言い出した。

 伊達メガネも相まってナツメさんが名うての営業マンに見える。

 見た目って大事ですね。


「これらのスキル、というかアクティブスキルは基本的に全て発動するために貯蔵魔力=MPを消費します」


 覚えたらそれで使い放題じゃないってことね。


「で、この三つは大体どれも消費MPが同じなわけなんですが、低レベル帯の前衛職のMPだと精々一日に5、6回。多い人でも8回ぐらいの発動が限界です」


「まぁ考えて使わないとちょっと不安が残る使用回数ですかね」


「でしょう?で、ステップと他の二つのスキルの違いは攻撃の為のスキルか、防御の為のスキルかということです」


「んー。でもステップで敵の後ろに回り込んだり、攻撃的な使い方も出来るんじゃ?あと俺の経験だと、前衛はある程度防御も意識しないと後衛を守れない気が」


「確かにお客さんの言うことも一理ありますが、ネックになるのは使用回数とレベル帯です。まず使用回数についてですが、先程も説明した通りそう何度も連発できるわけじゃありません。ということでステップを考えると、防御に使うならそこそこ優秀なスキルなんですが、攻撃に使うのは中途半端な性能と言わざるを得ません」


「そう?間合いを制するものは戦いを制する的な達人の言葉をよく聞くけど」


「達人だから言えるんでしょうね。あの人たちはお互いに当たれば死ぬことありきの世界ですから。だって考えてもみてください。これから敵のレベルが上がると、敵もこれまでのフルチンのゴブリンと違って鎧を身に付けていたり堅い外殻で覆われてたり剣を四本持ってこっちの攻撃を弾いてきたり、とりあえずどこでも当たれば斬れるという状況は減ってきます」


「最後のはそんなに出会う機会なさそうなんだけど」


 まおうのつかいですか?その辺をうろついててたまるかんなもん!

 でも鎧を着てるというのは確かにそうだ。

 だってホブゴブリンが既にそうだったもん。


「魔法の使えない剣士としてこれらの敵を倒す為には鎧の上からぶったぎるか、隙間を狙って剣を通すかの二通りになります。つまりそのまま強撃か見切りの効果を使うのです。ステップで華麗に攻撃を回避して、相手が態勢を崩したその隙に攻撃するというのは確かに格好いいし剣士の理想像ですが、フルプレート着込んだ相手に果たしてその戦法が通用するでしょうか?」


「こっちもやられないけど相手も倒せない。そしてステップには鎧の防御と違って使用回数制限がある。ジリ貧の形になるわけか」


「そういうことです。このジリ貧を防ぐ為にステップ使いのような防御型の前衛は自分を盾として相手の攻撃を引き付け、後衛に攻撃を任せるという戦略があります。これはむしろ上位のパーティになるほど正着となる戦略でしょう。ですが問題はこのレベル帯における後衛の火力です」


「え?低いです?」


 俺の頭にはまずクレアの鬼神のごとき活躍が浮かんでしまう。

 俺レベルの冒険者としてまず彼女を想像するのが間違いだと分かってはいるが、どうしても最初に見た後衛の印象が強烈すぎる。

 すりこみというやつだな、うん。


「単体火力なら問題ありません。が、問題と言えるのは全体、範囲攻撃能力の欠如です。お客さんのレベル帯で範囲攻撃魔法を放てる魔術師は多くありません。放てても一発がせいぜいですので、よほど精神力が高く一撃のもとに敵を壊滅させる自信でもない限りはスキルポイントを他に回そうとするからです。半端に敵が残った状態で魔力切れでうずくまった魔術師が出てご覧なさい、餌食もいいところです」


「紅魔族随一の爆焔魔法使いさんの話はやめて差し上げてください」


 彼女は当たりさえすればだいたいワンパンできる火力はあるけどな!


「全体攻撃、範囲攻撃に欠けるということは、後衛が一匹ずつ敵を処理する間ずっと敵を引きつけておく必要があるということです。使用回数の限られたステップで。それをやり通す自信がありますか?それならむしろ多少の反撃を覚悟の上で強撃や見切りで自分も敵の数を減らし、素早く敵を倒してからゆっくり回復してもらったほうが安全かつ現実的だと思いませんか?攻撃は最大の防御ということです」


「なるほど、きちんと考えた上でオススメされてるのは分かりました」


 俺にとって意外も意外である。

 犬に噛まれたと思って忘れようと思っていたのに。


「俺のスキルポイントは15、初期スキルは全部5ポイントずつ、硬直キャンセルが10ポイントか。初期スキル一辺に全部取ることもできなくはない、と。ねえ、この硬直キャンセルについては何かわからないんですか?」


「うーん、似たようなスキルを知ってるんですけど、本来ならもっと高レベルで覚えるスキルなんですよねぇ。これもバグっぽいから止めといた方が・・・」


「効果は?」


「スキルを使うと必ず、わずかながら硬直という無防備な時間が発生します。本来の体力を超える強力な一撃を繰り出した代わりに、反動で一瞬体が動かなくなるんですね。上位の戦闘技能をお持ちの冒険者はこの硬直を他のスキルを使うことで無理矢理なくして次の動きに繋ぐことがよくあります。これをスキル連係と呼んだりします」


「俺の知ってるゲームと違わない」


 ・・・そんな世界もあるさ。深く考えるのは止そう。


「基本的に連係はあるスキルから他のスキルへ繋ぐということは出来ても、同じスキル同士で硬直をなくすことはできません。一度使用したスキルは硬直時間とは別に、再使用するのにも少し時間がかかるからです。が、硬直キャンセルのスキルは使用することで硬直時間とスキルの再動までの時間を両方無くし、MPの許す限り連続でスキルを使用できます」


「お。便利そうなスキルですね」


「・・・うーん。いえ、私はそうでもないと思いますねぇ。このスキルは燃費が凄く悪いんですよ。硬直キャンセルはキャンセルしたい技と同じMPを消費することで初めて硬直を無くし、次のスキルを発動できます。つまり発動する度に毎回一回分余計にMPを消費するんですよ。他のスキルを使うより連続でそのスキルを使いたくなる必殺技のMPをキャンセルする度に払ってたら、化物みたいな賢者でもない限りあっという間に息切れするのが目に見えてます」


「ふむ。瞬発力はあるけど継戦能力が低すぎると?」


「そういうことですねぇ。ボス一体を瞬殺すれば勝ちみたいな滅多にないシチュエーションならともかく、ダンジョン潜ったりするようなよくある状況で使い勝手が悪すぎるんですよ」


「なるほどなるほど」


「ご理解いただけたようなんで、次は強撃と見切りのどちらがお客さんに向いてるかなんですけど。この判断が結構難しいんですよねえ。ま、そこは私の長年培った経験の見せ所というか・・・」


 さらに語ろうとするナツメさんを放置して、俺はスキル欄に二つ丸を付けた。


「あ、あれ・・・?気が早いなぁ。二つですか、もしかして強撃と見切り両方取った?その選択肢もありっちゃありですけど、今度クラスチェンジしたときとかポイントの重いスキルが出てきたときとかが・・・は?」


 マグロみたいに黙ったら息できなくなって死ぬんだろうかと思うぐらい喋り続けるナツメさんだったが、俺の取得したスキル欄を見てついに絶句した。


「・・・・お客さん、私の話聞いてました?」


「聞いてたし仮に聞いてなかったとしてもあんたにだけは言われたくねーよ!」


 口を半開きにしてこっちをみるナツメさんに本日一番力の入ったツッコミをいれた。


 俺のスキル欄で丸が付いている二つは、まぁ勿体ぶらずとも、賢明なる読者諸兄なら既にご想像の通りかも知れない。


 ステップと硬直キャンセル、あるいはこの二つで俺は天下を取れるかもしれない。

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