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異世界でなんでも斬れる剣を拾った  作者: チラシの裏の汚い妖精さん
一章 駆け出し冒険者編
24/33

第24話 クラスがえしました

 

「さて、それではこのたびは目出度くレベルアップの儀式も終わったことですし、レベル面談のお時間と参りましょうか」


 どこからともなく伊達メガネを取り出したナツメさんは、俺に何も書かれてない羊皮紙を手渡してきた。


「え・・・?レベ・・・何?」


 意味のわからない胡散臭い単語が多すぎて、俺の表情筋がそろそろひきつけを起こしそうだ。


「はい。レベル面談とは、レベルアップさせたらそれで終わりという他の味気なく素っ気ないレベル屋と違いアフターケアを大事にする当店独自のシステムでして。レベルアップしたてで右も左もどこにスキルポイントを振っていいのかもわからない迷える子羊に、熟練のレベル屋がこれまで様々な冒険者を見てきた経験を活かしてスキルポイントの割り振りなどをアドバイスするサービスです」


「ありがた迷惑って言葉知ってますかアナタ」


 すごくいらないシステムだった。

 こんな適当を絵に書いたような人に今後の活躍を左右されそうな相談をしたくない。

 というか俺は本当にあんな茶番でレベルアップしたのだろうか?


「まあそうおっしゃらずに、まずは騙されたと思って私の話を聞いてください」


「出会いからこの瞬間まで騙され続けてる気がするから言ってるんですけど」


「それではまずお手元の羊皮紙をご覧下さい」


「本当にひとの話聞かねーなこの人!?」


 一応言われた通りにするがもちろん羊皮紙には何も書いてない。

 渡された時にぱっと確認したっつの。


「クロミミ、クロミミ、ミミミルカ!イアイアハスター!寛容なるクロミミ様よ、この迷える子羊の御前

に、神々の秤を垣間見せたまえー!」


 さっきからその呪文いちいち邪神に祝詞を捧げる必要皆無だよね!?

 とツッコミたいが喜ばせるだけな気がしてきたので無視する。

 するとなんと、羊皮紙に文字が浮かんできた。

 しかも協会の鑑定符で一度見た俺のステータスのようだった。


 上杉紫藤〈シドー・ウエスギ〉 Lv1→6


称号:神剣の契約者

クラス:村人


HP24/24→62/62

MP6700548743/7201114514→72億/75億

攻撃力:計測不能(神剣使用時)→計測不能

防御力:14→28

敏捷:10→17

精神力:18→25


スキル:魔力異常生成(異能)

    知神の加護

    魔力供給



「う、うわ・・・本当に俺のステータスっぽいのが表示されてるし・・・」


 どうやら詐欺というわけではなかったらしい。

 自分で言うのもなんだが、俺の無茶苦茶なステータスをあらかじめ魔法か何かで羊皮紙に入力しておくのは無理だろう。


「んーどれどれ?」


 ナツメさんが手をかざすと彼女の前に鑑定符使ったときみたいなステータスウインドウが現れ、彼女は台に頬杖をついてそのウインドウをプラスチックの板か何かみたいに引っつかんで眺めた。


「・・・・え?」


 俺は目を手で拭ってからもう一度その様子を眺めるけれど、何の見間違いでもない。

 ごく自然な流れで彼女はそれを行ったがいろいろおかしい。

 俺の前にいるのはデッドプールか何かだったのか?


「え?そ、それ触れられるんですか?ていうか他人のステータスって見れないんじゃ?」


 俺が鑑定符を使ったときはステータスウインドウは空中に浮かんでいて、触ろうとしてもすり抜けた。

 空中に投影されている感じだったのだが。


「ん?まあ普通の人には触れませんけど、心が清くて高レベルかつ才能のあるレベル巫女にだけ触れます。他人のステータスも特別なスキル持ちのレベル巫女なら閲覧可能なわけですよ」


「いや、それ心が清いのくだりいりませんよね?」


 金斗雲かよ。どう見ても貴方の心は清くありません。

 清い人は客の前で頬杖つきません。

 ていうかその説明だとまさか、目の前にいるこの人はレベル屋的に結構有能なのだろうか?

 認めたくない。

 最近起こったことの中で、自分が死んでる事と無茶な設定のチート人間だったことの次ぐらいに認めたくない。

 シルメリア様が金だけ渡してとんずらした事より認めたくないランク上位だ。


「しかしお客さんのステータス、なんですかコレ?」


 ・・・・・・あ。


「おかしいなぁ、バグってるのかなぁ?オラ直れ、女王様が折檻してやるからありがたく機嫌を直せ!」


 手に持ったステータスウインドウの角を斜め45度の角度でバシバシ叩くナツメさん。

 薄型液晶テレビかなんかか!やめろォ見てる方が壊れないか心配だ!

 あれを漫画で見たからって実際の精密機械に施してもトドメの一撃にしかならねーんだよ!ルーペとピンセット使ってネジ嵌めるような精密機械に衝撃与えて状態が良くなるわけねーだろうが!


「うーむ、直らない。ちょっとお客さんの方も見せてもらえますか?」


 そう言って俺の手から羊皮紙をひったくるナツメさん。


「うわ、こっちもかー。すんませんねお客さん、ちょっとクミロミ・・・じゃないクロミミさまが機嫌悪いのかも?後でお供え物が必要かなぁ」


 クロミミ様の『え?違う違う私じゃない』という声が聞こえてきそうだ。


「そ、そうですか。じゃあ仕方ないんで僕はこれで・・・」


 お互いの調子悪いんじゃ面談もクソもないよなぁ。という体で席を立つ。

 が、その腕をがっしり掴まれた。


「まぁまぁ、一部おかしなところもありますけど、それ以外はだいたい真っ当ですし私もこの仕事長いんでこのぐらいなら脳内補完でご相談にお答えできますよ」


 だからいらねえっつーてんだろがァ!?

 無理やり振りほどこうと思ったがびくともしない。

 なんだこれ!?レベル差あり過ぎてステータスがおかしいのか!?

 少しの間お互い笑顔で腕をギリギリミシミシいわせていたが、どうもこれは逃走不可のボス戦だったようなので俺はため息をついて再び席についた。


「それでは改めて。なかなか大した勢いでレベルアップなさったようですがお客さん、ちょっとステータスの伸びが悪いですねえ。HPと防御力はそこそこですけど他がねえ」


 その二つ抜いたら残りのうち半分はバグってることになってるステータスなんですが。


「やっぱり冒険者なさるのならクラスが村人のままなのは良くないと思うんですよ。さっきの二つ以外は全然ステータス伸びませんから。早めにクラスチェンジなさるのをオススメします。戦闘用のスキルも覚えられますし」


 案外まともそうな助言だった。


「ちなみに当店ではクラスチェンジも可能でして、お客様のレベル帯ですと別途100ルカでご要望にお応えしております」


 前言撤回。ただの営業への誘導だった。

 しかし相場がわからないのでは安易に断ることもできない。


「クラスチェンジなさいますね?」


 せめてなさいますか?って聞けよ!なんで断定口調なんだよ!

 本当にこの人の言う通りにしていいのか非常に悩むが、他にあてがないので渋々クラスチェンジしておくことにした。


「・・・・・・はい・・」


「それではそれでは!クロミミ、クロミミ、ミミミルカ!イアイアクトゥグア!強壮たるクロミミ様よ!この迷える子羊に心機一転!新たな道への門扉を開かせたまえー!」


 相変わらず適当な呪文だ・・・。と遠い目をしていると、また頭の中に舌足らずな女の子の声が響く。

 やっぱりクロミミ様の声なんだろうか?


『シドーは剣士にクラスチェンジした。レベルがリセットされた。

 剣士の初期スキルをいくつか取得可能になった。

 称号:神剣の契約者の効果により、“硬直キャンセル”のスキルを取得可能になった』


「・・・・・お?」


 とうとうスキルキタコレ!

 村人でレベルアップしても覚えなかったのに剣士にジョブチェンジしただけでスキル覚えるのか!

 村人の存在意義ェ・・・。


「おめでとうございます。クラスチェンジが完了しました。じゃ、はいこれ」


 ナツメさんから何やら青い羽ペンを渡される。


「なんですかこれ?」


「剣士にジョブチェンジしたならいくつかスキルを取得可能になったでしょう。このレベル屋ペンでスキル名に丸をつけることで、スキルポイントを消費してスキルを習得できるのです」


「おお・・・!なんかそれっぽい!このお店に来て初めて納得のいくシステムに出会った気がする!」


 ちょっと安っぽいけど。


「今回は特別に無料でお貸ししますので、どうぞスキルを習得しちゃってください」


「本来はカネ取るのかよ!」


 まったく、がめついわ胡散臭いわ話進まないわで頭の痛いことだらけである。




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