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問題編 #4

 田代は激昂して、長瀬の襟を掴む。

「いい加減にしろよ、これは警察の仕事だろ!」

「もしいきなり目の前で友達が捕まったら、田代は信じることができるの?」

 田代は、うっと言葉に詰まる。長瀬の襟を掴んでいた手を離す。

「私、長瀬に協力する」と、傍らの竹井が手を挙げる。

「このまま警察に任せたら、いきなり友達が犯人って言われても納得できないと思う」

「ありがとう、竹井」と、長瀬がにっこり。

 周りの人たちは、お互いの顔を見合わせる。

「俺も賛成だ。どうせ警察は、子供には心理的負担が大きいとか変な理由をつけて、あまり具体的に説明してくれないだろうし」と、井伊。

「自分たちでもきちんとけりをつけたいわね」と、羽生。長谷川も、黙って手を挙げる。

「僕も賛成」と、三ツ矢。

「その僕、何とかならないの」と、中沢も手を挙げる。

「さて、残りはお前だけだ」と、北条。

「うっ、うるさい!」

 田代がそう叫ぶと同時に、ポケットの携帯電話が鳴る。それを取り出して操作していた田代は、いきなり顔を真っ青にしてばたんと携帯電話を閉じる。

「おい、長瀬」

「何?」

「今朝、菅野から、面白いものを見せるからあの木を揺さぶって来いっていうメールが来たから揺さぶったら、上から落ちて来たんだよ」

「そのメールが来たのは何時ごろ?」

「7時過ぎだ」と言って、田代は立ち上がる。

「し、しっかり刑事に伝えろよ!」

 田代は動揺しているようである。

「どこ行くの?」と、羽生。

「トイレ、漏れそうなんだ」

 田代はそう言って、走って会議室を出る。

「あのメールは犯人が送ったものだとすると‥‥」

 長瀬が独り言のようにつぶやいていると、会議室に是永が、ゆっくりとした足取りで入って来る。

「どうしたの?」

「あっ、是永、終わったんだ」と、長瀬。

「うん、で、次は誰が行くの」

 是永がにっこりとそう言うと、三ツ矢が「僕が行く」と言って、会議室を出て行く。

 是永は長瀬の隣に座って、尋ねる。

「何の話をしていたの」

「いろいろあって、僕たちで解決できないかなって」

「犯人を知ったら、警察がいきなり発表するよりもショックを受けるかもしれない」と、神田先生。

「詳しくは説明できませんが、僕には警察よりも早く見つけなければいけない事情があるんです」と長瀬が反論する。神田先生はため息をつく。

 突然、どこからか携帯電話の着信音が聞こえてくる。

「誰?」

 みんなは辺りを見回す。

「あわ、あわ、」

 是永が慌てた様子で椅子の下のカバンを持ち上げて携帯電話を探している。着信音が鳴り止むと同時に是永は携帯電話を取り出して操作する。

「えっと」

「どうした」

 井伊が尋ねると「田代君からメールが来ました」と是永。

「見せて」

 長瀬が言うと、是永はばっと携帯電話の画面を長瀬に見せる。田代からのメールで、内容は「大切な話があるので4階に来てください」。

「勝手に行くのは」と長瀬。

「ちょっとだけなら大丈夫、うん、安心して」と是永は言って、携帯電話をポケットに入れてそのまま会議室を出て行ってしまう。

 それを見届けて、長瀬は立ち上がる。

「先生」

「何ですか」と神田先生。

「菅野の死亡推定時刻を教えてください」

「それはできません」

「言える限りの情報、みんな言ってください。奥田は階段で殺されましたよね?」

 神田先生は、大きく目を開く。

「それは、この私でも初耳です」と、神田先生。辺りはざわっとなる。

「おい、長瀬!どうして奥田が死んだって分かるんだよ」と井伊が長瀬の肩を押さえる。

「まだ断定はできないけど、奥田もおそらく七不思議になぞらえてどこかで殺された。菅野が1番目、川野が2番目、昨日の骸骨が3番目だとすると、奥田は4番目の屋上手前の階段。違いますか?」

 神田先生は黙っていた。長瀬はさらに言う。

「まだ5番目と6番目がある。僕の勘が正しければ、この連続殺人はまだ終わってなんかいません!」

「大人には、子供の戯言に付き合う義務はないのですよ。こんな場面ではなおさらです」

 神田先生はそう言ってため息。

「そこをなんとか」

「もうよしとけよ」

 井伊が後ろから肩を叩くと、長瀬は握りこぶしを机にぶつける。

「くそっ」

 その時、またもや電話の着信音が鳴り響く。

「あっ、俺みたいだ」と、北条がポケットからそれを取り出す。

「っ」

 そのメールの内容で北条は顔を真っ青にして立ち上がる。

「ちょっとトイレ」

「北条?」と、長瀬。

「ううん、おなかが痛いだけ」と北条が言うと、長瀬は立ち上がって「僕も一緒に行く」

「駄目だ」

 井伊が長瀬の横に立つ。

「どうして?まだ田代も是永も戻って来ていないんだよ」

「長瀬」

 井伊は一呼吸置いて続ける。

「お前は俺たちの知らないことを知りすぎている。洞察力があまりにもありすぎる。だから心配なんだよ」

 長瀬ははっとして、周りを見回す。友達が自分に向けている視線は、冷ややかだった。

「な?これ以上お前の身の回りで何かが起きたら、犯人にされる立場なんだよ」

「うっ」

 長瀬は舌を噛んで、どすっと座る。

「安心しろ、俺が行く」と、井伊は北条を連れて会議室を出て行ってしまう。

「くっ・・・」

 うつむいている長瀬の隣に座ってきた竹井は、長瀬の背中をさする。

「大丈夫、あたしは疑っていないから」

「竹井」

 長瀬は、顔を上げる。

 ん?そういえば、犯人はどうして1番目と2番目を後回しにして3番目だけを先に実行したんだろう。長瀬がそう思っていると。

「次は誰?」と、三ツ矢が会議室に入って来る。

「じゃあ」と、羽生が手を上げて席を立つ。

 羽生が行ってしまうと、三ツ矢は廊下側の席に並んで座っているみんなの反対側である窓側の席に座った。

「梢」

 竹井が慌ててそちらに駆け寄る。

「梢、いきなりどうしたの」

「竹井」

 三ツ矢は、隣に座ってきた竹井をじろじろ見る。

「どうしたの」と、竹井。

「ほっといてあげなよ」と、中沢。その隣の長谷川は、黙って本を読んでいる。

「静かに」と、三ツ矢が手を叩くと竹井はびくっと反応する。

「これは刑事から聞いた情報だから」

 三ツ矢の言葉に、みんなは息を呑む。

 菅野の死亡推定時刻は午前2時ころ。死因は毒によるもの。半袖のシャツには、何枚かの葉が付着。

 校内には防犯カメラがあったが作動は5時以降で、問題の木には一組の男女と田代と見られる人以外誰も近寄らなかった。また、いずれも人の体ほどの大きい荷物を持っているようには見えなかった。

 川野は体育館倉庫の中のバスケットボールの箱のそばで発見。死因は菅野と同じ成分の毒による発作、またボールの箱の蓋に前もって毒針が仕掛けられていた。死亡推定時刻は6時半頃。いつも川野がバスケの練習を始める時刻である。

 奥田は屋上手前の階段の最頂段で発見。五寸釘を心臓付近に刺すことで返り血を軽減したと見られる。また倒れていた奥田は、死亡寸前に漢字の「旧」を書いて右手で隠していた。死亡推定時刻は、6時半から7時までの間。

「どうしてそこまで詳しく聞けたの」

 竹井がぞくっとしながらも尋ねると、三ツ矢はうつむいて立ち上がる。

「よい子は、今はまだ知らないほうがいいよ」

 そう言って、ちらと長瀬を見る。長瀬は、うつむいていた。

「ちょっとトイレに行きたいわ」

 中沢がそう言って立ち上がると、長瀬が一言。

「できるだけ複数で行動したほうがいいよ」

「何でよ」と、中沢。長瀬は立って、勢いよく放つ。

「4階に行こう、5番目と6番目が危ない」

 三ツ矢は、にこっと微笑む。

 それと同時に、窓の外に何かが落ちた。

 会議室の窓の外には25メートルくらいの幅の灰色のコンクリートの地面が沿って続いていて、その3段の段差の向こうにはグラウンドがあり、火だるまになったそれはコンクリートの地面に落下した。

「!?」

 みんなは思わず、そちらを見る。

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