DAY2ー7
――椎名さんはそこまで話すと苦笑した。そして「麗子ちゃんあの子と仲良いからこんな話されても困るよね?」と言った。正直困る。でも……。椎名さんがそう思っているであろうことは私も知っていた。だって……。この話はバネちゃんから既に聞いていたから。
だから私は「大丈夫だよ。そんな気はしてたから」と答えた。無理に取り繕う必要もない。そう思ったのだ。
「……そう言って貰えると助かる。ありがとね」
椎名さんはホッとしたように言うとカフェミストに口をつけた。そのつけた唇は妙にみずみずしく見えた。まるで熟れた桃みたい。そんな風に感じる。
「バネちゃんもねぇ。あれで結構繊細だからね。たぶんだけど……。天音ちゃんのことで一気に折れちゃったんだと思う」
そう。赤羽可憐は見た目に反してかなり繊細な人間なのだ。一見すると何事にも動じないように見られがちだけれど、その内面は私や椎名さんよりずっと傷つきやすいのだと思う。
「だよね。私もそんな気はするよ。まぁ……。本人が幸せならそれで良いんだけどね」
椎名さんはそんな心にもないことを言った。そして「できたらまた一緒に共演したかったんだけどね」と本心を漏らした――。
「そういえば麗子ちゃんはこれからもトライメライにいるつもり?」
思い出話が一段落すると不意に椎名さんにそう聞かれた。私はそれに「今のところはね」と当たり障りなく返した。正直将来のことなんて分からないのだ。もしかしたら一生いるかもしれないし、来週には退職しているかも……。それくらい不安定な職場だと思う。
「そっか。あーあ、麗子ちゃんにはこっち側戻って来て欲しいんだよね。ほら、麗子ちゃんって芸能向きじゃない? 人当たりも悪くないし好感度だって良いからさ」
「……フフフ、ありがとう。お世辞でも褒めてくれて嬉しいよ」
「いやいや、本当だよ! だからさぁ。麗子ちゃんが引退決めたときに私もあの仕事回したわけだし」
椎名さんはそう言うと戯けたみたいに両手を頭の上に載せて動物の耳みたいにした。動物……。いや、これは明らかにキツネの耳だ。
「ああ、そうだったね……。最後にあの仕事できて本当に良かったよ」
私はそう返すと「ふぅ」と軽いため息を吐いた。そして「あれだけは受けないわけにはいかないからね」と続けた――。




