第39話 オブシーンを捕まえろ(6)
「……黙っててもいいけど、キミが万引きしているところはカメラで撮っていてね。これが表に出たら、大変なことになるなぁ」
ずっと黙り込んでいる綾乃にしびれを切らしたのか、マツダが仕掛ける。僕は有城さんのために復唱しつつ、片瀬さんに近付く。
「あれっ、マツダってカメラ使ってましたか?」
「ううん、使ってるところは見てないよ。ブラフだと思う。どこかに小型カメラを仕込んでる可能性はあると思うけど……」
どうだろう。今は無音で撮れる小型のカメラもあるだろうから、マツダが真実を言っているのか判断できない。それに、カメラがどのことを指しているのかわからない。スマホとかのカメラなのか、スーパーの防犯カメラのことなのか。
――そこまで考えたところで、ひらめく。
「ごめん綾乃、ちょっとマツダに聞いてみてくれないかな? 『もし撮ったのなら、証拠を見せられますか』って」
綾乃に指示を出す。そして自分の考えをみんなに伝えるために、僕は続ける。
「もしマツダがS.G.Gとして、正当に万引き犯を捕まえるつもりなら、そのままスーパーに戻るはずです。なにせ防犯カメラに映る位置で万引きしたんですから。だからもしマツダがスマホとか、自分で撮影した写真を見せてきたら、その時点でオブシーンの可能性が高いと思います」
僕たちGメンは、いちいち万引き犯の犯行現場を写真で撮ったりはしない。防犯カメラがあるならそこに映ってるし、もし映っていなくても、窃盗品という物的証拠があるから問題ない。相手にバレるリスクを背負ってまで撮影するメリットがないのだ。
しかしマツダがオブシーンなのであれば、自分で犯行現場を撮影するしかない。やましいことをする以上、スーパーには戻って防犯カメラを確認できないからだ。
「――証拠はあるんですか? 撮ったっていう」
綾乃が僕の指示どおり、マツダにそう訪ねる。さっきの説明は綾乃も聞いていただろうから、意図は理解してくれているだろう。
「――もちろん。ビックリして、思わず撮っちゃったからね」
マツダが言う。動じなかったということは、実際に綾乃の犯行現場を撮っていたのだろうか?
「マツダがスマホを取り出した。あやのんに見せてるから、多分本当に撮ってるっぽい」
有城さんが状況を説明してくれる。片瀬さんの話だと撮影はしていないってことだけど、何かしらの機械を使って撮影したのだろうか?
「綾乃、本当に写真撮られてる?」
僕が質問をすると、綾乃の咳払いが一回聞こえてくる。肯定、つまりは実際は写真を撮られている。
しかし今この状況で『どうやって撮ったのか』を考えるのは意味がないことだ。そんなの、あとで考えるなり、マツダに直接聞けばいい。
問題はこの状況で『どうやればマツダがオブシーンだと断定できるか』だ。自分で写真を撮っている。その時点でクロ濃厚ではあるが『偶然立ち寄ったスーパーで、防犯カメラが稼働してるかわからないから自分で撮影した』と言われたらそれまでだ。




