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第32話 オブシーン、襲来(2)

 などと雑談をしていると、防犯カメラのモニターからピーっという機械音が聞こえる。AI顔認証システムの通知機能音だが、身構えていなかったのでビクッとする。


 モニターに目をやると、顔認証システムに登録した人物の来店を知らせる通知が表示されていた。画面にはその人物の顔と名前が表示されている。そして項目欄に『S.G.Gメンバー』と書かれているのを見て、思わず息をのみ込む。


「片瀬さん、これ」


 僕が言うまでもなく、片瀬さんは僕の後ろでモニターを見つめていた。そして同じようにS.G.Gメンバーの来店を知らせる通知であることを確認すると、テーブルに戻ってノートパソコンのキーボードを叩き始める。


 セキュリティの関係上、S.G.Gのデータベースには特定の端末からしかログインできない。きっとデータベースに入るためにテーブルに戻ったのだろう。


「……もしかして、オブシーンってこと……?」


 今まで読書にふけっていた綾乃が、いつの間にか僕の後ろに来ていた。


「まだわからない。機械の誤作動かもしれないし。いま、片瀬さんが本当にS.G.Gのメンバーか調べてくれているハズだから」


 綾乃と二人して、ノートパソコンを操作する片瀬さんを凝視する。そして数秒後、真剣な眼差しで顔を上げた。


「確認が取れたよ。S.G.G所属のマツダって人だって」


 言いながら、ノートパソコンの向きを変えて僕たちに見せてくれる片瀬さん。画面には先ほどモニターで見た男性の顔と名前が表示されていた。


 つまり、スーパー・サクラギにS.G.Gのメンバーが訪れたのは間違いないらしい。そして人物名鑑の情報によると、この人物は現在、スーパー・サクラギのGメン担当ではない。


 現時点では、この人物――マツダが、客として来店したのか、それともオブシーンとして来店したのかどうかはわからない。


 しかし蜘蛛の糸をつかむようなこの作戦に、ようやく光明が見えてきた。


「とっ、とりあえず、囮捜査を開始しましょう。片瀬さんと綾乃は店内に行ってください。僕はここのモニターでマツダの行動を追います」


 見極めねばならない。マツダが一体、どういう意図でスーパー・サクラギに訪れたのかを。


「わかった! 先にわたしは制服に着替えてくるね!」


 そう言って、片瀬さんは制服を持ちながら事務室を出ていった。ちなみに片瀬さんの現役時代の制服は残っていないので、身長が似ているサツキの制服を借りている。


 片瀬さんを見送って、本格的にモニターを監視しようと椅子を動かそうとしたとき、綾乃が僕の袖をつかんでいることに気付いた。

「……綾乃?」


 見ると、綾乃が不安そうな顔で僕のことを見つめていた。もしかして、怖いのだろうか。囮に出るのが。


 そう訪ねようとした瞬間、先に綾乃が口を開いた。


「わたし、頑張ってくるね。だから、言ってほしいの。アキラくんの口から、頑張ってって」


 そんなことで、恐怖が和らぐのだろうか。でもこれからオブシーンと対峙するかもしれない綾乃に対して、他にかけてあげられる言葉はない。


「……頑張って。この仕事は綾乃にしかできないから」


 そう言うと、綾乃は嬉しそうに笑った。


 いよいよ、僕の考えた作戦が佳境に入ろうとしていた。

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