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スキル君が俺の相棒で、HP君がすぐダウンする異世界生活  作者: 新米オッさん兵士


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第2話 村に着いたら契約式が待ってて、アイテム君が勝手に絡んできた

 森を抜けて三十分ほど歩いた頃、ようやく俺たちの前に小さな村が見えてきた。

 木造の家々が並び、石畳の道が続いている。ファンタジー世界の定番「冒険者ギルドっぽい建物」もちゃんとある。看板には「リーフェ村冒険者支援所」と書かれていた。

「れいちゃん! 村だよ村! 俺、歩いてきて疲れた……でもまだHP残ってるよ! ほら見て見て!」

 HP君が俺の腕にしがみつきながら飛び跳ねる。さっきゴブリンにぶっ飛ばされてダウンしたはずなのに、もう元気満タンだ。相変わらずの紙装甲っぷりである。

「……ふわぁ……MP君、もう限界……村に着いたら寝る……」

 MP君は俺の背中にぴったりくっついて、ほとんど体重を預けてきている。銀髪が首筋に触れてくすぐったい。魔力回復が遅いらしい。

 スキル君は少し前を歩きながら、短剣をくるくる回していた。

「相棒、この村は初心者向けだ。まずは『初期契約式』を受けろ。俺たちとの契約を正式に登録しないと、ステータスが不安定になる」

「契約式?」

「ああ。村の神殿でやるんだ。概念体を正式に『パートナー』として認める儀式だ。他の具現者どもは生まれた時から何体か連れてるが、お前はゼロスタートだからな」

 俺は内心でため息をついた。

 前世の知識だと、こういうのは大抵面倒なイベントだ。しかも概念視で他人の本音が見えそうで怖い。

 村の入り口に着くと、門番のおじさんが笑顔で迎えてくれた。

「おお、珍しいな。若い具現者か? 三体も連れてるじゃないか。無事で何よりだ」

「ええ、まあ……森でゴブリンに遭いましたけど」

「ははっ、序盤あるあるだな。HP君がすぐダウンするタイプか?」

 HP君がプクッと頰を膨らませた。

「ひどい! 俺、頑張ったもん! れいちゃんが守ってくれたんだから!」

 門番のおじさんは笑いながら俺たちを中へ通してくれた。

 村の中は意外と賑やかだった。

 冒険者らしき人々が何組も歩いている。みんな自分の概念体を連れているのが印象的だ。

 例えば、隣を歩く筋肉質の男は巨大な斧を担いでいて、横に「筋力君」と書かれた札を付けたガタイの良い少年を連れていた。

 もう一組は、優しそうな女性が「回復魔法君」(可愛いピンク髪の少女)を大事そうに抱っこしている。

 俺は視界の隅で概念視をそっと発動させた。

【筋力君(親愛度:45)】

本音:「この主人、力自慢ばっかりでウザい……もっと頭使えよ」

【回復魔法君(親愛度:92)】

本音:「お姉ちゃん優しい……大好き。でも時々過保護で息苦しい……」

 ……やっぱり見えちゃうな、これ。

 スキル君が俺の耳元で小声で囁いた。

「相棒、妙な目で見てるぞ。他人の概念体に変なことするなよ?」

「してねえよ」

 冒険者支援所兼神殿に入ると、中は意外と広かった。

 受付のお姉さんが明るく声をかけてくる。

「いらっしゃいませ! 新規具現者さんですね? 初期契約式を希望されますか?」

「あ、はい。お願いします」

「では、神殿の奥の間へどうぞ。三体契約なので、少し時間がかかりますよ」

 俺たちは奥の部屋に通された。

 そこは柔らかい光が差し込む円形の部屋で、中央に大きな魔法陣が描かれていた。

「さあ、概念体さんたちは魔法陣の中に。具現者さんは中央に立ってください」

 HP君がスキップしながら陣に入る。

 MP君は眠そうにヨロヨロしながらついていく。

 スキル君は腕組みしたまま、ちょっと偉そうに陣の真ん中に立った。

 神官のおばさんが杖を掲げて詠唱を始めた。

「――概念の絆よ、ここに在れ。生命の化身、魔力の化身、技の化身……天野零の伴侶として認めよ!」

 魔法陣が光り始めた。

 その瞬間、俺の体に熱いものが流れ込んでくる感覚があった。

【契約完了!】

【HP君との親愛度が上昇しました(85→92)】

【MP君との親愛度が上昇しました(72→88)】

【スキル君との親愛度が上昇しました(68→85)】

 視界に通知が流れる。概念視が自動で更新されたらしい。

 HP君が飛び跳ねて俺に抱きついてきた。

「れいちゃん! 正式に契約できたよ! これでもう俺、れいちゃんの命そのものだよ! 死なせないからね! ……って、俺が死なないように守ってね!」

「相変わらず自分都合だな」

 MP君が俺の腰にしがみつきながら上目遣い。

「……これで……魔力分けてもらえる……? もっと近くにいたい……」

 スキル君が満足げに頷いた。

「これで俺のスキルもフルに使える。相棒、次は冒険者登録だ。ランクはEからスタートだけど、俺がいればすぐに上がるぜ」

 契約式が終わって支援所に戻ろうとした時――

 突然、受付カウンターの奥から派手な声が響いた。

「ちょっと待ちなさいよ! あんた、新規で三体契約したんでしょ?」

 振り向くと、赤いリボンを付けた栗色のツインテールの美少女が立っていた。

 年齢は俺と同じくらい。首から紫色の豪華な宝石を下げていて、手には杖を持っている。

 後ろには「アイテム君」と書かれたタグが浮かんでいるような……?

 少女が俺の前に近づいてきて、じろじろと観察してくる。

「ふーん……普通の人間ね。珍しいわ。普通は生まれた時から強い概念体連れてるのに」

 俺の概念視が勝手に発動した。

【アイテム君(レア度:A級・親愛度:??)】

本音:「この子、なんか面白い匂いがする……契約してないアイテム概念がいっぱい余ってる? 私を欲しがらないなんて許せないわ!」

 ……欲しがってる?

 アイテム君(少女)が俺の胸ぐらを掴んできた。

「ねえ、あんた! 私を契約しなさいよ! 神話級じゃないけどA級の『冒険者用万能ポーチ』よ! 中から何でも出せるし、自動整理機能付き! 他の子より絶対便利なんだから!」

 HP君が慌てて間に入る。

「えー! れいちゃんはもう俺たちと契約してるもん!」

 MP君が眠そうに手を振る。

「……いらない……魔力足りない……」

 スキル君が短剣に手をかけながら笑った。

「ははっ、アイテム君が自分から押しかけてくるなんて珍しいな。相棒、人気者じゃねえか」

 アイテム君が頰を膨らませて俺を見上げる。

「どうなのよ! 私みたいな可愛くて便利な子、放っておくつもり? ふん、断ったら呪うわよ? ……って、冗談よ。でも本気で欲しいんでしょ?」

 俺は頭を掻いた。

「待て待て。いきなり契約って……お前、なんで俺を?」

 アイテム君が少し顔を赤くしてそっぽを向いた。

「……だって、他の冒険者連中は『強い子しかいらない』って、私を無視するのよ。A級でも地味だって……。でもあんた、なんか弱そうだから……ちょうどいいかなって」

 本音は「面白い匂い」らしいが。

 俺は小さく笑った。

「わかった。とりあえず話だけ聞くよ。名前は?」

「ルナ! ……って、アイテム君の名前は自分で決めて! あんたが主人なら!」

 その時、支援所の外から騒ぎ声が聞こえてきた。

「ゴブリン群れが村の近くに! Eランク冒険者、急いで集まってくれ!」

 HP君が拳を握った。

「れいちゃん! 今度は俺、絶対耐えるよ!」

 MP君がため息。

「……また寝落ちしそう……」

 スキル君がニヤリ。

「いい機会だ。相棒、アイテム君も連れてテスト契約してみるか?」

 ルナ(アイテム君)が俺の腕を取った。

「決まりね! 私も行くわよ! あんたの役に立ってみせるんだから!」

 俺は四体の「君」たちに囲まれながら、ため息と笑いが混じった声を漏らした。

「はぁ……この世界、ほんと面倒くさいな」

 でも、なんだか少しだけ、悪くない。

 こうして俺の、ちょっと多すぎる概念体パーティの冒険者生活が、本格的に始まったのだった。

 ――HP君は今日もすぐダウンするだろうけど。

(第2話 終わり)

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