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王太子——改めユリアスとの精神的疲労がたまるようなお茶会が終わり、三日がたった。
今日から私は、王立魔法学園に通うことになっている。
「ああ、ステラ!どうか気を付けて」
「ステラ、くれぐれも無茶はしないようにね」
生徒は皆寮生活になるので、お父様とお母様とは四年間のお別れをすることになる。それにしても、親バカが過ぎるなぁ……。
「お父様、お母様、行ってまいりますわ!」
両親に別れを告げると、私は馬車に乗り込んだ。
♢♢♢
魔法かあ……。異世界って感じがするなあ。魔力を操作するんだろうけど、どうやって意識するんだろう……。試しに練習してみるとしますか!
馬車の揺れを無視して、体内に意識を集中させる。
……お!あったあった、これが魔力かな?なんか血液みたいな、そんな感じの……。で、これを手のひらに集めて……。おお、できた!あとはこれを放出すればいいんだよね?ええと、呪文?を唱えるんだっけ。前世で暇すぎて読みふけっていた小説にはそうあったと思うんだよね。どこの世界にもありそうな呪文……。
「ふぁいあぼ」
そこまで唱えて、急に馬車が止まった。
「きゃあっ!何!?」
せっかくできそうだったのに……。残念に思っていると、馬車の中に誰かが入ってきた。
「強大な魔力の流れを感じてきてみれば……。君は?」
「あなたこそどちら様ですの?相手に名を聞くのなら、まず自分から名乗るべきではなくて?」
急に入ってきたこの失礼な人は、黒髪黒目、懐かしい色をしていた。でもその瞳は長めにのばされた前髪のせいであまりよく見えない。
それにしても、このお嬢様口調疲れるな……。
「ああ、失礼した。私はアリスティリス公国のリュウ・アリスティリスだ」
アリスティリス……?今世の記憶は曖昧だけど、基本的なことは覚えているはずだから……。
ああ、日本みたいな国だ!
アリスティリス公国は、クレアール帝国から独立した元公爵領の国家で、もともとクレアール帝国内では珍しい黒目黒髪の人が多い領だったらしい。そして名前が日本人っぽい……。もう日本国と呼ぼうかな。
というか……。リュウ、ね……。ああ、嫌なこと思い出しちゃった。
「私はステラ・サンクスティア。アリスティリス第一公子殿下ですわね」
公国とは言え、爵位は同じだ。対等なので気を使う必要もない。
「ああ、セルボーノ王国の公爵令嬢か。尋ねたいのだが、なぜ魔法を使おうとした?私が馬車を止めたからよかったものの、あのまま使っていればこの馬車は焼け焦げていただろう」
え、そんなに?ファイアボールって、なんとなく思い浮かんだだけなんだけど……。
「これから魔法学園に通うことになりますので、その練習をと思いましたの」
「魔法学園?ああ、では同じだな」
魔法学園に通うのが、同じ?じゃあアリスティリス様……も、魔法学園に通うのか。留学という形をとったのかな?なんか波乱の予感しかしない……。
”練習……初めてであの威力か。いや、安定していないだけなのか……?それにしても魔力が多すぎるな。どうやったら十五年でこんなに……。”という彼のつぶやきは私の耳には残念ながら聞こえなかった。
♢♢♢
あー、やっと着いた!アリスティリス様が乗せてくれとかいうからずっと一緒で気まずくて大変だったー!ついたとたんに馬車から逃げ出してやっと解放されたよ!
それにしても、これが王立魔法学園か……。厳かな雰囲気がビシバシ伝わってくるような立派な校舎だな……。健康で、楽しい学園生活をおくれればそれでいいんだけど、無駄に厳しいのは嫌だな……。
「あ、ステラ」
……ユリアスだ。そっか、ユリアスも今日からここに通うんだっけ。今日も笑顔を貼り付けていてお疲れ様でーす。
「ステラ、一緒に行こう」
そういって彼は貼り付けたような笑みではなく、自然な笑顔を見せた。
——私、この目知ってる。
「………………」
「ステラ?」
前世の、私の好きな人。
「ありえない………………」
だって、彼が死ぬわけがない。あんなに元気そうな彼が、死んで転生するとか、それこそ厄年でもない限り……。
「ありえないって、何が?」
いや、でも、まだユリアスが彼の生まれ変わりとか決まったわけじゃないし!うん、これはいったん忘れよう!
「いえ、何でもありませんわ」
今日は、入学式なんだから、しゃんとしていないと。
♢♢♢
あ、やばい。眠すぎる。
入学式が始まって少しして、私は早速ふねをこぎそうになっていた。だって、学長のありがたーいお話が長すぎるんだもん……。しかも内容しょうもないしさ。早く魔力測定しようよ……。
「えーでは魔力測定にうつります」
おっ、来た来た。
それから爵位順に並び、私は二番目だった。やっぱり王太子の婚約者だからかな、確か準王族に該当するんだったっけ?
「では、この水晶に手を当ててください」
あ、流し込まなくてもいいのね……。練習の意味よ。
水晶に手を当てると、
「……きゃっ」
突然まばゆい光に包まれた。
かと思えば、
『ステラ……いえ、真帆……今世は幸せにね……』
という柔らかな女性の声が聞こえて、光は収まっていった。
今のは、誰なんだろう……。前世の私の名前を、知ってたよね……?私が転生したってこともわかってるってこと……?あの声は、一体……。
「ステラ・サンクスティア嬢!これは歴史に名を刻まれること間違いなしですぞ!」
「え?」
あの女性の声が気になって、あたりが騒がしくなっていることにようやく気が付いた私は、その言葉に首をかしげたのだった。
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