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………………あ、これ死んだな。
私は、春山真帆。現在、中学二年生の夏。幼いころから体が弱く、歩くことも難しかった私は、今日まで治療法が確立されていない病にかかっていたが、今死にそうだ。
そして、ちょうど24時になったとき、私は「春山真帆」としての生を終えた。
「……」
現在十五歳の私は全部思いだした。あれから私は、セルボーノ王国にサンクスティア公爵家の長女・ステラとして、生まれ変わった。
この世界ではどうやら十五歳になったら貴族全員が強制的に王立の魔法学園に入学するらしい。え、魔法?何それ楽しそう。
まあ、とりあえずやっとだ!今世こそは、絶対に、ぜーったいに、健康で幸せな人生を手に入れて見せる……!
まずは、両親との関係を築こう。残念ながら、私が記憶を取り戻した影響なのか何なのか今世の記憶があんまりないんだよね……。基本的なことは覚えてるんだけどな……。
それにしても、前世では両親が終わってたからな……。これで「お前なんて結婚の道具だ!」とかいう両親だったらこの健康な体でぶん殴って服従させようか。
「お父様」
「ん?ああ、ステラか!どうした?」
……お?ちょっといい雰囲気じゃない?
「あの、今度少し街に出てみてもよろしいでしょうか?」
「……すまん。もう一度いってくれるか」
「今度少し街に行ってみたいのですわ」
「なんだってええええ!!!!!?????ステラが、街に!?早い、まだ早いぞ、貴族だとバレて誘拐されでもしたら……!ああ、嫌だ、だめだステラ!街に出るのはお父様と一緒に行こうな!な!」
「あ、えっと……。すみません、用事を思い出しましたのでこの話はまた今度にさせていただきますわ……」
「あああ、待ってくれステラ!家に不満があるのなら解消するから!だから!お願いだから危ない街になんていかないでくれ~!」
後ろからお父様の叫び声が聞こえてくる。ごめんね、うるさいです。
…………うん。まあ、よくわかった。お父様はとんでもなく過保護で私を溺愛している。
でも!いい感じだ!いい感じだぞ!お父様がこんな感じなら何ら問題はない!あと問題なのは母親だ、母親が良ければこの家での立場が確立される……!もしかすると、いやもしかしなくても転生ガチャ当たりかもしれない……!
次はお母様だ。ちょうど屋敷を出て庭に出ると、お茶をたしなんでいるところだった。
「お母様」
「あら、ステラじゃない。一緒にどうかしら?」
おお、こっちもいい感じだ!うれしい、余はうれしいぞよ!
「はい、お母様」
それから優しそうなお母様とたくさん話をした。前世ではできなかったことだから感動だよ。
そして分かったことが二つある。
まず、お母様もいい感じだということ。お母様は全体的に和やかな雰囲気で、余程のことがない限り怒ら
なさそうな人だった。
それから、お父様のことが大好きだということ。ほぼほぼ惚気だよ、あなたは自分の娘に何を吹き込んでいるのかな?
うん、まあつまり、私の転生ガチャは大当たりだったわけだ。
まあこんな感じで公爵家での立場は確立されたわけですよ、使用人たちも良い人だし!両親は疑う必要がないくらいわかりやすいし、使用人が何かしたらその両親が何かしらの対処をしてくれるしね。なんて気楽なんだ。私の居場所は、ここだ!
とまあ、喜んでいた私がバカでしたよ。
「お父様あああああぁぁぁぁぁ、お母様あああああぁぁぁぁぁ」
私にはどうやら婚約者様がいるらしく、それがなんとなんと、王太子殿下だったのだ。
え、王太子の妃?無理無理、ド庶民の私に務まるわけないって。お飾りの妃にすらなれないって。ね、お父様、お母様?
その主張もむなしく、裏切りやがった両親のせいで私は王宮に連行された。
♢♢♢
ああ、今世はもうだめかもしれない。
王太子と対面した私はそのあまりの眩しさにそう思った。いやだってさ、王太子のビジュアル良すぎるでしょう!なにこれ、神様からの贈り物ですか?羨ましいなぁおい!
そのイケメン王太子様といえば、にこにこと笑顔を顔に張り付けている。そんなに口角上げていて、表情筋疲れませんかね?
「ステラ?」
「はい、何でしょうか」
あまりに見つめすぎていたのか、王太子が私に苦笑いを向ける。
「私の顔に何かついているのかな」
「いえ、とくには」
もうさ、ビジュが良すぎてさ、真顔になるよね。ステラという人も結構美人だと思うんだけど、この人を前にするとそれすらもかすむよね。
「じゃあどうしてそんなに私を見つめているの?そんなに私のことが好き?嬉しいなぁ」
『いや好きじゃないですよ?私が、ステラとして、あなたに会ったのは今日が初めてですので。あと「嬉しいなぁ」に感情があまりこもってないですよ。王太子教育の成果で少しは込められているのかもしれませんけど、思ってないのがまるわかりです』
——本当はそういってやりたいけれど、さすがにそれを言ってしまっては公爵令嬢としてもシュクジョ?としてもアウトな気がするし、そもそもいくら婚約者とはいえ不敬罪にでもなりそうな気がするので
「うふふ、殿下はご冗談がお得意ですこと。殿下が好かれているのは当たり前のことですわ」
と、言葉に隠して嫌味をたっぷり言う程度にとどめておいた。
そうしたら王太子は
「殿下、なんて他人行儀な呼び方はよしてくれ。君は婚約者なのだから、ユリアスと呼んでくれ」
と言ってきた。
その言葉の通りに呼んで、この健康な体を壊されてしまったらたまったものじゃない。せっかく転生したんだからこちとら長生きしたいんじゃい!
まあでも、これで言質はとったからね!嫌味を込めてフルネームで呼んで差し上げましょう。
「ありがとう存じますわ。ところで、ユリアス・サルボーノ殿下は甘党でいらっしゃいますのね」
「ああ、そうだね」
とまあ腹の探り合いのようなお茶をして、やっと家に帰れた暁には、私は精神的疲労がたまりすぎてベットにダイブしたのだった。
面白いな、続きが気になる、などと思っていただけたら幸いです。
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短編を書いてみたので、もしよかったらそちらも読んでみて下さい……!
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