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エピローグ


「お疲れー!」

 イベントを終えた私たちは、いつものように城の一室に集まっていた。元の世界から持ち込んだ、打ち上げ用のジュースで乾杯を交わす。



「ふふ、お疲れ」

「いやあ、盛り上がったねー」

「そうだね。面白かった!」

 口々に言うみんなに、私もうんうんと頷く。私は黒幕役だったのだが、かなり楽しかった。というか、未だにテンション高すぎてやばい。口元にやにやする。

 ちなみにナツとアキ、それにクオくんはプレイヤーに混ざって戦いながらこっそり誘導する役、フユはプレイヤーの分散具合や動きを見て三人に指示を出す裏方役、フェンリルは最後の大ボス役だった。



「こういうイベント、定期的にやれたらいいねー」

 ナツの言葉に、ねー、と同意する。準備は大変だが、やっぱりいつもと熱気が違うと思う。精霊たちも、いつも以上に騒がしく、楽しそうだった。

 また何か企画しようね、とみんなで言い合う。「仕事が増える一方ね」なんてフユはぼやいていたけれど、満更でもない様子だった。



「ねえねえ、ちい?」

「おー?」

 にやにやがおさまらず、一人ポテチをつまんでいれば、奈津に後ろからのしかかられた。首元に回された腕に、身を竦めながら「なにー?」と応える。



「魔法ノ書、良かったねー」

 言われて、笑顔で頷いた。そっとブレスレットになっている魔法ノ書に手を重ねる。いやまさか、この瞬間も保持し続けていられるとは、自分自身思っていなかった。太郎さんに感謝である。



「うん、本当良かった」

「一ヶ月、皆で一生懸命考えたけど、あんまりいい案は思いつかなかったもんね」

「そうね、思いついたのは小細工くらい。まさか素直に言って、素直に貰えるなんて、誰が思うのよ」

「ちいは思ったみたいだよ?」

 奈津の言葉に、あははは、と上っ面な笑いを返す。咄嗟の思いつきというか、何というか。言ってみたら何とかなっちゃった、みたいな。

 ……だいたいそんなノリでいつも生きてます。魔法ノ書を手に入れたときも、ゲームをやろうと言った時も、大体そんな感じ。いつまでもコレは変わらないだろうと、自分自身思う。


 何げなく、魔法ノ書を本の姿に戻す。その表紙を見て、私は「あっ」と声を上げていた。



「どしたの?」

「いや、太郎さんに貰う時に光ってたから、何か変わったのかな? とは思ってたんだけど……」

 奈津に表紙を見せる。そこには『魔法“の”書』の文字が。



「うっわ、地味っ!」

「なになに? あ、ほんとだ。地味だけど変わってる!」

「地味ね……」

 地味地味と容赦ない三人に、フェンリルがひっそりと「今頃泣いてそうじゃの……」とか呟いていた。太郎さんらしいと言えばらしいんだけど、確かに物凄く地味。



 閑話休題どうでもよかった



「都市の破壊具合は、それほどでもなかったわよね。攻めの手が緩かったかしら?」

「復興クエストもたくさん用意したんだけどね? あんまり意味が無かったかも」

「勿体ないから、いくつかは精霊に通達しておきましょう。次はもう少し厳しくしなくちゃ」

「あはは、そうだね」

 ジュースをちびちびと飲みながら、アキとフユの会話を聞く。どうやら中立都市は崩壊都市と名前を改めなくて済むようだ。

 あと、別に攻めの手は緩くなかったと思います。みんな超必死だったし。秋冬コンビが相変わらず厳しすぎて生きるのが楽しい。



「次があったらさ、今度はナツが黒幕役やろうよー?」

「えー、黒幕はいいけど、流石にハルみたいなのは恥ずかしくて無理」

「……ノリノリでやってた自分がいるんだけど」

「そこが君のいいところさ」

 棒読みで肩ぽんぽんされた。しまいには泣くぞ。



「チハル。わしは、ちょっと恥ずかしかったぞ……」

 フェンリルに追撃されて、正直ちょっと泣いた。



「でも、次のイベントはどうしようかしらね? さすがに二度同じイベントは飽きちゃうんじゃない?」

「うん、そうだよね。……というより、次のイベントってやる暇あるかな?」

「あー、半月後にはβテスト終わりかー」

 言いながら、ぼんやりとこれから先の予定を思い浮かべる。

 βテストが終わった後のことは、正直言うと、まだちゃんとは決めていない。

 いや、会社興すつもりだし、本格稼動するつもりではいるのだけど、誰がそれを管理するのかとか、いつまで続けるのかとか、むしろ本格稼動などせずに、今のゆったりまったりのままでいいんじゃないのか、とかとか。色々、皆の中で意見はあるわけで。


 そんな感じで、考えなきゃいけないことは、あるにはあるのだが、とりあえずは。



「ね、ね、次のイベントやるとしたら、テスト最終日にドドンと行こうよ!」

「じゃあ、最後だし、闘技大会とか、魔法大会とか、そんなのどうかな?」

「あら、面白そうじゃない。強さを競ったり、魔法の美しさを競ったり……魔法で乗り越える障害競走もいいわね」

「あ、それいい! 障害競走とか超面白そう! 壁を壊すか飛ぶか掘るかはその人次第、みたいな!」

 そんな話し合いが始まったのを横目に、ほう、と息を吐く。

 しばらくは、こうやって友人同士でわいわい、騒いでやってけたらいいなあ。


 魔法ノ書、あらため、魔法の書を腕に、私は想いを馳せるのだった。


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