変質
さてさて本日の試合も後2試合。
次の試合で勝ったチームと僕たち。
そして明日は決勝だ。
まあよくよく考えれば準決に当たるこの試合も明日やればよくね?
なんて思わなくないけど、僕がどう思っていても関係ないしね。
「次の試合の勝者と僕たちだね」
「ああ、そうだな」
「まあでも順当に行けばヴァン達かな?」
「だろうな。相手は…どんな奴だっけか?」
「いや僕ら寝てて観てないじゃん…」
「あーそう言えば。だから思い出せないのか」
「なんだかんだ興味あるんじゃん」
「いや単に観て思い出せないほど興味がないのか不安になっただけだ」
「い、一応不安になるんだ」
どうやらミスト自身も他者への興味がほとんどないことを多少は気にしているらしい。
「セレナは観ていたからわかるよね?」
「えーっとね、昨日の話で行くと1番目のチームってことになるかな?」
「そっか。ありがと」
まあ反応を見るにセレナもそこまで興味の湧く相手じゃなかったってことだよね。
「あ、でも一人だけ強そうな人がいたよ。まあ対戦形式的にあと一人がどんな人か見れてないけどね」
なるほど。そう考えると全然もう一人も実は強かったんですってのもあり得るのか。
「一戦目はエラって子と、あ、あの人だね残りの一人。情報はない。
もしあの人が私が見た人よりも強いなら、ヴァンのチームのストレート勝ちはないかもね」
なら面白い試合が見れるかもね。
初めてストレートじゃない試合になるかもってことだよね?
エラは槍使い。確か前の試合では多少風魔法を使っていたかな?
攻撃に多用するっていうよりサポート程度。まあ多分契約者がいないんだろうしそんなもんだろ。
そんなことよりも対戦相手の方だ。
武器はなんだろう?あれは刀?ってことは...
「魔族?」
「そうっぽいね」
角が生えているから竜人かと思ったけど刀ってことは魔族の国、魑魅國だったかな?
そこ出身だろうし。それにあの褐色肌。
「迅ってことはかなり見た目が違うよね?」
「迅はV種って呼ばれる魔族。対してあの子は肌の色や角からしてD種だろうね」
「どんな特徴なの?」
「V種は素早く幻惑魔法などが得意なのに対して、D種は力と闇魔法が得意なの」
「闇魔法か。初めて見るな」
「まあ見せてくれるかわからないけどね?」
「では試合開始!」
動いたのはエラ。槍を構えて突進するように走る。
リーチはもちろん槍の方がある。
しかし...
D種の男は無言で鞘から刀を抜いた。
そして次の瞬間。
その鞘をエンチャントしてエラに向かって投げた。
「え?」
思わずエラは驚いている。
いや普通は鞘がエンチャントされて飛んでくるなんて思わないよね。
僕も思わないよ。
しかしエンチャントされている以上受ければしっかりとしたダメージを喰らってしまう。
つまり回避をしなければならない。ガードすれば相手に隙を与えるだけだしね。
避けられない速度でもなさそうだし。
エラはギリギリで鞘を避け、体制を整えて攻撃に移ろうとする。
しかし...
「ばーん」
D種のその一言でエラの横を通り過ぎようとしていた鞘が爆発した。
普通の爆発よりも煙が多い気がする。エラは見えない。
それにあの爆発もほぼ直撃だろう。
爆発の直前に気づいている様子もなかったしね。
「じゃあ俺の番。行くぜ」
そう言ってD種の彼は刀にエンチャントし煙の中へ走り出す。
彼にもエラの位置は見えていないはずだけれど...
しかし彼の刀はエラをとらえた。
エラは煙の中から突き飛ばされて出てきた。
出てくるときに槍で体を守るように構えていたし直撃は避けたようだ。
「なんで見えて...」
「そりゃ煙ができる前にいた位置くらいに大きく刀を振るっただけだろ。
煙の中にいるのは確定なんだし大きく振るえば当たるだろ」
「いやそうは言っても」
爆発の反動で多少位置はズレているだろうし当たるもんなのか?
「くっそ...」
エラはかなりダメージを受けているように見える。
「風よ!奴を切り裂け!」
エラの攻撃魔法だ。
風の無数の刃が彼に向って飛ぶ。
「そんなの効くかよ!」
飛んできた刃に対し、大きくエンチャントされた刀を振りかぶる。
「え?なにあれ」
彼の振るった刀の軌跡には大きく黒い炎のようなものが残っている。
盾のように大きく広がった黒い炎のようなものが、氷の結晶のように固まっている。
風の刃はそれにより防がれる。
「あれが闇の変質。闇魔法は基本的に魔族以外に適性がない。そしてその魔族の闇魔法は個々、つまりその特性は人それぞれだ。それが変質。幻惑魔法が使えるのもこれが理由だな」
そんな性質があったのか...
「う、うそ」
エラはあんなにも簡単に防がれてショックなようだ。
「じゃあさっさと終わりにするか」
エンチャントされたままの刀を持って今度はD種が攻撃を始める。
「く、くるな!風よ」
同じように風の刃を出す。
しかしもちろん...
「そんなん聞かねえよ!!」
先ほどと同じように防がれてしまう。
彼は走る速度を緩めない。
攻撃が当たる瞬間だけ闇の結晶で防ぎ走っている。
「これで終わりだ」
彼は刀でエラに切りかかる。
しかし流石にエラも槍で防いでいる。
しかし彼の刀を持っていない方の腕には闇の炎が鋭い棒状になって出ている。
「残念ッ!」
その炎は結晶化し闇の剣となった。
今もエラは槍で刀からの攻撃を防いでいる。
つまり防ぐ手立てがない。
彼のもう片方の手に握られている刃の先端ははエラの首元に押し当てられている。
今にも刺さりそうなほどに力で。
「そこまで!勝者零!」
そのD種零って名前なんだ。
それにしても闇の変質。厄介だな。
聞いた感じそもそも個人個人でその性能に差があるようだし。
「まさかの展開だね」
「そうだな、面白いもんを見れた」
あれには流石のミストも興味を示したらしい。
なんにせよこの後の試合も楽しみになってきた。
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