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第九十五話 残された絶望の芽


 シドとの決着がついてクラヴィスとミリューの治療をポーションで済ませたタイミングでヴァイドとグリフィス王子が大広間に駆け付けた。


「うはぁ、これはまた……派手にやったもんだねぇ」


「リファさん、無事でしたか!本当に良かったです!」


 大広間は激戦のためあちこちが砕けたり焦げたり、大穴があいていたりと惨状となっており、それを見たヴァイドがまず呆れ、グリフィスはリファの無事な姿を見て一直線にリファへと向かって走り出す。そしてリファの手を取り、大袈裟なほどにその無事を喜んだ。


「グリフィス王子、御心配をおかけしました。皆さんが助けに来てくれたおかげで本当に助かりました」


「いえ、むしろ助けに来るのがこんなに遅れて申し訳ありませんでした。さぞや心細かったでしょう」


「あ……あはは……」


 散々な目に遭わされて最後は泣き出してしまったとは言えず、曖昧な笑みで返すしかないリファだった。


「とにかくリファ君が無事だったのは本当に僥倖だけど、大変なことがわかったから君たちにも伝えなければいけない」


「何かあったのか?」


「うん、アッティラの剣の操作盤を使って今後新しく動力を消費してあの砲撃を行うことはできなくすることはできたんだ。だけど……」


 その後にヴァイドが続けた言葉はあまりにも衝撃的なものだった……


※※※※


 一方その頃、祈祷室から大広間へと向かっていたエルハルトの元に部下が報告に来た。


「先程大広間にてシドという者が打ち倒されたことを確認しました」


「なんだと!?あのゲイルを倒したというのか……どうやったかはわからんが、本当によくやってくれた」


 エルハルトにとってもそれは嬉しい誤算であった。アーヴァレストよりも強いとされるあの男をどう打ち倒したのかは興味が尽きないが、今はあの難敵を打倒したことを素直に喜ぶことにした。


「く、くくっ……まさかシドまでをも倒してしまうとは。あの少女は本当に特別な神人のようですね」


「何がおかしい、フェリクス。これで本当に貴様の目論見は全て潰えたのだぞ」


「さてそれはどうでしょうね。とりあえず王子、あのリファという少女は絶対に手放さないようにすることをお勧めしますよ。まもなく王となる貴方への忠告です」


「……?何を言っている、まだまだ父の治世は……」


「いえ、もう間もなく終わるのですよ。そうですね……あと20分もないでしょう」


 明らかに何かを確信しているフェリクスの様子にエルハルトの顔色が変わる。


「……っ!?貴様、何の話をしている!」


「アッティラの剣には予約砲撃というものがありましてね。既に設定済みなのですよ」


「何だと!?」


「標的は王城と闘技場、そして……ハミルトン領本邸です」


「なっ……馬鹿なっ……!」


「闘技場には王族をはじめとして主要人物が勢揃い。そしてグランマミエの盾たるハミルトン家も一緒に消えたなら……この国はどうなるでしょうね?」


「貴様っ……最初からそのつもりだったというのか!?」


「いえいえ、大人しく私に全権を委ねるのであれば攻撃を中止する予定でしたよ?ですが、事ここに至っては致し方ありません。一度グランマミエには崩壊して貰い、レジェンディアに取り込んでもらう形で再生をはかって貰いましょう」


「……っ!?大至急闘技場と王城に伝達を!避難命令だ!」


「無理ですよ、到底間に合いません。一緒に花火を見物しようではありませんか。グランマミエ王国最後の花火をね……」


 ここから最も近い闘技場ですら伝達兵で片道30分はかかる。絶望的な状況にエルハルトは血が滲むほど唇を噛み締めるのだった……。


※※※※


 「実は既に動力を取り込んで発動準備状態になっているのが3発分残されているんだ。そして、その目標は王城、闘技場、そしてハミルトン領の本邸だ」


「なんだと……!?」


「勿論それも止めようとしたんだけれど、どうやっても中止命令を受け付けない。そして発動のタイミングはあと15分後ときてる」


「馬鹿な、それでは……」


「避難させようにも今からではどうやっても間に合わない……そこでリファ君に相談しにきたんだ」


「私に……?」


「ああ、多分この状況を何とかできる可能性があるとしたら、それは君しかいない。僕はそう確信している」


 そう言われて頭のどこかでそれを納得している自分がいる。何故かはわからないが、確かにその通りだとどこかで思ってしまうのだ。であればやることは一つ。考えろ。今ある全ての物を使い、全ての情報を統合して最良、最適かつ皆が幸せになれる道を探るんだ……。


「ヴァイド様、いくつか確認させて下さい」


「ああ、何でも聞いて欲しい」


「アッティラの剣自体は破壊不能、そうですよね」


「うん、あれは現代の武器では破壊不能だと思う」


「では、アッティラの剣には既に3発分の動力が充填済みなのですね」


「うん、そうだね」


 ヴァイドの返答を聞いてから『……であれば3発分であの量、そして1発で消費する量、満量で……』とリファがボソボソと何かを計算しながら考えにふける。


「……わかりました。一つだけ手があるかもしれません」


 そうして3分ほど経つとリファはそう言って、自身が繋がれていた手錠の近くに安置されている充填用の宝珠の方に向かって歩き出す。そして宝珠の前に立つと、両手をその上に置いた。そしてこのタイミングでバタバタと足音が聞こえてくる。


「無事かお前たち!状況は把握しているか?」


 エルハルトと騎士達がようやく大広間に辿り着いたのだ。


「兄上、既にアッティラの剣が予約砲撃の準備態勢に入っていることは理解しています。今リファさんが何か手を思いついたそうですが……」


「リファが……?それは本当か!?」


 エルハルトが驚きを隠せずにリファに問いかける。


「……はい。私の考えた手は『過充填』です」


 そう答えたリファの表情は何故か明るいものではなく、思い詰めたものだった……。

102話で完結です。もう暫しお付き合いください。

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