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第七十四話 フェリクスの意図


 査問会が終わり、国王からの労いの言葉を貰ってようやく別邸へと帰ってきた。


「なんとか無事にグラファーを潰すことができたね。それに他の孤児院にもしっかり監査の手が入ることにもなったし目標は達成できたということで、リファ君、お疲れ様」


「ああ、前もって打ち合わせをしていたとはいえ、予想外の動きをする者もいたのによくやり遂げてくれた」


「基本的には予定したとおりに喋るだけでしたのでそれほど難しいことはしていませんよ。でもありがとうございます」


「なんと言ってもあの最後に院長をぶっとばしたところが痺れましたね私は!」


「ん。あれはスカッとした」


「まさか最後の最後で掴みかかってくるとは思わなかったけどね。幸いあの人は素人にしか見えなかったし、今までのうっ憤晴らしとミリューを傷つけた仕返しをしたくてつい……」


「あははっ、確かに爽快ではあったけどますます君が目立つ結果になっちゃった気もするけどね」


「万が一ということもある。君が怪我でもしたら大変だし、できればああいう時は前に出ないほうがいいな」


「そ、そうですね……正直私もやり過ぎたと思ってます。次があったら大人しくしていますね」


 クラヴィスがそれを聞いて満足そうに頷く。


「そうしてくれると護衛としても助かるな。それにしても、あそこでフェリクスが出てくるとは思わなかった」


「うん、影で手を回す位のことはするかもしれないとは思っていたけどあそこまで表だってグラファーを庇い立てするのは意外だったよね」


「それほどグラファーがフェリクス枢機卿にとって重要な人物だったということでしょうか」


「うーん、それほど重要とは思っていないように見えたけどなぁ。もしかすると、結果はあまり関係なかったのかもしれない」


「というと?」


「グラファーの処罰がどう転ぶにせよそこは重要ではなかった、つまり目的はリファ君や僕らの反応を見ることだったのかもしれない」


「院長は撒き餌みたいなものだったということですか?」


「結果的にはそうとも言えなくもない。実際僕らは彼が動いたせいで用意していた策を全て放出せざるを得なかったし、大っぴらにはまだ公表したくない魔道具まで公開する羽目になってしまった」


「彼の意図はそこにあったのですか……そこまでは考えていませんでした、すいません」


「いや、僕も後で気が付いたことだしあの状況ではあれ以外にやりようはなかったから謝る必要は無いよ。ただ予想以上に彼はリファ君や僕らのことを油断せずに注目しているようだ」


「相当に頭が切れることはわかっていたが、それ以上にその意図を掴みにくいのが厄介だな」


「でもとりあえず今回の件で天神教の力をかなり削ぐことができたし、王に恩も売ることができたから収支的にはかなりのプラスだよ。前向きに考えていこう」


「ですね。何より路上生活をする子供達が今後減っていってくれれば言うことはありません」


 ここでちょうどおやつの時間になったのか、ティアとカインが二人でテーブルにおやつや飲み物を用意し始める。


「ティア、今日のおやつはなんだい?」


「あ、ヴァイド様、今日はフルーツタルトとパウンドケーキです!タルトは私も一緒に作ったんですよ!」


「そりゃあ楽しみだ」


「ティアが作ったタルトなら絶対美味しいよね。私は今日はタルトにしようかな」


「リファ様、今日の紅茶はタルトに良く合うと思います!私が入れますね」


「ありがとう、ティア。火傷しないように気を付けてね。パウンドケーキはあまり甘くないからクラヴィス様やカインにもお勧めだと思います」


「そうだな、私はそちらにしようか。準備が終わったらカインもティアも一緒に食べよう」


「ほんとですか!?お腹ペコペコだったからすっげー嬉しいです!」


「もぅ、お兄ちゃん、まずは準備が先だよ!がっついちゃ駄目!」


「わ、わかってるよ……」


 いつもながらの微笑ましい兄妹喧嘩を見てほっこりと癒される。私が孤児達にできるのはここまでだけど、あの子達もカイン達みたいに本当の意味で笑える日が一日でも早くきてくれるように祈りたい。

 子供たちは国を将来背負っていく大切な存在なのだから、大人たちの都合で食いつぶされるような未来だけは防がないといけないと思う。

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